山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

7型電子ペーパー端末対決! 今買うなら『Kindle Oasis』よりAndroidのE Inkデバイスか?

ページめくりボタン搭載の『BOOX Page』と『Kindle Oasis』のメリットやデメリット

左が『BOOX Page』、右が『Kindle Oasis』

 電子書籍を読むにあたって、ページめくり用の物理ボタンがデバイスに搭載されていると、ワンランク上の、快適な読書を実現できる。

 理由としては、タップやスワイプによるページめくりと違い、物理ボタンを押し込めば確実に反応してくれること。また屋外で手袋をしていたり、あるいは指先に怪我をして包帯を巻いていたりと、タッチが使えない環境でもページがめくれるのもメリットだ。指先が乾燥しがちでタッチパネルが反応しにくいユーザーにも朗報だろう。

 もっとも、こうしたページめくりボタンを搭載したデバイスは存在自体が珍しく、また大抵は特定の電子書籍ストアにしか対応しない。Kindleであれば『Kindle Oasis』、楽天Koboであれば『Kobo Sage』『Kobo Libra 2』は、いずれもページめくりボタンを搭載しているが、自社ストアでしか利用できない。

 今回新たに登場したBOOXの『BOOX Page』は、ページめくりボタンとして使える2つのボタンを画面の横に搭載。さらにGoogle Playストアに対応することから、特定の電子書籍ストアに限らず、さまざまな電子書籍ストアを利用できるのが特徴だ。

 今回は、この『BOOX Page』を、ページめくりボタンを搭載したKindleの最上位モデル『Kindle Oasis』と比較しつつ、それぞれのメリットとデメリットをチェックしていく。なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

『Kindle Oasis』にない『BOOX Page』の利点とは

 まずは画面周りをチェックしよう。7型という画面サイズは両者ともに共通で、解像度も300ppiと横並びなほか、暖色を含めたフロントライトを搭載していることもそっくりだ。

 さらに画面の横に2つのページめくりボタンを搭載する点も、両者に共通している。ちなみに『BOOX Page』のこのボタンはハードウェア的には音量ボタンという扱いなので、電子書籍アプリ側で「音量ボタンでページをめくる」のオプションを有効にすることで、『Kindle Oasis』のページめくりボタンとほぼ同じ挙動になる。

『Kindle Oasis』。7型の画面を搭載したKindleシリーズのハイエンドモデル
画面横にページめくりボタンを備えるのが特徴
こちらは『BOOX Page』。『Kindle Oasis』と同じく7型の画面を搭載する
こちらもやはりページめくりボタンを搭載。ボタンの間隔がなく近接して配置されているのが特徴。なお上下ボタンの役割の入れ替えには対応しない

 そんなBOOXの利点は、Google PlayストアからダウンロードできるAndroidアプリであれば、原則として利用可能なこと。「Kindle」に限らず、さまざまな電子書籍ストアアプリを利用できるので、それらのストアを使っているユーザーや、複数ストアを使い分けているユーザーにはドンピシャの製品と言っていい。

 このほかKindleにはない特徴としては、メモリカードに対応することが挙げられる。『Kindle Oasis』の場合、容量は8GBと32GBの2択で、メモリカード非対応ゆえ、容量を増やすことができない。『BOOX Page』は容量32GB一択ながら、最大1TBまでのメモリカードを追加できるので、必要に応じて容量を大幅に増やせる。

 またUSB Type-Cポートを搭載しているのも特徴だ。『Kindle Oasis』は発売が2019年と古く、それゆえ充電ポートは従来のmicroBのまま。最近はスマホなど多くのデバイスでUSB Type-Cが一般的になってきており、充電ケーブルはUSB Type-Cに統一している人も多いはず。こうした場合にも、充電ケーブルを共通化できることはメリットとなるはずだ。

さまざまな電子書籍アプリをGoogle Playストアからインストールして利用できる
メモリカードスロットを搭載。最大1TBまでのmicroSDを利用できる
『Kindle Oasis』は実測188g
『BOOX Page』は実測192g。ほぼ同じと言っていい

『BOOX Page』の弱点は?

 Kindleストア以外のさまざまな電子書籍ストアが利用できるなど、多くの部分で『Kindle Oasis』の上位互換と言って差し支えない『BOOX Page』だが、本製品ならではのウィークポイントももちろん存在する。

 まずひとつは、各電子書籍アプリに対するチューニングだ。『Kindle Oasis』の場合、使える電子書籍ストアアプリは「Kindle」だけだが、そのぶんチューニングはしっかりと施されており、レスポンスは極めて高速。またユーザー側で画質の調整を行う必要はない。

 これに対して『BOOX Page』は、画質を優先するか、それともレスポンスを優先するか、細かいチューニングはユーザーに委ねられており、使い始めるにあたって一定の手間はかかる。これらチューニングは電子書籍ストアアプリごとに行う必要があるため、複数ストアを利用するとなると、手間は比例して増えていく。

BOOXではアプリごとに[最適化]メニューが用意されている。Kindleにはない概念だ
細かなチューニングが行えるぶん手間はかかる。また最適解を見つけるのが難しい
リフレッシュモードは4種類(アプリによっては5種類)から選べる。画質を優先するか、速度を優先するかを選択できる
リフレッシュモードの違いによる見え方の違い。左から、ノーマル、スピード、X。右端の『Kindle Oasis』の見え方にもっとも近いのはノーマルだが、画面遷移時の反転がわずらわしいなど一長一短ある

 機能面では、『BOOX Page』は防水に非対応であることは考慮しておくべきだろう。『Kindle Oasis』はIPX8相当の防水防塵に対応するため、浴室やプールサイドでの読書など、画面が濡れてタッチが反応しにくい場合も、ページめくりボタンで代替できる。『Kindle Oasis』でそうした使い方を多用していた場合、『BOOX Page』への乗り換えは難しいだろう。

 最後は価格だ。『Kindle Oasis』が29,800円からのところ、『BOOX Page』は39,800円と、やや割高だ。もっとも同じ32GBで広告なしモデルの場合、『Kindle Oasis』は34,980円なので、実質的な差は約5千円となる。筆者個人としては、プラス5千円でさまざまな電子書籍ストアアプリが使えるのはむしろ破格に安いと思うのだが、こうした評価はユーザーによっても変わってくるだろう。

ユーザーごとの利用状況なども加味した判断が必要

 現行の『Kindle Oasis』は2019年に発売されたモデルで、すでに販売期間は4年に及んでおり、仮にいま購入しようとすると、買ってすぐ後継モデルが登場するのではないか?という怖さがある。

 発売されたばかりの『BOOX Page』であればそうした心配はなく、将来性も現行の『Kindle Oasis』よりは上だろう。もちろん今後、『Kindle Oasis』の新モデルが登場すればまた話は変わってくるだろうが、その場合も複数の電子書籍ストアに対応するというメリットは揺るがないだろう。

 その一方で、Kindleだけを使っており、他のストアを今後も利用する予定がないのであれば、チューニングの作業が不要なぶん、『Kindle Oasis』のほうが圧倒的に手軽だ。今回紹介したどちらの製品にも手を出さず、『Kindle Oasis』の後継機を待ってみるという選択肢も含めて、ユーザーごとの利用状況なども加味した、ケースバイケースでの判断が必要と言えそうだ。

背面の比較。『BOOX Page』(左)はほぼフラット、『Kindle Oasis』(右)はグリップ部が厚い
左が『BOOX Page』、右が『Kindle Oasis』。グリップ部は『Kindle Oasis』のほうが厚いが、画面は『BOOX Page』よりもむしろ薄い