石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

“ローグライクカードゲーム”って何だ? 「Slay the Spire」を遊んで確かめてみた

「Slay the Spire」のタイトル画面

これがローグライクなのか?

 3月6日、「Slay the Spire 2(スレイ・ザ・スパイア2)」というゲームが発売された。前作「Slay the Spire」は、オリジナリティあふれるゲーム内容が好評で、PCのみならず家庭用ゲーム機にも移植され、世界中で広く人気を博している。

 本作のジャンルは、“ローグライクカードゲーム”などと呼ばれる。ローグライクなのにカードゲーム? 言われても全く意味がわからない。ローグライクの定義を広げ過ぎではないか、という論争がたびたび行われているにも関わらず、ずいぶん挑戦的なことだ。

 とはいえ、まさか開発者自身が言っているわけでもあるまい……と思ったら、「Steam」の「Slay the Spire」のページにある製品説明に、ローグライクと書いてあった。

 “We fused card games and roguelikes together to make the best single player deckbuilder we could.(私達にできる最高のシングルプレイヤー・デッキ構築型ゲームを作るため、カードゲームとローグライクを融合させました)”

「Slay the Spire」の説明を見ると、制作者自らローグライクと書いている

 説明を読んでもさっぱりわからない。筆者と同様、本作を知らない方に向けて、本作の何がローグライクなのか、実際に遊んで確かめていく。何も知らずに2作目からプレイするのも気が引けるので、今回は1作目の「Slay the Spire」から見ていこう。

カードゲームの端々から感じるローグライク

本作のバトルシーン。これを見てもローグライクっぽさは何も感じられないが……

 本作のジャンルを改めて言うと、シングルプレイのカードバトルゲームである。バトルがカードゲームになっていて、敵を倒しながら階層化されたフィールドの奥へと進んでいく。

 フィールドは単純化されたマップで表示され、敵との戦闘やアイテム収集、取引可能な商人、ボス部屋などが書かれている。基本的にマップの下から上へと進んでいくが、途中でルートが分岐していることがあり、好きに選んで進める。このマップは毎回自動生成されるそうで、そこはローグライクの1要素とは言える。

シンプルなデザインのマップ。下から上へ、ルートを選んで進んでいく

 デッキ構築型カードゲームと言われると、カードを集めて自分の好きなデッキを組んでいくものをイメージする。だが本作はちょっと違う。ゲームスタート時のカードは能力の低いカードばかりで、敵を倒したりした後に報酬としてカードがもらえる。そこで強力なカードを集めて、デッキを強化していく。

 出てくるカードは3枚の中から1枚を選べるが、その3枚はランダムなので、何が出るかは見てみるまでわからない。よってデッキはプレイごとに違うものになる。強いランダム性はローグライク要素を感じさせる。

バトル後に拾えるカード。3枚の中から1枚選択する

 バトルはターン制で進行し、自分の攻撃が終わると相手のターンになる。これもローグライク。

 まずはデッキの山札からターンごとに5枚ドローする。カードに書かれた数字は、そのカードを発動させるのに必要なエナジーの消費量で、1ターンごとに3エナジーでやりくりする。カードゲームとしてはシンプルな仕組みだ。

エナジーの枠内で、どのカードを出すかを考える

 エナジーやカードを使いきったら、敵のターンになる。敵にはカードの概念はないが、行動パターンがさまざまあり、攻撃だけでなく状態異常なども繰り出してくる。ただ攻撃してくるだけの敵もいれば、ターンごとに攻撃力が上がる特性を持ったものや、攻撃を無効化するものなどさまざまなタイプがいる。

 自分のターンでは、敵の次の行動が敵の頭上に出ているアイコンで見えている。攻撃の場合は想定されるダメージ量も見えるので、小さいダメージなら許容して攻撃重視、大ダメージは防御力を上げて備えるといった戦術を取ることが可能だ。

自分のターンに、敵の次のターンのおおよその行動が見えるので、対処を考えていく

 どのカードをどの順で出すかも重要になる。相手にダメージを与えるなら、先に攻撃力を上げたり、敵の防御力を下げたりしてからの方がいいが、単発で大ダメージを与える強力なカードもある。どう攻めるかはデッキ次第だ。そういった戦術を練るためにも、手持ちのカードとシナジーのあるカードを選んでデッキに入れるのが重要になる。

 カードは無限に入手できるわけではないので、気に入ったカードが手に入らなくても、あるもので対応していくしかない。手持ちのアイテムをどうやりくりして先に進むかを考えるローグライクと、プレイ感覚は確かに近い。

カード同士の能力が噛みあうと、バトルが一気に楽になることもある

 マップの最奥まで進むと、階層のボスが登場する。HPが非常に高く、特殊効果を持つ攻撃を複数持っていることが多い。最初のうちはデッキの考え方や効率的な戦い方がわからず、道中で倒されてしまうこともある。

ボスはとんでもなく強力。しっかりデッキを組んで備えないと簡単には勝たせてくれない

 そういうゲームは、繰り返しプレイすることで能力が強化されていくものが多いが、本作はそういったものはないようだ。プレイ結果に応じて新しいキャラクターがアンロックされたりはするが、強化という感じではない。見つけたアイテムも実績として登録はされるが、いっぱい見つけたら強くなるというわけでもない。プレイする時は毎回最初からだ。これも確かにローグライクである。

初プレイでやられるとスコアが表示され、キャラクターがアンロックされた。ゲームは最初からやり直しのようだ

見た目ではなく、プレイ感がローグライク

 ひととおり遊んでみた感想としては、ゲーム自体は終始カードバトルなのに、プレイ感は確かにローグライクなのだ。探索中にはカードのほかに、レリックと呼ばれる永続強化アイテムも多数発見でき、進めば進むほどキャラクター自身が異次元の強さを身につけていく。

画面上部に並んでいるのがレリック。1つ1つが強力なのに、何十個も取れる

 しかし次のプレイでは、それらもきれいさっぱりなくなって、最初からやり直しだ。何とも無慈悲だが、それもやっぱりローグライクなのだ。作者が言う、カードゲームとローグライクの融合という本作の方向性は、プレイしてみて正しく伝わった。

 これをローグライクと呼ぶのは未だに抵抗があるのだが、プレイ感がローグライク的であることは決して否定できない。そして何よりゲームとして面白い。順調ならば1プレイ2時間、3時間とかかってしまうが、あっという間に過ぎてしまうほど熱中する。ゲームとしてはターン制なので急ぐ必要は一切なく、途中セーブもできるので、マイペースに進められるのも本作のいいところだ。

 カードゲーム好きの方は間違いなく喜ぶだろうし、ローグライクが好きな方にもぜひ遊んでもらいたい。ジャンルが何であるかと問われれば、『Slay the Spire系でいいのでは?』と思うくらいのオリジナリティがある。なるほど、「Slay the Spire 2」を待望していた方が多いはずだと納得した。ちなみに「Steam」には『ローグライクデッキ構築』というタグが用意され、本作にも付けられている。

ジャンル名をどう呼ぶかは些細な問題だ。「Slay the Spire」という名前で覚えて、素直に本作を遊んで欲しい

 ちなみに筆者が本作をプレイした時は、言語が英語設定になっていた。タイトル画面の[Settings]にある[Game Settings]で、[Language]を[Japanese]に変更すれば、ちゃんと日本語表示もできるのでご安心を。

日本語への切り替えの設定はここにある
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。