山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

同時リニューアルした6型「Kindle」と7型「Kindle Paperwhite」の違いを分析

比較検討するにあたって知っておきたい特長

左が7型の「Kindle Paperwhite」、右が6型の「Kindle」。いずれも2024年10月に発売された新モデルだ

 Amazonの電子書籍端末「Kindle」のラインナップがこの10月に一新された。もっとも小型である6型の「Kindle」、普及タイプの7型「Kindle Paperwhite」、さらに手書きに対応した大画面版「Kindle Scribe」の3モデルだが、これらがまとめて刷新されるというのは非常に珍しく、過去にはなかったことだ。

 一般的に、Kindleストアに対応した電子書籍端末がほしいとなった場合、たいていは6型の「Kindle」と7型の「Kindle Paperwhite」の2択になると考えられる。両者の大雑把な違いとしては画面サイズが挙げられるが、実際には細かな違いが多数あり、それらを見逃していると買って後悔しかねない。

 今回はこの両製品を比較検討するにあたって、知っておきたい違いについて紹介する。なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

画面サイズならPaperwhite、持ちやすさならKindle

 まずは画面サイズおよびボディサイズについて。画面サイズは「Kindle」が6型、「Kindle Paperwhite」は従来の6.8型から一回り大きくなり7型となっている。ほんのわずかな違いに思えるが、実際に隣に並べてみると、かなりのサイズ差があることがわかる。特にコミックを表示する場合は、6型の「Kindle」はやや窮屈に感じられる。

 また本体を横向きにしての見開き表示は、6型の「Kindle」は実用的ではなく、7型の「Kindle Paperwhite」ならばギリギリセーフといったところだ。どちらも単ページでの表示に比べるとかなり無理をしているのは事実なのだが、それでも7型の「Kindle Paperwhite」であれば、iPhoneの大画面版であるPro Maxシリーズとほぼ同じページサイズで表示できるので、最低限の実用性はキープしている。

 本格的に見開き表示を行うならば、これら2製品よりも上位の「Kindle Scribe」(10.2型)が望ましいのは事実なのだが、7型の「Kindle Paperwhite」でも最低限の見開き表示はできると考えておけば、役に立つこともあるだろう。

左が「Kindle Paperwhite」、右が「Kindle」。画面サイズは7型と6型で、並べてみると差はかなりある
画面を横にしての見開き表示。「Kindle Paperwhite」はスマホ(iPhone 16 Pro Max、向かって右)とほぼ同じページサイズで表示できる
「Kindle」で見開き表示をするとスマホ(iPhone 16 Pro Max)と比べても明らかに小さくなってしまい、セリフなどが読み取りづらくなることもしばしばだ

 一方で持ちやすさについては、片手で余裕でつかめる6型の「Kindle」に対して、7型の「Kindle Paperwhite」はボディ幅が広いため、気軽に掴むのは難しい。特に寝転がっての読書や、電車やバスで吊り革をつかんでの読書など、不安定な姿勢でページめくりを行うには、7型の「Kindle Paperwhite」はやや辛い。どうしてもという場合は、タブレット向けに販売されている、落下防止のバンドなどのアクセサリを使うことも考えたほうがよい。

一方で「Kindle Paperwhite」は片手で持つにはかなり大柄。鷲掴みにするのがやっとだ
「Kindle」は片手でしっかりと握れるサイズ。片手で保持しながらのページめくりも苦にならない

 もうひとつ、重量差も見逃せない。7型の「Kindle Paperwhite」は211gあるのに対し、6型の「Kindle」は158gと、50g以上の差がある。iPhoneの標準モデルと大型モデルでも、重量差は30g程度しかないのでかなりの差だ。手に持っての利用はもちろんのこと、常時バッグの中に入れておいてごくたまにしか使わないという場合でも、6型の「Kindle」を選んでおいたほうが、負担は少なくて済むだろう。

表示まわりの性能、パフォーマンスはPaperwhiteに圧倒的軍配

 表示品質については、両製品ともに解像度300ppiと高く、表現力の違いはない。16階調グレースケールなのも共通だ。一方で画面のコントラストについては、「Kindle Paperwhite」はコントラストが強く、黒も引き締まって見えるのに対して、「Kindle」はベタ塗りの部分も若干白っぽく見える場合がある。単体で見て気になるほどではないが、塗りつぶしが多いコミックなどでは、「Kindle Paperwhite」をチョイスしたほうが、満足感は高いだろう。

暗所で比較すると両者のコントラスト差がよくわかる。左の「Kindle Paperwhite」は黒が引き締まっているのに対して、右の「Kindle」はベタ塗りの部分がやや薄く、青っぽくなっているのが分かる

 電子ペーパー端末ではおなじみのフロントライトは、両製品ともに搭載しているが、「Kindle Paperwhite」が17個のLEDを搭載しているのに対し、「Kindle」は4個しかLEDを搭載しておらず、画面全体を照らすのに若干のムラがある。数年前の製品と比べると、気にならないレベルにまで改善されているのだが、画面とベゼルの間を上から覗き込むとこのLEDの個数がはっきりとわかるなど、存在を意識することは少なからずある。

 また「Kindle Paperwhite」は、俗に暖色と言われる、オレンジ色のLEDも利用できる。通常のフロントライトは青みが強く目が疲れるという場合は、これを利用すれば目への負担が軽減される。使わない人はまったく使わないだろうが、あって困るものではないだろう。

「Kindle」は4つのLEDを搭載。画面を上から覗き込むと、下に4つの光源が並んでいるのがわかる
「Kindle Paperwhite」はLEDが17個と多く、またベゼルと画面に段差がないこともあって、光源の存在そのものを意識することがほとんどない
「Kindle Paperwhite」(左)は暖色にも対応しており、目に優しいオレンジ色のライトを用いることもできる。これは最大値にした状態で、より弱めることもできる

 このほか目に付く違いとしては、「Kindle Paperwhite」のみIPX8等級の防水機能を搭載していることが挙げられる。浴室やプールなど、水がかかりやすいところで読書を楽しみたい場合は、「Kindle Paperwhite」一択ということになる。

 パフォーマンスはどうだろうか。6型の「Kindle」はもともとコスト重視でスペックは高くなく、一方の7型の「Kindle Paperwhite」はスペック重視でかつての最上位モデル「Kindle Oasis」を超えるレスポンスを実現している。特に今回のモデルではページめくりだけでなく、ホーム画面やライブラリ、ストアを行き来する場合の読み込み速度も大幅に向上している。レスポンス重視ならば、ややもっさり気味の「Kindle」よりも、「Kindle Paperwhite」がおすすめだ。

価格はどちらの製品も大幅値上げ。従来モデルを選ぶ手も?

 最後は実売価格だ。両製品ともに従来モデルから大幅に値上げされ、6型の「Kindle」が19,980円、7型の「Kindle Paperwhite」は27,980円と、かつてはセールで1万円台前半、場合によっては1万円の大台を割るほどの安さで入手できたのが嘘のような価格帯になっている。

 それゆえ予算優先ならば、ついつい値段の安い「Kindle」を選んでしまいがちだが、「Kindle Paperwhite」でしかできないことも多いので、セールの機会なども活用しながら、購入のタイミングを見定めたいところだ。

 なお16GBという容量は両製品とも同じだが、「Kindle Paperwhite」は容量を32GBに倍増させ、さらにワイヤレス充電にも対応した上位モデル「シグニチャーエディション」も用意されている。価格はさらにプラスアルファになるが、より大容量を求めるのであれば、そちらを選ぶという選択肢もあるだろう。

 またどちらの製品も、モデルチェンジ前の従来モデルはすでにAmazonのサイト上では在庫切れとされているが、店頭の流通在庫はいまも残っている可能性がある。新モデルとの性能差はそれほど大きくなく、今となっては価格もリーズナブルなので、従来モデルの在庫を幸運にも店頭で見つけた場合は、安い値段で手に入れるチャンスと言えそうだ。

「Kindle Paperwhite」の従来モデル(右)は、画面サイズは6.8型とひとまわり小さいが、差はほとんど感じない。パフォーマンスも一定のレベルに達しており、安値で購入できるのであればお得だ
「Kindle」の従来モデル(右)は、速度面ではやや劣るものの、画面サイズや表示性能に違いはほとんどなく、それでいて価格は安い。こちらも在庫があれば狙い目と言える