レビュー

サポートや企業内Q&Aに使えるAIチャットボットを5分で作れる「OPTiM AIRES」を試してみた

「無関係な質問には答えない」にもバッチリ対応

「OPTiM AIRES」の管理画面

「質問に答えるAIチャットボット」を簡単に作成・運用できるサービス「無関係な質問に回答しない」のもポイント

 株式会社オプティムが、AIチャットボット「OPTiM AIRES(オプティム アイレス)」の提供を開始した。Q&Aやマニュアル、URLを登録するだけで、AIエージェント型チャットボットを5分で作成可能という。

 チャットボットはさまざまな企業で活用されているが、あらかじめ設定されたシナリオを選択していく「シナリオ型」や、登録されたQ&Aに近いものを提示する「FAQ型」が一般的だ。これらは回答内容は正確だが、ユーザーが求める柔軟な回答ができるとは限らない。

作ったチャットボットのURLが発行される。このURLでチャットボットに質問する
URLにアクセスしてチャットボットに質問できる

 これに対して、ユーザーの入力を理解して回答を生成する「AI型」では、自然言語で受け答えが可能なメリットがあるものの、回答の精度は低くなる。

 また、生成AIを普通に使うと、「関係のない質問」や「答えてほしくない質問」にも回答してしまうが、「OPTiM AIRES」では与えられたデータに基づいた回答以外を出力しないのもポイント。ユーザーサポートや企業内Q&Aに向いている仕様と言えるだろう。

 「OPTiM AIRES」は、生成AIによる柔軟な受け答えに加え、Q&Aデータを先に検索させて回答精度を高める仕組みを採用した、「FAQ型」と「AI型」の複合型だとしている。またベースとなるデータは、マニュアルとなるPDFなどのファイル(docxやpptxなども可能)や質問と答えを対にしたCSVファイル、WebサイトのURLを渡すだけでよく、運用工数も低いという。

 高性能なチャットボットを作るというと、作業工数もシステム構築も手間がかかりそうに思う人も多いだろう。しかし「OPTiM AIRES」を使えば自然言語で質問・回答できるAIチャットボットが簡単に作成できるという。

 本当にそううまくいくのかどうか、自分の連載などを例に試してみた。

準備は「URLを読み込ませるだけ」

 「OPTiM AIRES」はフリープランが用意されており、無料体験が可能。また現在は無料トライアルアカウントが配布されており、月額5万円のライトプランと同じ内容を、約2週間体験できる。今回はこの無料トライアルアカウントでテストを行っている。

 利用するには、公式サイトから「フリープランを開始」を選んでアカウントを作成する。現在はフリープランの登録と同時に、無料トライアルアカウントが適用される。

 登録手続きを終えると、管理画面を開けられる。まだ何のデータも渡していない状態なので、ベースとなるデータを登録する。まずは今回、編集部の許可を得て、窓の杜を丸ごとデータとして渡してみる。

 左のタブから[データ取り込み]を選び、右上にある[新規作成]を選択。Webサイト名とURLの入力を求められるので、窓の杜のトップとなるURL(https://forest.watch.impress.co.jp/)を渡した。

[データ取り込み]の画面。まだ何もしていないのでデータはない状態
窓の杜のURLを指定する

 すると「設定を登録し、データ取り込みを開始します」というダイアログが表示される。[登録して実行]をクリックして作業を進める。

[登録して実行]で登録作業が始まる

 すると[データ取り込み]の画面に、窓の杜が登録された。登録したURLは、そのページだけでなく、配下にあるページも全てナレッジ化する。つまり窓の杜であれば、ニュースやライブラリの情報など、あらゆるページをクロールしてデータとして蓄積してくれるわけだ。

窓の杜が登録された。データ登録の実行はしばらくすると開始される

 ただし窓の杜の膨大なページ量を全て読み込もうとすると、かなりの時間がかかるだろうと判断。より小さいデータとして、筆者の連載コーナーである「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」も合わせて読み込ませた。

 「OPTiM AIRES」のライトプランでは、データ元とできるWebサイトは2つまでとされているため、この2つで登録数は限界。筆者の連載コーナーも窓の杜に含まれるので本来は不要なのだが、あくまで時間短縮のためのテストとして登録した。

筆者の連載記事も平行して読み込ませた

 Webサイトの登録が済むと、リストにステータスが表示される。Webサイトへの情報読み込みが始まると「実行中」、完了すれば「終了」のステータスが付く。

 窓の杜全体の読み込みは2日かかっても「実行中」のままで、取り込みページ数は4746/5000という表示。さすがに参照先が多すぎて処理しきれないようだ。窓の杜に導入する際は、月額10万円のスタンダードプランを検討するよう編集部に伝えよう(笑)。

窓の杜のデータはライトプランでは全て読み切れない模様

 これに対して筆者の連載コーナーは1時間程度で終了した。取り込みページ数は162。連載記事は150本程度あるはずなので、概ね想定どおりの数字だ。

筆者の連載は無事に読み込みが終わった

回答のクオリティは?

[チャットボット設定]にある「チャットボットURL」からアクセス。チャットボットの名前や初期メッセージなども指定できる

 筆者の連載コーナーの取り込みが終わった時点で、チャットボットとの会話を試してみた。チャットボットのURLは、左のメニューから[チャットボット設定]を選択。[チャットボットURL]として示されているURLにアクセスする。

 かなりシンプルなチャットUIが表示され、「お問い合わせありがとうございます」というチャットボットのメッセージが表示された。このメッセージ内容も[チャットボット設定]でカスタマイズできる。

[チャットボット設定]にある「チャットボットURL」が、チャットボットのURLになる。

 画面下部にあるチャットウインドウに質問を書き込む。まずは連載を書いている本人について聞くということで、『石田賀津男ってどんな人?』と入力した。すると連載記事で著者プロフィールとしている内容をベースに、丁寧な口調で返答してくれた。内容に間違いはなく、参考情報としてURLまで加えてくれている。

筆者の情報を答えてもらった。記事のプロフィールのコピーではなく、チャットボットの回答として適切な言い回しに修正されている

 続いて記事内容に関する質問もしてみた。『ウィザードリィ 狂王の試練場のリメイク版で、パーティ全滅時のリセット技は使えるの?』。これは筆者が2024年5月に執筆した記事を参照すれば答えられる内容だ。

 回答は正確なだけでなく、記事全体の内容から適切な部分を抜き出し、質問内容にフォーカスした上、丁寧な日本語でまとめている。筆者の連載コーナーに書かれた情報ならば、適切に情報を拾ってくれそうだ。

筆者の記事にある情報を適切に拾い上げ、うまくまとめて答えている

 なお処理中のデータでも参照はできるようで、『動画を編集するのにいいソフトを教えて』と聞いてみたところ、窓の杜の掲載記事の情報から「DaVinci Resolve」をおすすめする回答があった。箇条書きを使うなど、見やすさにも配慮している。

窓の杜全体のデータは処理中ながら、読み込み済みのデータは参照できた

 また、こうした特定用途向けのチャットボットで課題になるのが「関係のない質問に答えないこと」。筆者も「おすすめの料理は?」など、窓の杜と関係のない質問をいろいろしてみたが、回答は常に「質問にお答えすることができません」となった。汎用的なAIチャットボットと違い、関係のない質問には答えないようになっている。

関係ない質問をしてみると、「回答できない」という返答が来る。特定用途向けのAIチャットボットでは大事な挙動だ

 「OPTiM AIRES」の学習機能はURLのほか、pdf、txt、md、doc、docx、ppt、pptxの拡張子ファイルをアップロードする「ドキュメント」と、任意の想定質問と回答を追加できる「Q&A」を利用できる。データ元はURLである必要はなく、手元にあるテキストベースのファイルでも構わないということだ。これらすべての組み合わせにも対応する。

テキストベースのファイルを送信する「ドキュメント」
任意の質問と回答を入力できる「Q&A」

 URLをベースにする場合、トップページを指定するだけで済むので、およそAIチャットボットを作るという感覚ではない。AIに特定のWebサイトの情報を読み込ませるというアプローチはとてもわかりやすく、出力される回答も従来のチャットボットとは一線を画したクオリティの高さがある。

 今回のテストは個人のお遊びレベルの使い方だと思うが、それでもこの回答精度が実現できてしまうことが、「OPTiM AIRES」の実力を示している。生成AIのすごさを感じられるコンテンツの1つとして見ても面白く、活用できる場面は想像以上に多そうだ。ぜひ多くの人に試していただきたい。