山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

1万4千円の「Kindle Paperwhite」と6千円の「Fire 7」 読書するならどっち?

 電子書籍は、文字サイズが自由に調整できることがひとつの大きなメリットだ。そのため、スマホのように画面サイズが小さい端末でも、ラノベや小説といったテキスト本を読むにあたって、大きな支障はない。

 とはいえ、外出先ならまだしも、自宅であればもう少し画面が大きいデバイスで読みたいもの。iPadのような10型前後の端末ともなると、テキストだけを表示するにはやや大きすぎるが、これが6~8型クラスの端末であれば、片手で持つこともできるし、実際の本のサイズにも近いことから、手に馴染みやすい。

 今回は、ラノベや小説を読むのにふさわしい2つの端末をピックアップし、それぞれの特徴と向き不向きを紹介する。

左が「Kindle Paperwhite」、右が「Fire 7」。いずれもAmazonの電子書籍ストア「Kindle」で購入した本を読むことができる

「Kindle Paperwhite」vs「Fire 7」の戦い

 まず最初に紹介するのは、Amazonの電子書籍端末「Kindle Paperwhite」だ。液晶ではなくE Ink(イーインク)と呼ばれる電子ペーパー端末を採用しており、表示はモノクロながら、紙に近い質感を備えているのが特徴だ。

 Kindleは複数のモデルをラインナップしているが、もっともポピュラーなこのKindle Paperwhiteは、文庫本とほぼ同じ6型の画面サイズを持つ、ベーシックな製品だ。それでいて重量は200gを切るなど、スマホ並みの軽さが特徴だ。

Amazon「Kindle Paperwhite」。実売価格は13,980円から
文庫本とほぼ同サイズ。テキストの表示エリアだけで言うとわずかに小さくなる

 もうひとつの候補となるのが、同じくAmazonが販売しているメディアタブレット「Fire 7」だ。こちらは液晶ディスプレイを採用した小型タブレットで、画面サイズは7型と、前述のKindle Paperwhiteよりもやや縦長だ。液晶だけあってカラー表示にも対応しつつ、価格は5千円台というリーズナブルさが特徴だ。

Amazon「Fire 7」。実売価格は5,980円から
文庫本と比較すると縦方向にやや長い。横方向はほぼ同じだ

 これら2製品を比較しながら、ラノベや小説を読むにあたって、それぞれどのようなメリット、デメリットがあるのかを見ていこう。

画面はFire 7が大きいが横幅はほぼ同等

 まずは表示性能について見ていこう。前述のように画面のサイズはKindle Paperwhiteが6型、Fire 7が7型だが、画面の縦横比が異なるため横幅はほぼ同等で、Fire 7はやや縦長だ。同じ文字サイズで小説を表示した場合、Fire 7は1行が長く表示されることになる。

 どちらの製品も、Amazonの電子書籍ストア「Kindle」を利用でき、文字サイズのほか行間や余白のサイズを調整できる。またしおりを挟んだり、ハイライトを書き込んだり、他のユーザーがつけたハイライトをポピュラーハイライトとして表示することもできるなど、電子書籍の利点とされる機能を一通り備えている。

「Kindle Paperwhite」(左)と「Fire 7」(右)で、それぞれテキストサイズを最小にした状態
文字サイズを最大にした状態。さすがにここまで大きくして読む人はいないだろうが、文字サイズに融通が利くのは電子書籍ならではだ
Kindle Paperwhiteの設定画面。フォント(左)、レイアウト(中)のほかハイライト機能など細かい設定(右)が行える
Fire 7の設定画面。項目はKindle Paperwhiteとほぼ同じだが、こちらは背景色の調整機能がある

 さらにKindleならではの、本文から登場人物や特定のキーワードをピックアップして串刺しで表示する「X-Ray」と呼ばれる機能も利用できる(対応コンテンツのみ)。ラノベで登場人物の名前がわからなくなった時に、直前のどのシーンに登場していたのか探す場合に便利だ。これらの機能は、どちらの製品も等しく利用できる。

本文中の人物やトピックを串刺し検索できる「X-Ray」機能は登場人物の多いラノベや小説で重宝する。左がKindle Paperwhite、右がFire 7

E Inkを採用したKindle Paperwhiteは疲れにくいがページ遷移にクセあり

 ただしこのKindle PaperwhiteとFire 7、表示特性は大きく異なっている。一般的な液晶ディスプレイを採用したFire 7に対し、E Ink電子ペーパーを採用したKindle Paperwhiteは、表示がモノクロとなる。本文のテキストでは支障はないが、表紙や挿絵の再現性にこだわる場合は要注意だ。

 その一方、Kindleに用いられるE Ink電子ペーパーは、スクリーンに文字を直接印刷したような表示特性を備えており、目に優しい。視野角も広いことに加えて、直射日光下でも問題なく読めるなど、紙の本に近い使い勝手にこだわる場合にはぴったりだ。低消費電力ゆえ、数週間は充電なしで駆動するのも大きな利点だ。

Kindle Paperwhiteは画面がモノクロなので、表紙や挿絵などカラーのページもすべて白黒で表示される
E Ink電子ペーパーの質感は紙に近く、液晶と違って斜め方向から見た場合や、屋外の直射日光下でも問題なく読める

 ちなみにE Ink電子ペーパーはページの書き換え時、液晶のように瞬時に切り替わるのではなく、前のページが白黒反転しながら次のページと入れ替わるという特徴がある。

 現行のモデルではかなり緩和され、ほとんど気にならないレベルになっているが、本を閉じたり開いたりする場合はそうした挙動も一部残っており、これらを目障りだと感じる人もいるかもしれない。詳しくは以下の動画で確認してほしい。

【動画】Kindle Paperwhiteで本を開いてスワイプでページめくりを行い、そのあと本を閉じる様子。開く時と閉じる時に、画面全体が白黒反転するという特徴的な挙動が見られる

Kindle Paperwhiteはフロントライト搭載で暗い部屋での読書も問題なし

 操作方法は、どちらもページを左右に「スワイプ」するか、もしくは「タップ」することで行える。一部の電子書籍端末では、専用のページめくりボタンを備えていたり、音量ボタンを使ってページをめくれる場合もあるが、今回の両製品はタッチパネル上での操作でのみ、ページめくりが行える。

 ちなみに、このKindle Paperwhiteをはじめ、最近のE Ink電子ペーパー端末の多くは、画面の上下から画面を照らすフロントライト機能を搭載しているため、薄暗い部屋での読書も問題なく行える。こうした点においては、特に不自由さはない。画面を背後から照らす液晶と違って、目に優しいことが特徴だ。

 このフロントライトは、上位の製品ともなると、色を寒色と暖色に切り替えられるので、好みで選ぶこともできる。今回のKindle Paperwhiteは、寒色にしか対応していないが、興味のある人は上位モデルの「Kindle Oasis」などもチェックしてみてほしい。

「Kindle Paperwhite」は画面を上下から照らすフロントライト機能を搭載。暗所での読書にも支障はない
「Fire 7」はバックライトを搭載。背面から直接目に光が飛び込んでくるので、なるべく輝度を落とさないと目が痛くなることも

Fire 7は解像度が低めだがテキストを読むなら気にならない

 画面の解像度は、Kindle Paperwhiteの300ppiに対し、Fire 7は171ppiとやや低い。テキスト表示ではそれほど致命的ではないが、文庫本よりも文字を小さくして読む場合や、ルビまでしっかり確認したい場合は、Fire 7は文字のギザギザが気になるかもしれない。

 このように、テキストを表示することに関してはどちらも一長一短なのだが、両製品の最大の違いは、電子書籍専用であるKindle Paperwhiteに対して、Fire 7は電子書籍以外の用途、具体的には動画や音楽再生、さらにはWebブラウジングまで、幅広く利用できることだ。

 これらについては、多機能であればあるほどよいと考える人もいれば、読書に集中するためには他の機能はむしろないほうがよいと考える人もいるはずで、好みは大きく分かれるだろう。

左がKindle Paperwhite(300ppi)、右がFire 7(171ppi)。解像度の差は歴然だが、極端にフォントサイズを小さくしない限りは、文字がつぶれて読めないといった問題はない
Fire 7は電子書籍用途だけでなく動画鑑賞など一般的な用途にも利用できる

価格はどちらも1万円以下、セールで大幅値引きされることも

 価格はFire 7が5,980円から、Kindle Paperwhiteは13,980円からと差があるが、セール時にはどちらもここから大幅値引きされることが多く、これら通常時の価格はあまり当てにならない。その時点での価格で比較したほうがよいだろう。

 なおどちらのモデルにも容量違いのバリエーションがあるが、テキスト本を中心に読む場合は、最小容量(Kindle Paperwhiteは8GB、Fire 7は16GB)で問題ない。ただしコミックなども読む場合や、またFire 7で動画も視聴する場合は、なるべく大きめの容量を選んでおいたほうが、容量不足で書籍を入れ替える頻度を減らせて便利だろう。

 ちなみにKindle Paperwhiteには、広告が表示される代わりに価格が安い「広告付きモデル」が用意されており、広告なしモデルとは2千円の差額がある。お買い得に見えるが、この広告をあとから差額を払うなどして非表示にする方法はないので注意したい。

 このほかKindle Paperwhiteは、無料4G回線を搭載したモデルも用意されている。こちらはSIMカードを自前で用意しなくともあらかじめLTEでの通信が行え、さらに通信料はAmazonが負担してくれる。価格はやや割高になるが、外出先で小説をダウンロードしたい場合も、追加費用なしで利用できるのでオススメだ。

E Inkなら「BOOX」、汎用性なら「iPad mini」も候補に

 ところで今回の2つのモデルは、いずれもAmazonの電子書籍ストア「Kindle」にのみ対応しており、他の電子書籍ストアでは利用できない。他の電子書籍ストアで、これらに相当するモデルを利用したい場合は、どのような選択肢があるのだろうか。

 まずE Ink電子ペーパー端末は、もともとAmazon以外で専用端末を発売しているのは楽天Koboしかない。それ以外のストアでE Ink電子ペーパー端末を使いたければ、E Ink電子ペーパー採用のAndroidタブレット「BOOX」シリーズがお勧めだ。

 BOOXであれば、Google Playストアから好みの電子書籍アプリをインストールして利用できる。例えば7.8型の「BOOX Nova 3」であれば、Kindle Paperwhiteよりも一回り大きい画面サイズで、Kindleを含むほとんどの電子書籍ストアを利用できる。

Androidアプリが使えるOnyxのE Inkタブレット「BOOX」シリーズ。今後普及が見込まれるカラーE Inkを搭載したモデル「BOOX Nova 3 Color」(写真)もラインナップしている

 ただしGoogleアカウントの有効化など、使えるようになるまでの手順がかなり煩雑で、パッケージ開封から10分もあれば読書を始められるKindleのような簡単さはない。またKindleストアの本を読むことについては、自社でチューニングを行っているKindle Paperwhiteのほうが、操作のレスポンスは圧倒的に高速で、ストレスもたまらない。

 そのため、この種のデバイスに慣れていない人にはあまりお勧めしない。画面サイズが一回り大きいぶん重量もあるので、E Inkの軽さに魅力を感じている人にとっては、メリットがひとつ失われてしまっている点も注意したい。

 一方の液晶タブレットは、汎用性を求めるならば「iPad mini」が候補の筆頭になる。画面が細長いFire 7に比べると正方形により近い比率で、本体を横向きにすれば見開きに近いサイズで小説を表示できる。

 価格は5万円台からと高価だが、解像度は300ppiオーバーと表現力も文句なく、電子書籍以外のさまざまな用途にも利用できる。解像度もそれなり、汎用性には劣るFire 7とは、価格だけの違いはある。

Apple「iPad mini」。現行モデルは第5世代で、画面サイズは7.9型。Fire 7よりも横方向に画面が広い
「BOOX Nova 3 Color」(左)と「iPad mini」(右)の比較。どちらもラノベや小説を表示するには十分な大きさだ

 このほか、Kindle Paperwhiteに興味はあるが予算的に難しいようあれば、解像度が低いぶん安価な「Kindle」、またFire 7の解像度の低さが気になるなら、ワンサイズ大きい「Fire HD 8」、およびその上位モデル「Fire HD 8 Plus」も候補になる。いずれもセールに合わせて値引きになることが多いので、併せて検討するとよいだろう。