石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

初代「ウィザードリィ」リメイク版でリセット技は使えるのか?

「Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord」のタイトル画面

40年以上前に登場した伝説のダンジョンRPGをリメイク

 ダンジョンRPG「Wizardry: Proving Grounds of the Mad Overlord(ウィザードリィ 狂王の試練場)」のSteam版が、5月23日に正式版としてリリースされた。本作は昨年から早期アクセス版が提供されており、家庭用ゲーム機での発売に合わせて正式版へと移行した。

 「ウィザードリィ」は、コンピューターRPG、特にダンジョン探索RPGの先駆者として知られる作品で、多数のシリーズ作品が作られている。本作はその第1作目となる1981年に発売された作品を、3Dリメイクしたものとなる。

 元々はApple II向けに開発された作品で、日本ではファミコン版などの移植版をプレイした方も多いと思う。とはいえそれも30年以上前の話で、今や未プレイの方が大半だろう。伝説的な作品を体験するにはとてもいい機会と言える。

現代に続くダンジョン探索RPGのスタイルを築いた名作だ

ランダムボーナスポイントで延々キャラ作成もできる

 本作は3Dリメイクに合わせて、移植版の要素も含んだアレンジが加えられている。ゲームを開始するとすぐ、マップの選択画面が出るのだが、一方はApple IIに準拠した「オリジナル」、もう一方はコンソール(家庭用ゲーム機)移植版に準拠した「クラシック」となる。

 移植に際してマップが修正され、より複雑で難易度が上がっているという。初めてプレイする方ならどちらを選んでも構わないが、ファミコン版を思い出しながらプレイしたい方は「クラシック」を選ぶといい。

マップを2種類から選べる

 またゲーム設定もオリジナル版設定に加え、調整を加えたリメイク版設定が用意されている。リメイク版はコンソール移植版の要素も含まれており、概ねモダンで遊びやすくなっていると考えていい。アイテムや呪文の名前も、コンソール版に沿ったものか、Apple IIからの翻訳版か、英語版そのままかを選べる。

ゲーム設定も移植版などを反映して細かく変更できる

 基本的にはリメイク版のデフォルト設定でプレイするのがいいと思うが、筆者は1つだけ設定を変えた。キャラクター作成時のボーナスポイントの設定で、標準では「規定値」となっているが、「ランダム」に変更。「規定値」だとキャラクターの種族によってステータスに割り振れるボーナスポイントが固定値になるのだが、「ランダム」にすると値が試行ごとに変化する。

 筆者が過去に遊んだ「ウィザードリィ」シリーズ作品は、ボーナスポイントがランダムになっていた。キャラクターを作ってはキャンセルを繰り返して特大ボーナスポイントが出るまで待つのが、ゲームの最初の楽しみになる。これは今回も採用していきたい。

 新しいキャラクターの作成は、街にある訓練場で行う。「キャラクターを作成」を選ぶと、種族を選択する画面に移るとともに、ボーナスポイントも決まる。ここでゲームパッドのXボタンを押すと、ボーナスポイントを再抽選できる。いちいちキャラクターを作り直さず、ワンボタンで再抽選できるのはありがたい。連打しすぎて特大ポイントを逃すのもシリーズあるある話。

ポイントの再抽選はワンボタンで簡単

 ちなみに筆者が数十分試した結果、最大でも30ポイントまでだった。60ポイントくらい獲得して、いきなり忍者などの最上位の職業が選べるようにはならないようだ。

 なお設定を変更しても、ゲームのグラフィックスは3Dリメイクしたものから変わらない。代わりにプレイ中は画面右下に、Apple II版と思われる画面がオーバーレイ表示されている。当時のゲームに思いを馳せつつ、3Dリメイク版をプレイできるという仕掛けだ。

3Dリメイクの画面と、昔の質素な画面の両方を見比べられる

シリーズ定番のリセット技は使えるのか?

 ゲームとしてはシリーズ伝統のダンジョン探索であり、方眼紙を使ってマッピングできるマップ形状も本作から健在だ。モンスターを倒して経験値やお金を手に入れて強化し、よりダンジョン奥地へ進んでいく。レベルアップに必要な経験値を稼いでもその場でレベルは上がらず、宿屋でレベルアップする必要があるのは覚えておきたい。

 覚えておくことと言えば、「ウィザードリィ」シリーズはダンジョン内でパーティが全滅すると、その場に死体が残る。助け出すためには別のパーティを編成してその場所に行き、死体を回収しなければならない。しかもパーティの空き人数分しか回収できず、5人で向かった場合は1人しか回収できない。

パーティが全滅した場所まで到達すると、死体を回収できる

 普通は6人パーティを組んで、その6人を育てていくはずなので、全滅すると回収は極めて困難になる。死んだらセーブポイントに戻るとか、お金が半分になるとかよりも厳しいペナルティで、「ウィザードリィ」シリーズが難しいと言われる最大のポイントだ。

 そこでプレイヤーは、全滅が確定した瞬間、あるいは予想された時点でゲームをリセットする。家庭用ゲーム機であればリセットボタンを押す。昔のPCであればフロッピーディスクを抜くと聞いた。本作はオートセーブされるので、全滅した状態でセーブさせないようリセットし、直前のデータまで戻って再開するわけだ。

 筆者が知っている「ウィザードリィ」シリーズの家庭用ゲーム機版では、パーティの最後の1人のHPが0になり、さらにボタンを押してゲームを進めると、画面が墓地のイラストに切り替わって「全滅しました」と表示される。この画面が出たら全滅の状態がセーブされてしまうので、HPが0になったらゲームを進めず、全滅告知画面が出る前にリセットしていた。

 では本作でもリセット技が通用するのだろうか? 試してみよう。まずは適当なキャラクターを1人作成する。

酷い名前を付ける

 1人パーティでダンジョンへ向かわせ、敵とバトル。

弱い敵だと1人で普通に倒してしまう。どんどん行こう

 そしてHPが0になった瞬間に、[Alt]+[F4]キーでゲームを強制終了する。

この時点でゲームを強制終了

 そしてゲームを再起動し、データをロード。

セーブデータを選択

 数秒の読み込み時間があり、表示された画面は……

【リセット後の再起動はこうなる】
初代「ウィザードリィ」リメイク版でリセット技は使えるのか? - 窓の杜

 無情にも「パーティは全滅しました」の文字が躍る。どうやらリセット技は使わせてもらえないようだ。これは難易度がぐっと上がるということだろうか(といってもリセットを想定して作られてはいないと思う)。

 ともかく死体を回収しに元のパーティから5人を編成して向かわせる。やたら強い敵と遭遇して1人死亡するハプニングもあったが、先の1人が死亡した場所に到着。しかしそこにあるはずの死体が見つからない。

ここで全滅したはずなのに、何もないらしい

 おかしいなと思って周辺を捜索すると、なぜかダンジョン入り口の場所に死体があった。変なタイミングで強制終了したことで、全滅した場所が正しく記録されなかったのかもしれない。もし育てたパーティの回収で本来の位置が狂っていたら回収不能になっていた可能性もある。本作ではリセット技は使わない方がよさそうだ。セーブデータの複製は可能なので、力技で対応できなくはないが。

なぜかダンジョン入り口で死体を発見

 死体を街に持ち帰り、教会に行くと蘇生できる。レベル1のキャラクターなら無料。「囁き…詠唱…祈り…念じろ!」のお決まりのフレーズとともに、無事復活を果たした。なお蘇生するキャラクターの横に(死亡)とあるので、おそらく蘇生に失敗して(灰)ステータスになったりもするのだろう。

シリーズのファンは画面の前で本当にお祈りする蘇生シーン

 ともあれゲームとしては見た目が美しくなり、自分好みのシステムで遊べる設定の深さもあり、とても遊びやすくなっている。「ウィザードリィ」はテーブルトークRPGを元にした作品で、後のコンピューターRPGとは違う独特な仕組みも多いのだが、本作を導入としてシリーズを知っていくのはよい手だと思う。ぜひ気軽に挑戦してみていただきたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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