石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』

DRMフリーを長年貫くPCゲーム販売サイト「GOG」とは何か?

市場の変化に飲まれつつも、古いPCゲームをプレイアブルにし続ける配信ストア

「GOG」のWebサイト

大手ゲーム配信ストアと並ぶ「GOG」とは

 「GOG.com」というゲーム販売サイトをご存知だろうか。長年のPC洋ゲーファンには知名度が高いと思うが、それ以外では全く接点がないという方も多いと思われる。

 最近のPCゲーマーが「GOG」との接点を持つきっかけが2つある。1つはポータブルゲーミングPC「ROG Xbox Ally」で採用されたマイクロソフトのゲーム向けUI「Full Screen Experience(FSE)」で、「GOG」の専用クライアントソフト「GOG Galaxy」がリストに入っていること。「Steam」や「Epic Games」といった大手ストアと並んでいる。現在はWindows 11向けに提供が始まった「Xboxモード」でも確認できる。

「Xboxモード」で「マイ アプリ」を開くと、「GOG Galaxy」が存在する

 もう1つは、Amazonプライム特典としてPCゲームがもらえる「Amazon Luna」。自社による「Amazon Games」や、「Epic Games」との連携で配布されるタイトルもあるが、「GOG」向けに配布されるタイトルがかなり多い。古めのタイトルを中心に、毎月数本程度が配布されている。

「Amazon Luna」で特典のゲームを受け取ったところ。「GOG」でコード入力を促される(実際は「GOG.com」に遷移後、自動でコード入力される)

 これらを見てもわかるとおり、世界のPCゲーム業界では結構な知名度を持つサービスである。ただ「GOG」を知らない方からすると、Webサイトは日本語対応していないし、見知らぬ海外サイトにアカウントを作るのは怖いという印象を持たれるかもしれない。「GOG」とは何なのか、歴史を振り返りつつ紹介しよう。

最大の特徴はDRMフリー

 「GOG」は「Good Old Games」の略で、古いゲームを現在のPC環境でも動かせるようにして販売している。「ウィッチャー」シリーズや「サイバーパンク2077」で知られるポーランドの企業であるCD Projektが、2008年にサービスを開始した。

 特徴は、DRM(デジタル著作権管理)フリーであること。他のPCゲーム配信サービスのほとんどはDRMによる管理で、コピーの防止やゲームの同時起動制限などを行っている。ゲームの所有権ではなく、利用権を売っている状態だ。

 しかし「GOG」はDRMの制約がない。「GOG Galaxy」という専用クライアントは用意されているが、Webサイトの「GOG.com」からソフトをダウンロードし、ローカル環境でインストールもできる。DRMフリーなので、起動時に利用権のチェックもない。ユーザーにゲームの所有権が渡されており、仮に「GOG」のサービスが終了しても、ユーザーの手元にはゲームが残る。

 DRMフリーであるため、悪意を持てばゲームをコピーして他人に渡す、海賊版行為も可能だ。規約上は当然ながらコピー禁止である。これについて「GOG」は、『DRMがあってもすぐクラックされるので意味がない。正規のユーザーに不便をかけるだけだ』と考えているという。

 この考え方は容易に受け入れられない方も多いと思う。「GOG」がこのスタンスを取るのは、CD Projektが起業する前の1990年代、ポーランドではPCゲームの海賊版が横行しており、DRMで縛るのではなく、ユーザーが気持ちよく購入できるストアがある方がいい、という哲学に基づくためだとも言われている。

「GOG」のブログでは、真っ先にDRMフリーについての話が掲載されている

DRMに対するユーザーの抵抗感は薄れた

 DRMフリーのスタンスによって、「GOG」はPCゲーマーから一定の評価を得た。特に2010年代前半くらいまでは、『手元にダウンロードしておけないストアは信用できない』といった声が根強くあり、日本人でもコアなPCゲーマーは「GOG」を利用する層が一定数いたと感じている。

 しかし現在は、ゲームに限らず書籍や音楽など、あらゆるデータの完全な所有権を求めるユーザーは少なくなった。むしろサブスクリプションサービスで一時的に利用できるスタイルを好む方が増えている。

 その中で「GOG」も苦境に立たされた。「Steam」などとの競争が激化する中、「GOG」の目玉となるCD Projektの大型ゲームタイトルは、2023年発売の「サイバーパンク2077:仮初めの自由」で止まっている。

「サイバーパンク2077」以降の自社による大型タイトルがない

 そしてCD Projektは2025年末、同社および「GOG」の共同設立者であるMichał Kiciński氏に「GOG」を売却した。同氏は「GOG」の使命は変わらないとし、今後も「GOG」はDRMフリーでの提供を続け、古いゲームを最新のPC環境でプレイできる仕組みを維持し続けるとしている。



DRMフリーだけでなく「Good Old Games」にも価値がある

 実際のところ、全てのゲームが「GOG」で購入できるわけではない。特に最新のビッグタイトルは「Steam」などに比べて明らかに少ない。「GOG」だけでしかゲームを買わないというPCゲーマーはまずいないだろう。

 ソフトをダウンロードしてインストーラーを起動し、PCにゲームをインストールするという手順は、今となっては古いとさえ感じる。筆者は今回の記事のために「GOG.com」からゲームをダウンロードし、インストールしてみたが、以前同じことをやったのがもう何年前なのか覚えておらず、懐かしさを感じるほどだった。正直に言って、今時こんなインストール作業はやりたくない。

 「GOG Galaxy」を使えばそんな手間はない。他社に勝るとも劣らない洗練されたインターフェイスで、ゲームの検索やインストールの手順もわかりやすい。「GOG.com」は日本語に対応していないが、「GOG Galaxy」は日本語対応しているため、ゲームの購入から管理まで安心して使える。

「GOG Galaxy」のメイン画面。Webサイトとは違い、日本語に対応している
ゲームの購入やインストールも、「GOG Galaxy」なら簡単だ

 DRMフリーであることが注目される「GOG」だが、「Good Old Games」を守っていることの重要性も大きい。古いPCゲームに思い入れのあるタイトルがある方は、ぜひ「GOG」を覗いてみていただきたい。開発元が公式なサポートを終了しているタイトルもあり、ゲームソフトを未来へ保存するアーカイブとしても価値あるサービスだ。

 最後に、せっかくなので「GOG」から名作RPG「Baldur's Gate(バルダーズ・ゲート)」をインストールしてプレイするまでの流れを画像でご紹介しよう。1998年発売の作品に追加要素を加え、2012年にリマスター版として発売された「Enhanced Edition」だ。もちろん最新のWindows 11環境でもしっかり動作してくれた。

「GOG.com」で保有しているゲームのリストを表示
「Baldur's Gate: Enhanced Edition」を選択すると、「GOG Galaxy」でインストールするか、オフラインで利用可能なインストーラーをダウンロードするかを選べる。今回は下の方にあるインストーラーを利用する
データは2つのファイルに分かれているようなので両方ダウンロードする。パッチもダウンロードしたが、本体の方が最新版まで適用済みだったので不要だった(よく見ると前の段階でバージョンが書いてあった)
実行ファイルを起動すると、インストーラーが立ち上がった
ゲームのこういうインストール画面すらも懐かしい
ゲームを起動、無事に動作した
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/

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 PCゲームに関する話題を、窓の杜らしくソフトウェアと絡め、コラム形式でお届けする連載「石田賀津男の『酒の肴にPCゲーム』」。PCゲームファンはもちろん、普段ゲームを遊ばない方も歓迎の気楽な読み物です。