山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

「BOOX Palma2」はどう進化? スマホサイズE Ink電子ペーパーAndroid端末の新旧比較

片手で持てる6.13型モノクロ電子書籍端末の最新版は買いか?

 目に優しい特性ゆえ、長時間画面を眺めている用途に向くE Ink電子ペーパー端末だが、市販の製品の多くは文庫本を超えるサイズであることがほとんどだ。むしろ普段使っているスマートフォンがE Inkになっただけの、片手で持てるコンパクトなサイズを求めている人も多いのではないだろうか。

 そうしたニーズにぴったりな、E Ink電子ペーパーを採用したスマホサイズのAndroid端末「BOOX Palma」に、第2世代モデルが登場した。これまでの第1世代の製品とは何が違うのか、その使い方の差も含めてチェックしてみよう。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

今回はE Ink電子ペーパーを採用したスマホサイズのAndroid端末、BOOX Palma 2(左)とBOOX Palma(右)を比較する

スマホサイズ×E Ink電子ペーパー搭載という基本仕様は共通

 本製品は、スマホサイズのボディにモノクロE Ink電子ペーパーを搭載した製品。スマホと変わらぬ持ちやすさで、電子書籍をはじめとしたドキュメントを参照できる。外見に反してモバイル回線には非対応で、通信方式はWi-Fiのみとなる。

BOOX Palma 2。スマホそっくりのデザイン。画面サイズは6.13型

 OSにAndroidを採用しており、「Google Playストア」にも対応しているため、さまざまな電子書籍ストアアプリをインストールして利用できる。E Ink電子ペーパーに興味はあるが、利用している電子書籍ストアが「Kindle」や「楽天Kobo」以外なのでそれらの専用端末は使えない人、また複数の電子書籍ストアを掛け持ちしている人には最適だ。

 さて今回のBOOX Palma2は、外見は従来のBOOX Palmaとほとんど変わらない。画面サイズは同じ6.13型で、ボディサイズもほぼ同等。デザインも大きく変わるところはない。ページめくりボタンはなく、スタイラスに対応しないことも同様だ。

BOOX Palma。外見は後継のBOOX Palma 2とほぼ同じだ
背面にはカメラとフラッシュを搭載する。外見はそっくりだ
底面。こちらも見分けがつかない。どちらもUSB Type-Cを採用する

 ちなみに重量はともに公称170g。iPhone 16 Pro Maxのように画面サイズが7型に迫る大型スマホと比べると50g近く軽いが、画面サイズが同等であるiPhone 16は本製品と同じ公称170gなので、重量面でのアドバンテージはない。スマホとともに携行する場合、結果的にスマホ2台分の重量となる点は注意したい。

BOOX Palma 2(左)とiPhone 16 Pro Max(右)の比較。画面はサイズ差こそあるものの、スマホライクなボディであることがよく分かる
背面。本製品のカメラはスキャン用なので、写真撮影用の複数のレンズを搭載したスマホと比べると見た目もスッキリしている
BOOX Palma 2は公称170g、実測で168g
BOOX Palmaは公称170g、実測で164g

新モデル「Palma 2」は新たに指紋認証を搭載

 さて両製品の最大の違いとして、Palma 2は新たに指紋認証を搭載したことが挙げられる。

 Kindleや楽天Koboなど読書用E Ink電子ペーパー端末の多くは生体認証は非搭載で、ロック解除はパスワードかPINで行う仕組みだ。これは汎用のスマホと違って個人情報にあたるデータが本体内にほとんど保存されておらず、ロックしなくてもそれほど支障はないという事情もあるだろうが、私物には例外なくロックをかけるユーザーにとっては、毎回パスワードかPINを手入力しなくてはならず、不便さが否めなかった。

BOOX Palma 2は電源ボタンと一体化した指紋認証センサーを搭載している
BOOX Palma 2(上)とBOOX Palma(下)の右側面の比較。指紋認証センサーを搭載したことで電源ボタンがひとまわり大きく、また表面がフラットになっている
ちなみに左側面はまったく違いはない。なお右端にあるスロットはメモリカード用でSIMは利用できない

 その点、このBOOX Palma2は指紋認証を搭載しているので、指で触れるだけでロックを解除できる。電車の中で本を読んでいて、乗換駅に着いたところで読書を中断して画面をロックし、乗り換えが完了してからまたロックを解除して読み始めるといった具合に、小刻みにロックと解除を繰り返す利用スタイルでは非常に便利だろう。

 もちろん、自宅内でのみ使用する場合でも、家族に読んでいる本を見られたくない人にとって、こまめにロック解除ができる指紋認証は、何かと重宝するはずだ。ちなみに電子書籍アプリの中には固有のロック機能を搭載したアプリもあるが、今回DMMブックスで試した限り、それらのロック解除もPalma2の指紋認証ボタンで問題なく行えた。

指紋認証の設定画面。複数の指紋を追加できる(左)指紋認証センサーは右側面上方に配置されている(中央)設定方法はスマホのそれとほぼ同じだ(右)
DMMブックスのプライバシー設定画面。指紋認証によるアプリのロック解除に対応している(左)試したところ、本製品の指紋認証センサーで問題なくロックの解除が行えた(右)

画面はなぜか従来モデルのほうが明るい?

 そのほかの違いとしては、パフォーマンスの差が挙げられる。ベンチマークアプリでは、およそ30~40%程度のパフォーマンスの差があるようだ。

「Google Octane 2.0」によるパフォーマンス比較。ほかのアプリも含め、およそ30~40%程度のパフォーマンスの差があるようだ

 これは搭載しているクアルコムのSoCがスペックアップしていることに加えて、ベースになっているAndroidのバージョンが異なることも影響していると考えられる(PalmaはAndroid 11、Palma 2はAndroid 13)。長く使いたいのであれば、Androidのバージョンが新しいPalma 2のほうがベターだろう。

 さらに実機を並べると初めてわかるのが、画面の輝度の違いだ。新製品であるPalma2のほうが明るいかと思いきや、実は従来モデルのPalmaのほうがはるかに明るい。今回試用したのはどちらも国内代理店から借用した新品なので、経年劣化というのも考えにくい。屋内ではまず問題にならないが、直射日光下で本製品を使うようなケースでは、Palmaのほうが有利になることもあるだろう。

フロントライトを最大輝度にした状態。BOOX Palma 2(左)よりもBOOX Palma(右)のほうが明るい

 このほかAndroidのバージョン違いのせいもあってか、フォントサイズも含めた一部のUIデザインが変更になっているほか、一部機能の呼び名が変更になっている。例えば本製品左側面にある拡張ボタンは、従来は「ファンクションキー」だったのが、Palma 2では「スマートボタン」に改められている。このほか翻訳の違いと見られる相違点もちょくちょくある。

左がBOOX Palma 2、右がBOOX Palma(以下同じ)。ファンクションキーは「スマートボタン」という名称に改められた
ホーム画面。Androidバージョンが異なるためかアイコンを含むデザインが微妙に異なる
コントロールセンター。こちらもアイコンを中心に若干デザインが異なる
リフレッシュモードの設定画面。機能面は同じだが文言が異なる
アプリごとのリフレッシュモードの設定画面。BOOX Palma 2にはAIアシスタントが追加されているのがわかる
最適化の設定画面。こちらも見た目は若干違うが機能は同じだ
GeekBench 6によるハードウェアの詳細画面。Androidのバージョンが異なるほか、CPUも相違がある
GPUもQualcomm Adreno 610から619へと進化している

表示周りのクオリティは同一。競合のないユニークな製品

 もっとも、両製品の違いはその程度。画面解像度はどちらも300ppiで、表示のクオリティに違いはない。アスペクト比の関係で上下には大きな余白ができるが、これは現行のスマホと同じで、片手で持って使えるスリムさに特化した結果といえる。

コミックを表示したところ。原寸よりもかなり小さいが片手でハンドリングしやすいのは利点だ。画面はBOOX Palma 2(左)がやや暗いが、そのぶん黒ベタを濃く表示できる傾向があるようだ
こちらはiPhone 16 Pro Max(右)との比較。上下に余白ができるのはスマホと同様だ

 また両製品ともBSRに対応しているのもポイントだ。BSR(BOOX Super Refresh)とはE Inkのパフォーマンスを向上させるGPUベースの技術で、BOOX製品でもローエンドのモデルではこの技術を搭載していない。言い換えれば、これらに対応しているのは一定のパフォーマンスがある証でもある。

画質の比較。左から、BOOX Palma 2(300ppi)、BOOX Palma(300ppi)、iPhone 16 Pro Max(460ppi)。さすがに460ppiと比較すると不利だが、画面サイズがコンパクトな割には一定のディティールは保っている
テキストを表示したところ。同じ表示設定にした状態では、行数、行あたりの文字数もまったく同じだ

 実際に使っていても、低スペック端末のように操作に対して無反応になるなどの現象は、両製品ともに見られない。この点は安心してよいだろう。ちなみにメモリやストレージの容量、Wi-FiやBluetoothの仕様、バッテリー容量などはまったく同一だ。メモリカードの対応も最大2TBということで変わっていない。

iPhone 16 Pro Max(右)との比較。もとの画面サイズが異なることから情報量は本製品のほうがやや少ない
画質の比較。左から、BOOX Palma 2(300ppi)、BOOX Palma(300ppi)、iPhone 16 Pro Max(460ppi)。文字サイズにもよるが、こちらはコミックほどのディティールの差は感じない

 以上ざっと比較してみたが、スマホを手に持った時のサイズは多くの人にとって馴染みがあり、それゆえ使い始めにあたっての違和感も少ない。既存のE Ink端末は横幅がありすぎて馴染めなかったというユーザーにお勧めできる。BOOX PalmaからBOOX Palma 2に買い替える必要性は感じないが、新たに買うのであればBOOX Palma 2一択だろう。

 Wi-Fiのみでモバイル回線に非対応なのは要注意だが、スマホの機能すべてをE Ink端末でカバーするのは難しく、ドキュメントの表示にフォーカスすることで、今や10万円を超えつつあるスマホの半額近いプライスに押さえるという考え方は支持できる。競合のないユニークな製品であり、電子書籍好きなユーザーは要チェックと言えそうだ。