山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

スマホ型カラーE Ink端末「BOOX Palma 2 Pro」の表示性能は一般的なスマホとどう違う?

 前回は、スマホ型のE Ink電子ペーパー端末として、カラーE Ink搭載の「BOOX Palma 2 Pro」とモノクロE Ink搭載の「BOOX Palma 2」を比較した。もっとも、モノクロは最初から購入対象に入っておらず、むしろカラーE Inkと一般的なスマホの表示性能の違いが気になるという人も多いはずだ。

 そこで今回は一般的なスマホとしてGoogleの「Pixel 10 Pro XL」を用意し、カラーE Ink端末「BOOX Palma 2 Pro」との表示性能まわりの比較のほか、スマホとして見た場合の機能差、およびスマホの完全な代替としては使えるのかどうかについてもチェックしていく。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』を、サンプルとして使用している。

左が「BOOX Palma 2 Pro」、右が「Pixel 10 Pro XL」

出自は違うが実はどちらもAndroid端末

 まずは簡単に両製品のおさらいから。「BOOX Palma 2 Pro」(以下BOOX)は、6.13型のカラーE Ink(Kaleido 3)を搭載したスマホ型の端末で、Android 15を採用しており、ほぼすべてのAndroid向け電子書籍アプリをGoogle Playストア経由でインストールできる。同じE Ink端末でも、特定の電子書籍ストアにしか対応しないAmazon Kindleや楽天Koboらの端末とは大きく異なる。

「BOOX Palma 2 Pro」。スマホ型のカラーE Ink端末だ。画面サイズは6.13型
背面。カメラは書類スキャンのためのもので一般的な写真の撮影には向かない

 もう一方の「Pixel 10 Pro XL」(以下Pixel)は、国内でシェアを伸ばしているGoogleのAndroidスマホ「Pixel」シリーズのフラッグシップモデルで、Android 16を搭載する。画面サイズは6.8型と大きく、全部入りと言っていい機能の豊富さが特徴だ。こちらももちろんGoogle Playストアを利用でき、あらゆる電子書籍ストアアプリを利用できる。BOOXでは一部アプリが相性が悪く利用できないが、こちらはそうした問題も考えにくい。

「Pixel 10 Pro XL」。Pixel 10シリーズのフラッグシップモデル。画面サイズは6.8型
背面。3つのレンズを搭載し、デジタルで最大100倍の望遠に対応するが、背面から突出しているのはマイナス

 以上のように出自がまったく異なる両製品だが、どちらもAndroidデバイスであり、Google Playストアからアプリをインストールできるという点では共通している。またディスプレイのアスペクト比はBOOXが2:1(18:9)、Pixelが20:9と、BOOXが形状をスマホに寄せてきたことで、どちらも縦長の似たアスペクト比を持つに至っている点も興味深い。

カラーE InkとOLED、表示性能の違いは?

 さて、この2つの製品を電子書籍ユースで比べた場合に、なんといっても気になるのは、画面の見え方の違いだ。両者ともにカラー表示が可能とはいえ、BOOXはカラーE Inkで、PixelはOLED。またBOOXがフロントライトなのに対してPixelはバックライトと、表示方式がまったく異なっている。これによって見え方はどう違ってくるのだろうか。

 まず色合いについては、OLEDのPixelが色鮮やかな発色になるのに対し、BOOXはインクジェットプリンターで普通紙にカラー印刷したかのような、彩度の低い発色となる。また解像度についても、現行スマホの中でも高解像度となる486ppiのPixelに対し、BOOXはカラーが150ppiという低解像度ゆえ、細部のディティールや階調表現の違いは一目瞭然だ。

左がBOOX(カラー150ppi/モノクロ300ppi)、右がPixel(486ppi)。発色の違いは明らかだが、色調自体は左のほうが好みという人もいるだろう
部分アップその1。色はもちろん解像度の差も明らか。画質よりも速度を優先するモードに切り替えると差はさらに広がる
部分アップその2。全体的にはBOOX(左)も健闘しているが、解像度の差によるざらつきはどうしても目立つ
別のカラーページの比較。ディティールはそれほど開きはないが、コントラストに差があるためか、黒の発色に大きな違いが見られる

 つまりカラー表示時のクオリティだけならばPixelの圧勝になるのだが、カラーではなくモノクロのコンテンツであれば、それほどの差は感じられない。というのもカラーE Inkはモノクロとカラーで解像度が異なり、モノクロだけならば300ppiと、カラー(150ppi)よりも高解像度だからだ。事実、テキストコンテンツの表示や、コミックのモノクロページの表示ならば、多少のざらつきはあるものの、Pixelと比べても極端な差はない。

 またバックライトで画面を背後から発光させているPixelは、長時間見続けた場合に目が疲れやすく、さらに直射日光下では明るさを引き上げてやらないと画面が暗く沈み込んでしまう。一方でフロントライトを採用し画面を上下左右から照らすBOOXは、光が直接目に飛び込んでこないぶん負担は軽く、紙に印刷したかのような質感ゆえ屋外での視認性も高い。

モノクロのページについては、解像度の差が小さいことからカラーほどの違いは感じられない
ただしアップにするとざらつき具合の違いが目立つなど、完全に同等というわけではない。コントラスト差ももう少し欲しいところだ
テキストコンテンツはほとんどがモノクロであり、差はそれほど感じられない
こちらはアップにしてもコミックほどの違いは感じられない。細い線もしっかり出ている

 といった具合に、カラーE Inkも見るべきところはあるのだが、ページめくりの際に発生するE Ink特有のリフレッシュ表示や、それらの最適化設定の煩雑さは、スマホと比べた場合はどうしてもハンデになる。目への負担とこれらの手間をバランスにかけてどちらを優先するかは、ユーザー次第ということになる。

直射日光下での見え方の比較。Pixel(右)はピーク輝度が3,300ニトと高いためそれほど影響はないが、ミドルクラス以下のスマホだとカラーE Inkより暗く見えることもある
E Inkのコントロールセンター。フロントライトの調節のほか、ここからE Inkセンターを呼び出せる(左)画面下のE Inkセンターでは各アプリごとのリフレッシュモードやカラーモード、解像度などの設定が行える。カスタマイズ性は高いがスマホと比べ手間はかかる(中央)このほかフルリフレッシュの回数なども細かく調整できる(右)

BOOXはモバイル通信やGPS対応など、スマホライクな機能を搭載

 それ以外の違いについても見ていこう。本体重量はBOOXが実測173gなのに対し、Pixelは232gとかなりのヘビー級。同じPixelシリーズの6.1型モデルでも200gの大台に乗っているので、こと軽さという点ではBOOXが圧倒的に優勢だ。PixelはAndroidスマホとしてはやや重めであることも大きいが、他のスマホでも概ね同様の傾向がみられる。

 操作ボタン類は、電源ボタンと音量ボタンを備えるのは共通だが、BOOXはこれ以外に任意の操作を割り当てられるスマートボタンも搭載しており、電子書籍アプリを割り当てておき一発で起動できるようにするなど、アイディア次第でさまざまな用途に使える。

上がBOOX、下がPixel(以下同じ)。電源ボタンはどちらも右側面にある。Pixelはさらに音量調整ボタンも備える
BOOX(上)は左側面に音量調整ボタンを備えるほか、カスタムボタンも搭載。Pixel(下)はこの面には何もない
両者とも外部接続ポートはUSB Type-C。BOOX(上)はさらにカードスロットを備える
側面にはスマートボタンを搭載。シングルクリック、ダブルクリック、長押しと3つの操作にそれぞれ機能を割り当てられる

 またBOOXは、E Ink端末としては珍しくモバイル通信に対応しており、SIMカードを追加することで外出先でも通信が行える。ただし電話アプリは非搭載なので、音声通話が必要ならばLINEなどSNSアプリの音声通話機能を利用することになる。このほかGPSを搭載することからマップアプリが利用できるなど、スマホと比較しても遜色ない機能を備える。

 このほかメモリカードで容量を追加できるのも、Pixelにない特徴のひとつとして挙げられる。本稿では取り上げていないが、BOOXは別売りのスタイラスを用いた手書き入力が行えるのも、Pixelと比べた場合のメリットと言えるだろう。一方で生体認証については、指紋認証に対応するBOOXに対して、Pixelはさらに顔認証にも対応するのが強みだ。

BOOXはE Ink端末としては珍しくモバイル通信に対応している(左)メモリカードに対応しており容量を追加できる(中央)指紋認証に対応するが顔認証には非対応だ(右)

スマホを完全に置き換えるのは難しいが…

 以上のようにこれらの2製品は、その性格がおおいに異なっており、なかなか同列に語るのが難しい。一つだけ言えるのは、BOOXはE Ink端末でありながらスマホライクな特徴を備えており、電子書籍ユースのみならず多彩な用途に利用できるなど、従来のE Ink端末の概念に収まらない製品であることだ。

 ただし突き詰めて見ていくとおサイフケータイは非搭載だったり、背面カメラはあくまでも書類のスキャン用で一般的な写真の撮影に向かなかったりと、スマホのあらゆる機能をカバーできているわけではない。ニーズの高い機能を押さえてはいるものの、スマホを完全に置き換えるのはやはり難しい印象だ。

 そうした意味では、本製品かスマホのどちらかを購入するというパターンは実際にはあまりなく、メインのスマホは別途所有した上で、電子書籍などを楽しむために追加で所有するという、従来と変わらない導入の仕方になると考えられる。その上でモバイル通信やGPSなど、従来のE Ink端末にはなかった機能を使って、場所を問わない使い方を実現できるのが、BOOXの強みということになるだろう。