山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
定番の電子書籍端末「Kindle」の選び方 ~3つのデバイスの長所・短所を5つのポイントで紹介
2022年11月24日 06:55
AmazonのE Ink電子ペーパー端末「Kindle」が、10月にモデルチェンジを行い、エントリーモデルの解像度が300ppiへと引き上げられた。これにより、上位の「Kindle Paperwhite」、「Kindle Oasis」に加えて、近日発売予定の大画面モデル「Kindle Scribe」までもが、すべて同じ解像度で統一されることになった。
これまでひとつの選び方のポイントだった解像度の差がなくなったことで、今後は製品の選び方も変わってくるものと考えられる。今回はAmazonのセールにもたびたび登場するこれらの製品について、機能の違いをあらためてまとめるとともに、自分に合ったモデルを見つけるための方法を、大きく5つのポイントに分けて紹介する。
なお画質比較のサンプルには、「Kindle Unlimited」で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第3巻』を、許諾を得て使用している。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。
その1:表示品質
冒頭でも述べたように、エントリーモデルの「Kindle」が300ppiと進化したことによって、これら3製品の解像度の違いはなくなった。どの製品も、モノクロ16諧調のE Ink電子ペーパーを採用しており、表示品質は変わらない。同じコンテンツを並べて表示しても、ディティールの差はほとんどない。
一方で、表示にまつわる機能面ではいくつかの違いがある。例えば画面を白黒反転させて読みやすくするダークモードは3製品のいずれにも搭載されているが、画面を明るく照らすフロントライト機能は、上位の2モデルが寒色と暖色を自分好みで調整できるのに対して、「Kindle」は寒色にしか対応しない。
画面サイズは、6型、6.8型、7型とわずかな違いに見えるが、コミックはやはり6.8型以上が有利で、さらに7型になると、画面を横向きにしての見開き表示も視野に入ってくる。またライブラリなど本の一覧を表示するにあたっても、6型はかなり窮屈な印象で、6.8型や7型のほうが余裕がある。雑誌などの大判コンテンツは7型であっても難しいが、なるべく大きめのほうが、さまざまな電子書籍を表示するにあたって融通が利くのは確かだ。
その2:ボディの持ちやすさ
電子書籍端末に限らず、スマホやタブレットでは、小さいほうが手で持ちやすいというのが一般的だが、読書端末である「Kindle」では必ずしもそうとは言い切れない。
というのも、最上位の「Kindle Oasis」は、握りやすいようにグリップを搭載していて、そのぶん画面は薄いという、特殊なデザインを採用しているからだ。この「Kindle Oasis」は、3製品のなかでもっとも画面サイズが大きい7型だが、この構造のおかげで、ボディの横幅が広いにもかかわらず持ちやすい。
一方、エントリーモデルの「Kindle」は6型というコンパクトなサイズを活かして、片手で握ったり、ポケットに入れることもできる。また158gという重量は、「Kindle Paperwhite」(205g)よりも約47g、「Kindle Oasis」(188g)よりも30g軽量だ。解像度が横並びになった現在、持ち歩く機会が多いようであれば、むしろエントリーモデルの「Kindle」のほうが手軽に扱えて重宝する。
ただし「Kindle」はボディに再生樹脂を使用しているせいか、ちょっとした摩擦でも跡がついてしまうので、使い込んでいくと表面が傷だらけになってしまうこともしばしば。長期間美しい状態を保ちたければ、「Kindle Paperwhite」以上のモデルを購入したほうがよいかもしれない。このあたりは利用頻度などによっても最適解が変わってくる。
その3:操作性と防水性能
どのモデルも、タッチ操作によってページめくりが行える点は共通しているが、最上位の「Kindle Oasis」は、これに加えてページめくりボタンを搭載しており、物理ボタンを用いたページめくりも行える。
物理ボタンが有利なのは、タップと違って押し込んだときの感触があるだけでなく、指先がタッチパネルに反応しない場合でも、確実にページがめくれることだ。特にこれから冬にかけて手袋をしている状態で、屋外でこうした本を読む機会があるようであれば、圧倒的に便利だ。
また防水機能も要チェックだ。浴室やプールサイドでの読書はもちろんのこと、水がかかりやすいキッチンなどでの読書にも適する。防水機能は「Kindle Paperwhite」と「Kindle Oasis」が対応しており、エントリーモデルの「Kindle」は非対応。また前述の「Kindle Oasis」のページめくりボタンは、画面に水滴がついた状態でも確実にページがめくれるという意味で利便性は高い。
その4:通信方法
KindleシリーズはどのモデルもWi-Fiを搭載しており、単体で電子書籍のダウンロードおよび購入が行える。これに加えて「Kindle Oasis」は、通信回線(4G)に対応したモデルがラインナップされており、Wi-Fiがない環境でも通信が行える。
これはSIMフリースマホのように別途用意したSIMカードを差すのではなく、内蔵の通信モジュールを利用して通信を行う方式で、通信費はAmazonが負担する。ダウンロードが可能なのはファイルサイズの小さいテキストコンテンツのみで、コミックや雑誌などは非対応という制限はあるが、たとえ既読位置の同期だけであっても、Wi-Fiのない外出先でテザリングせずに通信できるのは大きな利点だ。
ただし、かつてはKindleのひとつの特徴だったこの機能も、いまや搭載機種はじわじわと減少しており、現行モデルで対応するのは前述のように「Kindle Oasis」だけ。しかも現行の「Kindle Oasis」は登場からすでに3年が経過しており、次のモデルチェンジでは機能自体が消滅する可能性がある。この機能が必須というユーザーは、今のうちに製品を確保しておいたほうがよいかもしれない。
その5:実売価格
今回紹介した3製品の実売価格は、「Kindle」が10,980円から、「Kindle Paperwhite」は14,980円から、「Kindle Oasis」は29,980円からとなっている。「Kindle Oasis」は飛び抜けて高価だが、ページめくりボタン以外にも、画面の自動回転、明るさの自動調整など、機能がふんだんに盛り込まれているだけに、実際に使うと価格にも納得がいく。
ただ「Kindle Oasis」は、いま購入するにはタイミングがよいとは言えない。というのも、前述の通り発売から3年が経過しており、モデルチェンジはいつあってもおかしくないからだ。仮にセールで大幅値引きになっていたとしても、セール直後に新製品登場……というのは十分に考えられる筋書きだからだ。
その一方で、希少価値の高い無料4Gモデルをラインナップしていることに加えて、もともと端末自体の完成度は高いため、セール価格で入手できるのであれば、むしろお得であるという見方もできるので難しい。新製品が登場しても後悔しないようであれば、逆に積極的に狙っていくのもありだろう。
いっぽう、この3機種の中でもっともシェアが高いであろう「Kindle Paperwhite」も、すでに発売から1年が経過しており、近い将来に後継モデルが出てくる可能性がある。ただしこちらはフルモデルチェンジしたばかりゆえ、がらりと刷新される可能性は低く、セールで安くなっているのであれば狙い目と言えそうだ。