山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
3万円も価格が違う、カラーE InkのAndroid端末の違いはどこにある?
「BOOX Note Air3C」vs「BOOX TabUltraC Pro」
2024年1月19日 12:09
近年、その名前を聞く機会が増えつつあるのが、カラーE Inkだ。電子書籍ユースで、色分けされた図版がきちんと見分けられるのは、モノクロE Inkと比較した場合の大きなメリットといえる。液晶と比べると彩度こそ見劣りするが、価格もモノクロE Inkと比べて極端に高価ではなく、液晶は目が疲れやすいというユーザーには魅力的だ。
今回は、いま10型前後のカラーE Ink端末を入手しようとした時に候補に挙がる、BOOXの2製品「BOOX Note Air3C」(以下Note Air)と「BOOX TabUltraC Pro」(以下Tab Ultra)について、販売代理店から借用した機材を用い、実機でなければわからない違いをチェックしていこう。なお画質比較のサンプルには、『DOS/V POWER REPORT』の最終号を、サンプルとして使用している。
両製品の最大の違いはずばりパフォーマンス
この両製品は、ともにカラーE Inkを搭載しており、画面サイズも10.3型と同等でありながら、実売価格はNote Airが86,800円、Tab Ultraが122,200円と、Tab Ultraのほうが約3.5万円も高価だ。Google Playストアに対応し、任意のAndroidアプリをインストールして利用できるという特徴は同じながら、どこが違うのか気になるところだ。順にチェックしていこう。
まずCPUは、いずれもクアルコムの8コアだが、Note Airが2.4GHzなのに対して、Tab Ultraは2.8GHz。またメモリ4GB、ストレージ64GBのNote Airに対して、Tab Ultraはメモリ6GB、ストレージ128GBと、かなりの差がある。
こうしたことから、ベンチマークではかなりのスコア差がつく。「Octane 2.0」による簡易なベンチマークだと、Note Airが「4647」のところ、Tab Ultraは「10471」と、2倍以上の開きがある。こうしたパフォーマンス面の差が、価格差の主な要因と言っていいだろう。
一方で、画面周りの仕様はほぼ同一だ。いずれもカラーE InkはKaleido 3、モノクロE InkはCarta 1200という、最新のパネルを採用している。解像度もカラー150ppi、モノクロ300ppiとまったく同一。暖色および寒色のフロントライトもともに搭載している。
このほか電子ペーパーならではの遅延を減少させるBSR(BOOX Super Refresh)なる独自技術も、両者ともに搭載されている。それでいて反応速度がTab Ultraのほうが速いのは、やはりCPUやメモリまわりの差と見ていいだろう。
その他のハード面については、指紋認証がついた電源ボタンや、USB Type-Cポート、デュアルステレオスピーカーや加速度センサー、さらには最大2TBのmicroSDに対応するのも、両製品ともに共通している。またスタイラスについても、どちらの製品も利用可能だ。
ハード面での大きな相違点としては、Tab Ultraのみ、ページめくりボタンとして使える音量ボタンを搭載していることが挙げられる。電子書籍を読むのが目的ならば、大きなポイントだろう。これも価格差の一要因とみなしてよさそうだ。
スリムさではNote Airが、拡張性はTab Ultraが有利
続いてボディ周りのデザインや形状、さらには手に持った時の印象について見ていこう。
ボディサイズについては、Note Airのほうが幅は5mmほど大きいのだが、ひとつの辺のみベゼル幅が太いデザインは共通で、実際にはそれほどサイズ差は感じない。重ねれば差がわかるという程度だ。むしろそれよりも、全体的に直線的なTab Ultraと、ボディの角が丸みを帯びているNote Airの、フォルムの違いのほうがより印象的だ。
厚みについては、Tab Ultraのほうがやや厚みがある。これはガラススクリーンを採用していることが主要因と考えられる。ただしTab Ultraはこれに加えて、背面に搭載されたスキャンカメラが本体よりも1mmほど厚みがあるので、これを込みで考えるとNote Airよりも2mmほど厚みがある計算になる。
この突起の存在は少々厄介で、バックに入れる場合は引っかかる可能性もあるので、取り回しには少々気をつけたい。ただしカバーを装着して利用するのであれば、少なくともカメラの突起は気にならなくなる。
重量は、Note Airが430g、Tab Ultraが450gと20gほどの差があるが、持ち比べてもほとんどわからない。一般的にiPadなど10型クラスのタブレットは500g前後あるところ、大幅に下回っていることから、体感的にも軽く感じるというのはありそうだ。
大きく異なるのは拡張性で、スタイラスペンが利用できるのは両製品ともに共通だが、Tab Ultraはさらにオプションとしてトラックパッド付キーボードが用意されており、ノートPCライクに使用できる。電子書籍ユース以外でも活用したい人にとっては加点要因だろう。
表示性能は同等。ただし色合いには微妙な差が?
最後になったが電子書籍ユースについて見ていこう。
本製品はGoogle Playストアから任意の電子書籍アプリをインストールして利用できるのが大きな利点だ。Google Playストア側の理由で、コンテンツを購入する時は別途Webブラウザーでストアにアクセスしなくてはならない制限はあるが、これはGoogle Playストアを利用するAndroidタブレットであれば共通の仕様だ。
表示性能については、両者ともに同じパネルを採用することから、ざっと見る限り違いはない。カラーはモノクロに比べて解像度が低いため、色がついた文字などは可読性が下がるほか、モノクロとの組み合わせによっては部分的に読みづらくなる場合があるが、これも両製品は共通であり、違いはない。
ただし色合いについては若干異なっている。具体的には、Note Airのほうは背景がより明るく、一方のTab Ultraは全体的に青みがかっている。同じパネルを採用しながらこうした違いが出るのは、Tab Ultraのみ搭載しているガラススクリーンが影響しているのかもしれない。個人的にはコントラストがはっきりしているNote Airのほうが好みだ。
反応速度については、ページめくりなどの基本操作では差は感じないが、コンテンツのダウンロード完了までにかかる速度などは、Tab Ultraのほうが速く、性能差を感じる。Note Airではタップしてすぐは無反応で、ワンテンポ置いてから反応するというケースが稀に見られるが、Tab Ultraはそうした現象も見られない。
ただ、ロースペックの端末のように、基本操作レベルで引っかかるというわけではない。どちらも及第点には達しており、その中でTab Ultraについては特に優秀と考えたほうが、実態に近い評価と言える。
おすすめはTab Ultraだが、予算重視ならばNote Airも悪くない
以上のように、この両製品の違いは、ひとつはパフォーマンスの違い、もうひとつは拡張性の差ということになる。それが約3.5万円もの価格差となって現れているというわけだ。
ではその価格差なりの価値があるのか否かと問われると、これは「ある」と言ってよい。E Ink端末は、そのパフォーマンスは快適さの違いに直結するので、少しでも高速な製品に投資すれば、それだけ長く快適に使えることになる。
ただ、一方は8万円台、もう一方は12万円台と、大台をまたいでしまっていることもあり、どうしても躊躇するのは事実。現行のiPadで言えば、エントリーモデルのiPadと、プロユースの11インチiPad Proの2択で迷うようなものだ。すぐに結論が出なくて当然だろう。
BOOXの製品はモデルチェンジが速く、半年もすると後継モデルが出ているケースも少なくない。おすすめはあくまでも上位のTab Ultraだが、まずはカラーE Inkの入門用として、予算重視でNote Airを選択するのも、考え方としては十分にありだろう。