山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
電子書籍リーダーにはページめくりボタンが必須な人のためのデバイス比較!
「BOOX Go Color 7」と「Kindle Oasis」、どっちを選ぶ?
2024年7月16日 12:37
「ページめくりボタンを搭載した電子書籍リーダー」というのは、読書好きなユーザーにとって非常に魅力的な存在だ。タップやスワイプとは違い、物理的にボタンを押すことでページがめくれるため、操作時の感触もはっきりしているし、手袋をしている環境などでも、問題なく操作できるという利点がある。
こうしたページめくりボタンを搭載した電子書籍端末は、Amazonや楽天Koboの専用モデルの中では上位機種としてラインナップされているほか、BOOXのような汎用端末の一部にも同様のモデルがある。これらの中には、近頃徐々に登場しつつある、カラーE Inkを搭載したモデルもある。
今回はBOOXから新しく登場したカラーE Ink搭載デバイス「BOOX Go Color 7」と、Amazonの電子書籍端末Kindleシリーズで唯一ページめくりボタンを搭載したモノクロE Inkデバイス「Kindle Oasis」を比較する。単純に考えればカラーのほうが優秀に思えるが、実際のところはどうなのだろうか。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。
画面サイズや解像度、ページめくりボタン周りは酷似
まずはざっと外観を比較しよう。画面サイズは両製品ともに7型、1,680×1,264ドットで、アスペクト比も同じ。さらにページめくりボタンを画面横に備えている点も共通している。ちなみにBOOXは見た目だと1ボタンに見えるが、中央で上下に分かれており、それぞれを押すことで「進む」「戻る」の操作が行える。
BOOXの過去の製品では、このページめくりボタンが本体にではなく保護カバーに搭載される製品も存在したが、ページめくりボタンを使うためには必ず重いカバーをつけなくてはならず本末転倒だった。ボタンを本体に内蔵しつつ、軽量なボディに仕上げるという本製品の方向性は正解だと感じる。
ちなみにボタンの感触は、Kindleがどこを押してもしっかりと反応するのに対し、BOOXは端が反応しづらく、押し心地もややチープだ。ボタン以外の質感は問題ないだけに、もう少し頑張ってほしかったところだ。
ボディは両者ともに薄型だが、全体がスリムなBOOXに対し、Kindleは握る部分に厚みがあるというグリップ形状なのが特徴だ。どちらがよいかは好みによるが、軽く感じるのは手元に重心があるKindle、90度回転させて横向きに使うことを想定すればフラットなBOOXのほうが使い勝手がよい。
重量は両者ほぼ差がなく、BOOXは192g、Kindleは188g(いずれも実測)となっている。7型というサイズを考えるとどちらも軽量で、ページめくりボタンを搭載する重量面のハンデを感じさせない。
大きな違いとして挙げられるのは防水機能だ。KindleはIPX8準拠の防水機能を備えるのに対し、BOOXは撥水設計であり防水には非対応だ。常に水がかかる場所での利用は、Kindleに分がある。
その他の特徴としては、BOOXは、最大2TBまでのメモリカードに対応しており、容量を追加できることが挙げられる。また今回紹介しているブラックモデル以外に、ホワイトモデルをラインナップしているのも特徴だ。
一方のKindleは、カラーバリエーションは用意されていない。また容量についても、かつては8GBモデルと32GBモデルの2ラインナップだったのが、現在は8GBのみという、やや寂しい選択肢になっている。BOOXは前述のメモリカードなしで64GBあることを考えると、かなり心もとない。
ちなみにBOOX製品の中には、スタイラスを使ってペン入力ができるモデルもあるが、本製品は対応しておらず、手書きノートとしての利用には対応しない。もっともこれはKindleも同様で、今回取り上げている2製品の差はないことになる。
カラーE Inkのよい点とそうでない点は?
さて、この両製品の違いは大きく分けて2つある。ひとつは対応する電子書籍ストア。BOOXは「Google Playストア」経由でさまざまな電子書籍ストアアプリをインストールできるのに対して、Kindleは自社の電子書籍ストアであるKindleストア限定だ。
従って、Kindleストアを含むか否かを問わず、複数の電子書籍ストアを併用できる端末を探している場合や、そもそもKindleストアを使っていない場合は、Kindleは候補から外れることになる。
もうひとつは画面がカラーか、それともモノクロかということだ。Kindleはモノクロであることから、カラーのコンテンツもモノクロで表示されてしまう。一方のBOOXはカラーのコンテンツも表示できる。小説やコミックのように本文がモノクロであっても、表紙や巻頭ページはカラーであることは多いはずで、それらが忠実に表現できるのはやはり大きい。
もっともカラーだから万能というわけではないので気をつけたい。BOOXに採用されているカラーE Ink「Kaleido 3」は、モノクロは300ppiと高解像度ながら、カラーは150ppiと低解像度で、細かいディティールの描写やグラデーションの表現などにはあまり向いていない。また、液晶などと比べると彩度は低く、色鮮やかさを期待するものではない。
ちなみに雑誌サイズが読めるか否かだが、300ppiと解像度が高いことから、注釈などの細かい文字を除けば、文字が潰れて読めないといった問題もない。スマホでコミックを読むのが平気な人であれば、問題なく読めることだろう。ただしカラーは前述のように解像度が低いので、背景がカラーで文字が白抜きといった表現はかなり見づらくなる。
また、カラーかモノクロか以前の問題として、Kindleは端末自体がAmazonでの利用にチューニングされており、そのぶん動きがスピーディだ。BOOXも、最適化設定を施すことである程度の高速化は可能だが、基本的には画質を取るか、速度を取るかの2択になり、専用機であるKindleには及ばない。カラーにそれほどこだわらず、ストレスなくスピーディに使いたければ、Kindle一択だ。
正しく知った上で選びたいカラーE Ink
今回紹介した「Kindle Oasis」は、2019年に発売されて以降モデルチェンジが行われておらず、ポートも旧来のMicro-Bのままだ。また日本のAmazonではまだ現行品扱いだが、米Amazon.comのサイトではすでに終息扱いとみられ、ラインナップから姿を消している。いまから買うとなると慎重にならざるを得ない。
こうした経緯もあり、現行の電子書籍リーダーを探すとなった場合、そこにカラーE Inkモデルが含まれるのは自然な成り行きだ。最近のカラーE Inkは、楽天Koboも自社向けの電子書籍リーダーに採用するなど、以前のような発展途上の技術という印象は薄れつつある。カラーE Inkという条件で選ぶならば、電子書籍ストアを問わず使える今回の「BOOX Go Color 7」のモデルはよい選択肢といえるだろう。
実売価格は「Kindle Oasis」が8GBで29,980円、「BOOX Go Color 7」が64GBで49,800円と差があるが、容量がまったく異なることを考えると、そこまで開きはないと言える。本稿で紹介したようにカラーE Inkはプラスもあればマイナスもあるので、そのあたりを正しく知った上で選びたいところだ。