山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
「Fire HD 10」の最新モデルと旧モデル最上位機種「Plus」ではどっちがいいもの?
2023年12月15日 06:55
「Fire HD 10」に今秋、第13世代の新モデルが登場した。画面は10.1型と、電子書籍の見開き表示に適したサイズながら、2万円を切るリーズナブルな価格が特徴だ。
一方で、従来の第11世代モデルのひとつとしてラインナップされていた上位モデル「Fire HD 10 Plus」は後継機種が発表されず、12月上旬時点では継続して販売されている。一部のスペックや機能は第13世代「Fire HD 10」を上回っており、むしろこちらが狙い目と感じる人もいるだろう。
今回はそんな第13世代「Fire HD 10」と第11世代「Fire HD 10 Plus」の違いをチェックしつつ、どちらがお買い得かを見ていく。なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。
世代交代後も販売される第11世代「Fire HD 10 Plus」
まずはざっと、両製品の位置づけをチェックしておこう。
「Fire HD 10 Plus」は、現行モデルよりも1つ前、第11世代の上位モデルだ。この第11世代は「Fire HD 10 Plus」と「Fire HD 10」の2モデルがあり、前者はメモリ4GBでワイヤレス充電機能も搭載。後者はメモリ3GBでワイヤレス充電なしと、ハードウェアに大きな相違点があった。
これに対して、最新の第13世代は上位のPlusモデルは廃止され、メモリは3GBでワイヤレス充電機能は非搭載という、「Fire HD 10」が備えていた仕様へと一本化された。第11世代では2モデル編成だったのが、1モデルに戻った格好だ。
この背景には、今年6月、画面が一回り大きい新モデル「Fire Max 11」が登場したことも関係しているとみられる。10型から11型の間に3つものモデルが存在するのは位置づけ的にもややこしいため、上位モデルの役割は「Fire Max 11」に一本化し、10型で1モデル、11型で1モデルというわかりやすいラインナップに改めたと考えられる。
表示性能とパフォーマンス、実売価格をチェック
次にスペックを見ていこう。画面サイズはどちらも10.1型で、解像度は1,920×1,080ドット(224ppi)。つまり表示のクオリティに大きな相違はない。コミックの見開き表示は問題なし、雑誌については見開きだと細かい注釈で文字が潰れる場合があるが、単ページ表示では問題なく読むことができる。
メモリ容量は第13世代「Fire HD 10」が3GB、「Fire HD 10 Plus」は4GBと後者が有利だが、CPUの性能は前者のほうが上であり、ベンチマークでは前者、つまり第13世代「Fire HD 10」のほうが高いスコアとなる。ベースとなっているAndroidが、「Fire HD 10 Plus」はAndroid 9なのに対し、第13世代「Fire HD 10」がAndroid 11であることも関係していそうだ。
実売価格は、同じ32GBモデルで比較すると、「Fire HD 10 Plus」が22,980円、第13世代「Fire HD 10」が19,980円ということで、新モデルのほうが3千円安い。もっともAmazonの場合、セールがひとたびあればこの程度の価格差は容易にひっくり返るので、あくまでも参考程度と捉えておいたほうがよいだろう。
「軽さ」を取るか、「ワイヤレス充電」を取るか
さて、ここまで見る限りでは、両者は一長一短のように思えてくるが、この両製品のどちらを選ぶかの決め手になるのは、ズバリ「軽さ」を取るか、それとも「ワイヤレス充電」を取るかだと言ってしまってよいだろう。
新しい第13世代「Fire HD 10」は、従来よりも数十g軽い、434gという重量が最大の特徴だ。これはFire以外の10型クラスのタブレットと比較しても、かなり軽い部類に入る。見開き表示にこだわって10型クラスのタブレットを選ぶ場合、手に持った時の重さがどうしてもネックになるが、その点で第13世代「Fire HD 10」は有利だ。
この大きな要因のひとつとして、「Fire HD 10 Plus」には搭載されていたワイヤレス充電機能が、第13世代モデルでは省かれていることが挙げられる。従って、軽さを優先するか、それともワイヤレス充電の利便性を取るかで、どちらの製品が自分に適しているかが判断できるというわけである。
ただし純正ワイヤレス充電スタンドは、現在では通常に出荷されているものの、かつて不具合で1年近く出荷停止になったこともあり、実際に影響を受けた筆者としては、設計にやや不安を感じるのも事実。実売価格は5,980円と安価だが、今後のモデルで使い続けられる可能性が低いことも考慮すると、あまりお勧めしないというのが筆者の意見だ。
ちなみに第13世代「Fire HD 10」は、別売のスタイラスによる手書きに対応している。テキストコンテンツにハイライトをつける機会が多い人にとっては、魅力に感じるかもしれない。これについては第11世代「Fire HD 10 Plus」にはない機能の1つだ。
Fireならではの特徴もざっとおさらい
最後に、どちらの製品にも共通する仕様についても軽くチェックしておこう。
利用できる電子書籍ストアは、「Kindleストア」と、「dマガジン」に実質限定される。「Google Play ストア」が利用できないため、その他の電子書籍ストアには非対応だ。その反面、「Kindle」アプリについては、アプリ内での購入が行えるという利点はある。iPadやAndroidタブレットと比べた場合、この点はプラスになるだろう。
ハード面の特徴として、最大1TBの外部メモリに対応することが挙げられる。最近のタブレットは、メモリカードによる容量追加に対応しない製品が増えつつあるため、これらを魅力に感じるユーザーもいるだろう。また電子書籍ユースとは関係がないが、イヤホンジャックを搭載していることも、人によってはポイントになりうるだろう。
一方で、GPSを搭載しておらず、GPSが必須とされるゲーム系のアプリが利用できないのは、上位モデルである「Fire Max 11」も含めて共通だ。Fireタブレットの弱点と言っていい。
また指紋認証などの生体認証を搭載せず、ロック解除のたびにパスコードなどを入力しなくてはいけないのは、悪い意味で共通する特徴だ。
この生体認証、および専用端子によるキーボードの接続を必要とするならば、上位の「Fire Max 11」を選ぶとよい。ただしストレージが64GBと多いとはいえ、実売価格は34,980円とかなり高価で、この価格帯だと一般的なAndroidタブレットでも候補があることは、肝に銘じておいたほうがよいだろう。