山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
画面のアスペクト比によって電子書籍の表示サイズはこんなに違う! 実際比較してみた
スマホ、タブレット、電子書籍端末それぞれで実験してみた
2024年9月25日 16:02
電子書籍端末を選ぶにあたって、重要なポイントとなるのが画面サイズだ。各端末の仕様を見ると「◯型」や「◯インチ」といった具合に、画面サイズが記載されている。この情報をもとに候補機種をリストアップするというのが、お決まりの選び方ということになる。
もっとも、ここでいう画面サイズというのは対角線の長さを示しているだけで、縦と横の比率、いわゆるアスペクト比は、この数値だけではわからない。アスペクト比が違えば画面の幅と高さは大きく変化するので、画面サイズだけではどのくらいのページサイズで表示されるかは判断できないのだが、なんとなくわかったような気になってしまい、購入後に「思ったより小さかった」と後悔することになりがちだ。
そこで今回は画面サイズがほぼ等しい「スマホ」、「タブレット」、そして「電子書籍端末」をピックアップし、それらで電子書籍を表示した時にページサイズなどの見え方がどのように変わってくるかを比較してみた。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。
スマホでコミックを表示すると極端に小さくなる
まずはスマホから。最近のスマホはアスペクト比が20:9、つまり正方形を縦に2つ並べたよりもさらに縦長の、極端に細長い画面であることがほとんどだ。今回取り上げるGoogleの最新スマホ「Pixel 9 Pro XL」や、iPhoneの中でもっとも画面の大きい「Pro Max」シリーズもこの比率だ。
- ⇨Google Pixel 9 Pro / Google Pixel 9 Pro XL - 最先端 AI を Google Pixel で体験
- https://store.google.com/jp/product/pixel_9_pro?hl=ja&pli=1
- ⇨iPhone 16 ProとiPhone 16 Pro Max - Apple(日本)
- https://www.apple.com/jp/iphone-16-pro/
こうした極端ともいえる縦長のアスペクト比でコミックを表示すると、ページの横幅は画面幅に合わせて実測70mm程度にまで縮小されるため、細かいセリフなどが読みづらく感じることもしばしば。またその一方、表示に使わない画面の上下は余白として持て余したりと、せっかくの画面を活用できていない。
コミックではなくテキストだとどうだろうか。テキストは天地いっぱいに表示できることから余白も発生しないが、画面が縦に長いことから、一行の高さが130~140mmにも及んでしまい、上から下まで視線を往復させるだけで疲れてしまう。帯に短したすきに長しといった状況だ。
ただし最近のコミックサイトでは、画面下部の余白にバックナンバーへのリンクを配置するなど、スマホの縦長の画面に合わせる形でUIが進化しつつあり、全体的に使い勝手は改善されつつある。また横幅が短いことから、後述する2種類のデバイスと違って片手で握りやすいのは、さまざまな環境で電子書籍を楽しむにはプラスだろう。
紙に近い比率での表示が可能なE Ink電子ペーパー端末
続いて紹介するのは、E Ink電子ペーパーを搭載したAmazonの読書端末「Kindle Paperwhite」だ。この製品もさきほどの「Pixel」と同じく、画面サイズは6.8型なのだが、アスペクト比は4:3と、実際の紙の本のページに近い比率だ。
こうしたことから、電子書籍のページを表示しても上下左右に余白がほとんど生じず、フィット感の高い表示が行える。またスマホでは難しい、画面を横倒しにしての見開き表示も、窮屈ではあるものの対応している。前述のスマホと画面サイズが同じというのが信じられないほどだ。
さらにテキストについても、文庫本とほぼ同じサイズということもあり、一行を上から下まで目で追うのにも無理がない。なにより反射の少ないE Ink電子ペーパーを採用していることから目に優しく疲れにくいのは利点だ。一般的に、E Ink電子ペーパーは4:3というアスペクト比の製品がほとんどなので、ほとんどの端末でこうした恩恵が受けられる。
ただし一方で横幅が広いため、片手でしっかりと握るのは難しく、寝転がって読書を楽しむといった使い方には不向きだ。また電子書籍の専用端末ということで、汎用性はスマホやタブレットには遠く及ばない。画面が書き換わる時に発生する白黒反転といった特有の挙動もあり、使ってみたがいまいち合わないという人も少なくないはずだ。
タブレットは動画鑑賞も含めたオールマイティな画面比率
最後に紹介するのはタブレット。今回例として紹介するのはAmazonのエントリー向けタブレット「Fire 7」だ。製品名からもわかるように画面サイズは7型と、前述の2製品(6.8型)よりも対角線はわずかに長い。
アスペクト比は先程の「Pixel」と「Kindle」のほぼ中間である16:9。このアスペクト比はタブレットには多く見られ、電子書籍のほか動画鑑賞、ウェブ閲覧までオールマイティにこなすことができる。コミックを表示した時の余白は多少は発生するが、前述のスマホほど面積は広くないので、慣れれば違和感はそれほど感じなくなる。
また電子書籍向けをアピールするタブレットの中には、スペックはあまり重視せず、リーズナブルさを優先した低価格のモデルも多い。この「Fire 7」もそのひとつで、実売価格は8,980円と、十数万円はくだらない前述の「Pixel」のおよそ20分の1で入手できる。こうしたことから、コストを優先する場合には格好の選択肢となりうる。
その一方で、スマホや電子書籍端末が重量200g台前半に抑えられているのに対し、タブレットは7型で200g台後半、8型は300gを超える場合もあったりと、やや重いことはネックとなる。この「Fire 7」は282gということで、特に長時間の読書においては、手に持って保持し続けるのがつらくなる可能性がある。端末を選ぶ場合、こうした事情も考慮しておきたいところだ。
アスペクト比を確認をするクセをつけておきたい
以上のように、画面サイズが同等のデバイスで電子書籍の同じページを表示しても、画面上でのページサイズはまったく違ってくる。つまり画面サイズだけで実際のページサイズは判断できないということで、購入にあたって製品を比較する際は、画面サイズに加えてアスペクト比についても確認をするクセをつけておけば心強いだろう。
その一方、実際にデバイスを調達するにあたっては、画面サイズ以外の要因も留意しておく必要がある。例えばE Ink電子ペーパー端末は、前述のように電子書籍の表示には適したデバイスだが、カラーページもグレースケールで表示されてしまうので、カラー図版の多い電子書籍の表示には向かない。
またタブレットは、今回取り上げている「Fire 7」のようにスペックが抑え気味の製品も多いことから、画面を横向きにしての見開き表示を行った場合、解像度の不足により、細かいディティールがつぶれてしまうといったケースが起こることがある。このあたりも引っかかりやすいポイントであり、気をつけたいところだ。
また今回は、スマホ、電子書籍端末、タブレットという3つのカテゴリで代表的な製品を紹介したが、各カテゴリのアスペクト比はどれも同じというわけではない。例えばタブレットでも、「iPad」のように多くのモデルがアスペクト比4:3の製品もあれば、画面を2つに折りたためるフォルダブルタイプの製品の多くは、アスペクト比はほぼ1:1、つまり正方形に近い。こうした例外も踏まえておくと、より自分に合った製品が選べるはずだ。