山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

「Fire Max 11」での読書体験は「iPad」に匹敵するのか? 11型クラスのタブレット対決

今回は「Fire Max 11」(左)と、「10.9インチiPad」(右)を比較する

 今春、Amazonから新たに登場した「Fire Max 11」(以下Fire)は、画面サイズやデザイン、さらには価格帯も含めて、エントリーモデルの「10.9インチiPad」(以下iPad)と競合しうる存在だ。

 価格は64GBモデルで34,980円と、これまで2万円前後が相場だった10型クラスのFireタブレットの価格帯からするとやや高価だが、iPadとの比較であればリーズナブルで、予算を重視するのであれば魅力的な選択肢だ。電子書籍をはじめとした使い方において、どのような違いがあるかを見ていこう。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。

ページサイズは11型のFireのほうが10.9型のiPadより小さい?

 まず外見から見ていこう。ボディは両者ともアルミ素材を採用しており、直線を主体としたデザインは酷似している。背面のカメラが出っ張っていたり、電源ボタンと一体化した指紋認証センサーを搭載する点などもそっくりだ。ちなみにFireはボディの向かって右側、iPadは左側にあり、鏡写しのようなデザインになっている。

 ポートはどちらもUSB Type-Cを採用している。急速充電に対応し20~30W程度で充電できるiPadに対して、Fireは急速充電には非対応だが、実測では最大15W前後で充電できているので、そう困ることはないだろう。

 重量は実測でFireが491g、iPadが478gと、そう極端な差はない。面積が大きいためか、むしろiPadのほうが手に持つと体感的により重く感じる。実質的にはイーブンと言っていいだろう。

「Fire Max 11」。画面サイズは11型。かなりの横長だ
「10.9インチiPad」(第10世代iPad)。アスペクト比はFireよりも一般的な書籍に近い
Fireはカメラ、指紋認証を兼ねた電源ボタン、音量調整ボタンが正面から見てボディ右側に密集している
iPadはカメラ、指紋認証を兼ねた電源ボタンが正面から見てボディ左側に密集している。音量調整ボタンは上面にある
Fire(上)のほうが幅はスリム。ポートは両者ともにUSB Type-Cだ

 画面サイズは、Fireが11型、iPadが10.9型ということで、ほぼ同じ。もっともFireのほうが画面は細長いため、コミックなど固定レイアウトのコンテンツを表示した場合は、短い辺に圧迫されてページサイズがひとまわり小さくなる。A4変形版など、より正方形に近い比率では、この傾向が強くなるので要注意だ。

 画面の解像度は、Fireが213ppi(2,000×1,200ドット)、iPadが264ppi(2,360×1,640ドット)と、iPadのほうが若干有利。それほど極端に差があるわけではないものの、コミックでの細かいディティールや、雑誌の欄外に書かれた小さな文字の注釈などでは、違いは確かに認められる。どこまで許容できるかは、利用者がどんなコンテンツを表示するかにもよるだろう。

Fireでコミックを表示したところ。画面が横長なので左右にやや余白ができる
iPadでコミックを表示したところ。こちらは余白もほぼなくジャストフィット
両者を並べたところ。iPadのほうが画面の広さを有効に使えており、結果ひとまわり大きく表示できている
画質の比較。左がFire、右がiPad 。iPadのほうが(今回の写真では若干モアレがかかっているものの)解像度が高いせいか、細い線もシャープに表現できている
雑誌を表示したところ。左がFire、右がiPad。画面が細長いFireはページサイズが圧縮され、2まわりは小さくなってしまう
細かい注釈の比較。解像度が高いぶんiPad(右)のほうが読みやすい
テキストコンテンツであればページサイズに合わせてレイアウトが可変するので余白は気にならない

どのストアが使える? アプリ内で本が買えるストアは?

 さて、電子書籍を利用するにあたって忘れずにチェックしておきたいのは、アプリの対応だ。多くのユーザーはタブレットを購入する時点で何らかの電子書籍ストアを利用しているはずで、それらが使えないようでは、何のために端末を買ったのかわからなくなってしまう。まずはそこをきちんと確認する必要がある。

 まずFireについてだが、利用できる電子書籍ストアアプリはAmazon純正の「Kindle」アプリ、および「dマガジン」だけだ。事実上どのような電子書籍アプリも利用できるiPadに比べると、これは大きなハンデだ。これ以外の電子書籍ストアを使っているユーザーは、ここで脱落ということになる。

 ただし電子書籍ストアに「Kindle」を使っている場合、FireだとWebブラウザーに移動することなくアプリ内で本の購入が行えるので、読み終わったあとにすぐに次の巻を購入したい場合や、サンプルを読み終えたあとすぐに本を買いたい場合、iPad上で「Kindle」アプリを使うよりも圧倒的にシームレスだ。利用している電子書籍ストアが「Kindle」だけという人は、Fireのほうが間違いなく便利だ。

Fireは電子書籍系アプリが「Kindle」以外では実質「dマガジン」くらいしかない。アプリストアの「雑誌・カタログ」カテゴリもご覧のラインナップだ
iPadは事実上どのような電子書籍アプリも利用できる
ただしFireは「Kindle」アプリ内で本を直接購入できる利点がある。サンプル本を読み終えたあと本を購入する場合も、わざわざブラウザーで開き直さずに済む
iPadの「Kindle」アプリで同じページを開いたところ。購入ボタンは用意されておらず、ブラウザーに移動して同じページを開き直さなくてはならない
iPadで、アプリ内で本を購入できるのは純正の「ブック」アプリなどごく少数だ
「Kindle Unlimited」のように定額制で読み放題のサービスはブラウザーに移動しなくとも本をアプリ内で選んでダウンロードできる。こちらであればiPadでもハンデはない

 一方のiPadは、純正である「ブック」が、アプリ上での本の購入に対応しているものの、その他のサードパーティ製電子書籍ストアアプリはブラウザーに移動して購入しなくてはならない。ただしFireと違ってアプリそのものの選択肢は豊富なので、複数の電子書籍ストアアプリを使い比べる場合には、FireではなくiPadがベターということになる。

 なおFireは電子書籍以外のアプリに関しても、地図アプリのように、ほかのiOSやAndroidにはあって当たり前のアプリがないことがしばしばある。またGPSを搭載していないので、ナビアプリや一部のゲームアプリなど、GPSの利用が前提となるアプリは利用できない点は要注意だ。

Fireは地図アプリがなく、ブラウザーを使っての表示となる。この画面では右下に「アプリを使用」とあるが機能しない

価格的にはFireが有利だが……

 実売価格は、同じ64GBモデルで比較したときに、Fireは34,980円、iPadは64,800円と、かなりの差がある。ただしiPadについては、本稿執筆時点では世代がひとつ前の第9世代モデルが併売されており、こちらは49,800円と安価なことから、価格を重視する場合はこちらも選択肢となる。ポートはUSB Type-CではなくLightningだが、将来性はともかく、実用面でそう大きな問題があるわけではない。

 以前のレビューで紹介したように、「Fire Max 11」は、従来モデルであるFire HD 10 Plusの約2倍のパフォーマンスを誇っており、Fireシリーズの中では一押しといえる存在だ。しかしFireシリーズ自体、アプリのラインナップが貧弱なことが、iPadと比べた場合にはどうしてもハンデになる。Fireをチョイスする場合、少なくとも利用予定のアプリについては、事前に動作の可否をチェックしておきたいところだ。