石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

どうした「Steamハードウェア」? 「Steam Machine」は発売日が決まらず、「Steam Deck」は値上げ

「Steamハードウェア」のWebサイト

メモリ不足の影響が「Steamハードウェア」にも波及

 2025年末、PCゲームプラットフォームの「Steam」から、独自のゲーミングPC「Steam Machine」を始めとした新型ハードウェアを2026年初頭に発売すると発表があった。

 2026年のPCゲーム業界は、「Steamハードウェア」が話題の柱になると思っていた。ところが年が明けても新製品は出ず、既存製品は値上げという状況に陥っている。原因は言わずと知れた、メモリ不足である。「Steam Machine」を心待ちにしている方に向けて、状況を整理しよう。

「Steam Machine」はいつ発売される?

 まず「Steam Machine」などの新型ハードウェアについては、2026年初頭発売としていたが、2月5日に公開されたブログでの表記が少し変わっている。

 この中で、「Steam Machine」と、VRヘッドセット「Steam Frame」、ゲームパッド「Steam Controller」の発売時期は、『今年の上半期の出荷が目標』としている。当初は2026年初頭としていたので、発売時期が後退したのかと思ってしまう。

 おそらく原文である英文を見ると、当初の発表が“early 2026”となっていたので、日本語訳すると“2026年初頭”ではなく“2026年上半期”と読めなくもない。ただこちらも2月5日付けのブログを英文で見ると“first half of the year”と表現が変わっており、やはり後退したように見える。いずれにしても現場の混乱がうかがえる。

英文では“first half of the year”と書かれている

 本来は2月5日時点で発売日と価格は発表しているはずだったが、メモリとストレージの不足による供給不足と価格高騰を受け、出荷スケジュールと価格の見直しを行う必要がある。価格と発売日を正式に発表するには、急速に変化する状況を見極める必要がある――という状況のようだ。

 簡単に言うと、メモリやSSDが品薄で供給に不安があるし、価格変動も大きいので、発売日や価格を決められない、ということだ。注目度がとても高い製品だけに需要は旺盛だと思われるが、発売したのにずっと品切れでは困るし、あまりに高価だと当初の販売プランが崩れてしまう。

 そしてブログでの発表から1カ月余りが経過した3月7日、今度は2025年を振り返るという内容の開発者向けの投稿があった。ここで『これら3つの製品はすべて年内にリリースされる予定』と書かれている。“2026年初頭”でも“2026年上半期”でもなく、“年内”という表現に変わったのは、計画の遅れを示しているのではないかと疑われている。

“年内”と表記された。これが現時点での最新情報

 年明けから2カ月が経過しても、発売日と価格が決められない厳しい状況が続いていることは確かだ。しかし実際のところ、メモリの価格と供給が読める状況に至ればすぐにでも発表できるだろうから、明確な遅れとは言い切れない。Valve自身も『我々も出せるなら今すぐ出したい』と思っているに違いない。

 他社のPCも価格変動がとても大きい状態が続いていて、この先の数カ月はまだまだ上がるのか、現状維持なのかもわからない。発売して間もなく値上げという手もなくはないが、品薄で入手できないうちに値上げとなれば、ユーザーのイメージは極めて悪くなる。渾身の製品が外的要因で潰されるのは、Valveとしても本意ではないだろう。

 Valveとしてもメモリ不足は予想外で、どうしようもない状況なのである。ゲーマーとしては、AI需要を呪いながら(AIもこれはこれで、人類にとってとても有意義なものではあるが)、メモリの価格でも眺めているほかない。

「Steam Deck OLED」もついに値上げ

 もう1つの話題は、ポータブルゲーミングPCの「Steam Deck OLED」の値上げである。日本で販売を担当するKOMODOが、3月6日から値上げを実施した

 ストレージが512GBのモデルが84,800円から99,800円に、1TBのモデルが99,800円から114,800円に、それぞれ15,000円の値上げとなっている。値上げの理由は『物流コストの上昇および為替環境の変化』としている。

「Steam Deck OLED」が値上げされた

 「Steam Deck OLED」は2023年11月に発売され、先日まで価格が据え置かれていた。発売された頃は1ドル140円台で、最近は150円台後半で推移していることを思うと、為替の影響も確かにある。家庭用ゲーム機を見てもわかるように、時間が経てば安くなる時代ではなくなっている。

 ただ販売環境は大きく変わっている。他社からもポータブルゲーミングPCが次々と発売され、昨年には最大の競合製品となる「ROG Xbox Ally」シリーズが登場した。スペック的に競合する下位モデルの「ROG Xbox Ally」は89,800円で、現在は「Steam Deck OLED」の方が高価な設定になってしまった。

 ただ、上位モデルの「ROG Xbox Ally X」は今年2月に値上げされ、139,800円から30,000円上がって169,800円となった。「ROG Xbox Ally」は戦略的に価格を据え置いたのかもしれないが、「Steam Deck OLED」が値上げした今は、こちらも少し値上げしたくなっているかもしれない。

「ROG Xbox Ally X」も大幅値上げだが、「ROG Xbox Ally」は価格据え置き

「Steam」は困ってはいない?

 「Steam」が困っているのはあくまでハードウェアの話であり、ソフトウェアの方は好調だ。先に紹介した2025年を振り返るレポートによると、2025年に「Steam」の全ユーザーがダウンロードしたデータ量は100エクサバイト(10の20乗、1垓バイト)に達したという。平均通信速度を計算すると、約25,368Gbpsになる。最高値ではなく平均値である。

 そう思うと、Valveはハードウェアの発売が少々遅れても、さほど痛くはないのかもしれない。強いて言えば、家庭用ゲーム機の次世代機に先んじて発売し、市場でシェアを奪っておきたいという目論見はあると思われるが、メモリ不足で苦しんでいるのは家庭用ゲーム機のメーカーも同様であろう。Valveはまだ判断に余裕のある状態とも言える。

 もしかすると一番困っているのは、「Steam Machine」に最適化して売ろうとしているゲーム開発者なのかもしれない。発売に時間がかかっている間に、ハード・ソフトの両面で最適化が進んで、ユーザーにも開発者にもフレンドリーな環境が整えられることを期待したい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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