石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』
カードゲームなのにスピード感がすごい異色の作品「Vampire Crawlers」
名作アクション「Vampire Survivors」のDNAを受け継ぐプレイ感覚
2026年5月7日 17:45
人気アクションゲームがカードゲーム化
ターン制カードバトルゲーム「Vampire Crawlers」が4月21日に発売された。2Dアクションゲームで新たなジャンルを築いた「Vampire Survivors」の制作スタッフによる新作タイトルだ。
本作の正式なタイトルは、「Vampire Crawlers: The Turbo Wildcard from Vampire Survivors」。ビジュアルやキャラクターが共通しており、「Vampire Survivors」のスピンオフ作品にも見えるが、ゲーム内容は全く別物だ。
しかし不思議なことに、プレイ感覚は意外と似ているところもある。ポイントはタイトルにある「The Turbo Wildcard」だと筆者は感じている。
考えるよりコンボを決めろ!
本作は手持ちのカードを使って、立ちふさがる敵を撃破して進んでいくというカードゲーム。ターンごとに配られるカードから、自分が持つマナの許す範囲でカードを切り、敵を攻撃する。
敵を撃破したら、フィールドを移動して奥へと進む。各フィールドにはボスが配置されており、ボスを倒せば次のフロアへと進める。そして最後のフロアのボスを倒せばステージクリアとなる。途中で敵に倒されたら、そこでゲームオーバーだ。基本ルールはとてもわかりやすい。
本作について踏み込んだ話をする前に、別のタイトルについて触れておきたい。本作のようなスタイルの作品としては、先に「Slay the Spire」シリーズがある。これもゲーム業界に新たな1ジャンルを築いたと言える名作だ。
「Slay the Spire」をご存知の方は、「Vampire Crawlers」を1つの後追い作品と見たと思う。筆者も基本的にはそう思っていたし、ゲームの流れとしてとても似通っていることは否定できない。
ただし、プレイ感は驚くほど違う。「Vampire Crawlers」を「Slay the Spire」の類似作品だと思って遊んだ方は、『思っていたのと違う……』と困惑するかもしれない。
本作のバトルにおける魅力は、カードゲームによくある戦略性ではなく、スピード感と爽快感だ。最大の特徴はコンボの存在にある。
カードには切った際に消費するマナの値が設定されている。マナの残量に応じて出すカードを決めるのは当然なのだが、消費マナが少ない方から順に0、1、2……と連続するように出していくことで、2枚目以降のカードの能力が強化される。これがコンボだ。
基本的にコンボを決め続けることが最適解になるため、何よりもコンボを意識してカードを切っていく。すると、どのカードをどの順番に切っていくかが、考えることなくおのずと決まってくる。マナの制約がある中で、どのカードをどの順番で切っていくかをじっくり考えることが減り、次々にカードを切っていくことになる。
スピード感を生む要素はまだある。カードを1枚切った際に、敵にダメージを与えるなどの効果がグラフィカルに表示される。そしてそのエフェクトが消えたら次のカードを出す……のではなく、エフェクト発生中にも次のカードをどんどん切れる。
コンボが前提で切るカードが決まっているので、前のカードを切った結果を見届ける必要がない。次々にカードを切っていき、コンボを決めて大ダメージを与えていくと、画面は複数の攻撃のエフェクトが重なって表示される。画面が攻撃のエフェクトで埋まるほどになることもある。
複数の武器による攻撃が画面中に入り乱れる様子は、「Vampire Survivors」では日常的な光景。そういう要素を意図的に盛り込みつつ、カードゲームとしてはあり得ないほどのスピード感と爽快感を生み出している。
「Slay the Spire」はカードを吟味して1枚ずつ切っていくので、プレイ感は緻密な計算による戦略シミュレーションゲームに近い。「Vampire Crawlers」はさほど考えることなく、どんどん攻撃を仕掛けていくので、爽快感重視のアクションゲームに近い。やっていることは近い両作品なのに、プレイ感はこんなにも違うのかと驚かされる。
これはどちらが良いというものではない。難易度で言えば「Vampire Crawlers」の方が簡単だが、それはカードを切る順に悩まないという点だけの話。道中で手に入るカードで即席デッキを組むことや、フィールドごとに激変する敵の強さは、決して簡単ではない。
ただ「Vampire Crawlers」は、プレイ中に入手したお金を使って、キャラクターを強化できる。進むのが難しいステージがあっても、前のステージをもう1回プレイしてお金を稼ぎ、強化してからまた挑める。そのため本作のジャンルは「ローグライト・デッキビルダー」と書かれている。
1プレイ30分程度のスピード感を別ジャンルで再構築
もう1つ、本作で面白いと感じたのが、プレイ時間だ。1回のプレイ時間はだいたい30分から1時間程度。「Vampire Survivors」は30分プレイすればクリアというサバイバルゲームで、短時間で区切って遊べるのが魅力だった。
制作陣は「Vampire Survivors」のエッセンスを色濃く受け継ぐよう、これを狙って作ったに違いない。カードゲームでありながら、スピード感があって爽快で、プレイ時間も長くなり過ぎない。他とは違うコンセプトで作ろうという意図が明確にある。
大ヒットした「Vampire Survivors」のスピンオフ作品で、人気ジャンルに手を出して稼ごうという浅い作品なのではないか……と想像する方もいると思う。実際は「Vampire Survivors」の何が面白かったのかをきちんと分析し、それをカードゲームという形で再現している。
本作を誰に遊んで欲しいかと問われれば、まずは「Vampire Survivors」のファンだ。プレイ感が似ていて気に入ってくれるだろうし、同じキャラクターやアイテムが出てくるのでファン向け作品としてもよくできている。本作を入り口にして「Slay the Spire」などのカードゲームに触れるきっかけになってくれればと思う。
カードゲームファンからすると、もしかすると戦略性が浅いと怒られるかもしれない。本作は類似作品と同じ土俵で戦おうとはしていない。カードゲームの面白さを別の視点から見出そうとする、ユニークな作品だ。ゆえにカードゲームファンに遊んで欲しい……とは言いづらい。
特にゲームバランスの感覚はまるで違う。デッキ構築次第では、有り余るマナと湧いて出てくる大量のカードを立て続けに切りまくっていくという、およそカードゲームらしからぬプレイができることもある。そこに戦略があるかどうかを問うのではなく、『これはこれで面白い』と感じられると思ったら、ぜひ本作を手に取って欲しい。
1977年生まれ、滋賀県出身
ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。
・著者Webサイト:https://ougi.net/
PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。

































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