山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
ほぼ同サイズで1万円以上の価格差がある「Fire HD 10」と「Fire Max 11」の違いとは?
2025年5月29日 16:15
Amazonのメディアタブレット「Fire」で10型を超えるモデルには、「Fire HD 10」と「Fire Max 11」の2機種がある。同一容量(64GB)での価格差は1.1万円とかなりの開きがあることから、画面サイズ以外にも相違点があることは予想がつくが、それが何なのかは、製品ページの比較表を見てもいまいちピンとこない。
今回は、2023年発売のこの2製品について、主に電子書籍ユースを想定し、機能や性能の差をチェックしていく。なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。
「Fire HD 10」は軽さが売り
まずは外観を中心にざっくりと両製品を見ていこう。「Fire HD 10」の画面サイズは10.1型で、解像度は224ppi。決して高解像度ではないが、このクラスのタブレットしてはおおむね標準といえる。
重量は434gということで、10型クラスのタブレットの代表格であるiPadと比べても軽量で、こちらは競合製品と比べても売りになる部分だ。かつての『Fire=重い』というイメージからすると真反対で驚かされる。
メモリは3GBと、後述する「Fire Max 11」の4GBよりは少なめ。近年のFireタブレットでは、メモリは3GBが標準で、ワンランク上のモデルでは4GBというラインナップが一般的になりつつあるので、その基準でいうと最小限ということになる。なおストレージは32GBと64GBの2モデル構成で、メモリカードによる最大1TBまでの容量追加に対応している。
利用可能な電子書籍ストアは、「Kindleストア」のほか、「dマガジン」もサポートする。これは後述する「Fire Max 11」についても同様で、どちらを選んでも特に違いはない。
「Fire Max 11」は指紋認証に対応
一方の「Fire Max 11」は、画面サイズは11型と、前述の「Fire HD 10」よりは一回り大きいが、解像度は213ppiと、「Fire HD 10」(224ppi)よりわずかに低い。僅差とはいえ、下位モデルに劣っていることが、両製品の比較をしづらくしている一因といえる。「Max」という、いかにも上位機種っぽい型番なので、なおさら混乱する。
ボディサイズは10.1型の「Fire HD 10」より一回り大きいが、画面が縦方向にのみ伸びている関係で、ひとまわり大きいのではなく、より細長いという表現が正しい。重量は490gと、「Fire HD 10」のような軽さのメリットはない。ストレージ容量は64GBのほか、128GBモデルもラインナップしており、さらに最大1TBのメモリカードによる増設にも対応する。
「Fire HD 10」にない利点としては、指紋認証に対応していることが挙げられる。ロック解除をパスワードもしくはPINで行う「Fire HD 10」に比べ、指紋一つですばやく解除できるのは便利だ。この指紋センサーの有無が、価格の差につながっていることは間違いないだろう。
このほかオプションでキーボードやスタイラスが利用できるなど拡張性の高さも特徴だが、電子書籍の利用においては関係がないだろう。
解像度はほぼ同等。ベンチマークでの性能差は?
では両者を比較していこう。実機を並べて見ると、どちらもオーソドックスなタブレットであることがわかる。画面サイズが違うことから、そのぶん「Fire Max 11」のほうが大きいというだけだ。ちなみにベゼル幅は「Fire Max 11」のほうがスリムなので、ボディのサイズ差は画面サイズの差ほどあるわけではない。
意外と違うのがデザインで、「Fire HD 10」は端や角に丸みがあるのに対して、「Fire Max 11」は全体的に直線が基調で、さらに金属素材を採用することからスタイリッシュに見える。樹脂素材を採用しており表面がザラザラな「Fire HD 10」とは対照的だ。また前述のように重量にはかなりの違いがあり、手に持った時も「Fire HD 10」の軽さがはっきりとわかる。
表示性能についてはどうだろうか。前述のように解像度は「Fire Max 11」のほうが低いが、数値的には僅差であり、目視で判別できるほどの差はない。ただし画面の最大輝度は「Fire Max 11」のほうが上であり、液晶パネルのスペック自体はこちらのほうが上だと考えられる。
実際に電子書籍を表示すると、「Fire Max 11」は「Fire HD 10」に比べて一回り大きく表示されている。当たり前のことのように思えるが、こうしたケースではアスペクト比の関係で、大きくなっているのは余白だけで、コンテンツ自体は逆に小さくなっている場合もあるので、そうでないのは安心材料だ。
ただし余白がムダなことに変わりはなく、画面を縦にして雑誌のページを表示すると、その余白の大きさにギョッとさせられる。雑誌の縦横比に近いタブレット、具体的にはiPadと比べた場合に弱点となるのは、この「Fire Max 11」も、また「Fire HD 10」も変わらない。
もっとも、表示サイズ以上に気になるのは、両者の性能差だろう。CPUはどちらも8コアで、製品ページを見る限り「Fire HD 10」が2.05GHz×2、2.0GHz×6、「Fire Max 11」が2.2GHz×2、2.0GHz×6となっている。後者がわずかに上ということになるが、実際のベンチマークではどうなのだろうか。
結論から言うと、ベンチマークのスコアは平均して「Fire Max 11」が「Fire HD 10」の「1~3割増し」程度となるようだ。確かに差はあるものの、実売価格ベースで1万円ちょっともの開きがあることを考えると、もう一声欲しいというのが本音だ。
ちなみに実際に使い比べてみても、電子書籍ユースに限っては、体感速度の差はほぼ皆無。「Fire Max 11」はWi-Fiが11ax対応であるせいか、11ac対応の「Fire HD 10」よりもダウンロードが高速なことが、かろうじて恩恵があるといったところだ。
電子書籍では「Fire HD 10」が総合的に有利!
以上のように、「Fire HD 10」と「Fire Max 11」との価格差のおもな要因は、ひとつは純粋な性能面、もうひとつは指紋センサーや拡張ポートなど「Fire HD 10」にないハードウェアを搭載しているのが要因ということになる。
このうち性能については、電子書籍ユースでは前述のように体感差はほぼない。また、キーボードなどを使う予定がないユーザにとっては、拡張ポートはあっても仕方がないので、電子書籍ユースが中心であれば、「Fire Max 11」はいまいち価値を見いだしにくい。画面サイズが明らかに大きいなどの差があれば話は違ったかもしれないが、そうしたこともない。
そのためセールなどでよほどお買い得な条件が出ていない限り、「Fire Max 11」を選ぶ必要性は薄く、「Fire HD 10」で十分というのが筆者の意見だ。特に「Fire HD 10」は10.1型としては軽量なので、動画鑑賞と違って手で持ったまま操作しなくてはならない電子書籍ユースとは相性がよいというのも、おすすめする理由の一つだ。あくまでも電子書籍ユースが主体であればという前提になるが、参考になれば幸いだ。