山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
E Ink電子ペーパーの「BOOX Tab Ultra」と液晶の「iPad」、本好きにおススメはどっち?
10型クラスの大画面デバイス徹底比較! 廉価版の選択肢も
2023年2月14日 06:55
近年、E Ink電子ペーパーを採用した読書端末がじわじわと増えつつある。液晶と違って目に優しく、長時間の読書でも疲れにくいとあって、支持を集めるのは当然といったところ。かつてはページめくりのレスポンスがいまいちだったが、最近のモデルは大幅な高速化を果たしており、実用性も高まりつつある。
E Ink端末で有名なのは「Kindle」や「Kobo」だが、Google Playストアから任意の電子書籍アプリをダウンロードして利用できるのが、Onyxの「BOOX」シリーズだ。なかでも2022年暮れに発売された「BOOX Tab Ultra」は、10.3型の大型画面により見開き表示にも対応できる。Amazonの10.2型E Ink端末「Kindle Scribe」と同等のサイズだが、さまざまなストアを利用できるのは大きな強みだ。
今回はこの「BOOX Tab Ultra」(以下「BOOX」)を、画面サイズがほぼ同等である第10世代「iPad」と比較し、E Inkと液晶とでタブレットとしての使い勝手にどのような違いがあるのかを、電子書籍用途を中心にチェックしていく。
なお画質比較のサンプルには、Kindle Unlimitedで配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用している。また雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、それぞれサンプルとして使用している。
目への優しさを取るか、カラー表示を取るか
まずは画面をはじめとした基本仕様について見ていこう。
「BOOX」はE Ink電子ペーパー、「iPad」は液晶をそれぞれ採用しており、表示特性はまったく異なる。液晶はバックライトを用いて背面から照らす方式ゆえ、発色のよさは折り紙付きだが、長時間見ていると目に負担になることもしばしば。
これに対してE Ink電子ペーパーは、紙に印刷されたような質感で、ライトも背面からではなく側面から照らす仕組みなので、目に刺さるようなまぶしさは感じにくい。また直射日光下での視認性が高いといった特徴もある。
ただし現行のE Ink電子ペーパーはモノクロなので、雑誌などのカラーコンテンツの表示には向かない。技術書なども一見問題なく読めるようでいて、注釈が色分けされているような場合、意味がわかりづらくなることは少なからずある。また黒く塗りつぶされた箇所が「真っ黒」ではなく、ややグレーがかってしまうE Inkの特性が、合わないという人もいるかもしれない。
もっともこの点を除けば、「BOOX」が10.3型、「iPad」が10.9型と、画面サイズはかなり近いことに加えて、画面の縦横のアスペクト比は紙の本に近く、どちらも読書向きだと言える。
ちなみに解像度は「BOOX」が227ppi、「iPad」が264ppiと多少の差はあるが、あまり細かいディティールにこだわらなければ、実用上の違いはない。注釈など小さすぎる文字は、「BOOX」はやや読みづらさを感じる場合がある、という程度だ。
持ちやすさは一長一短。重量は大差なし
ボディの持ちやすさには多少の違いがある。「BOOX」はベゼルの一辺のみ厚みがあるデザインで、画面を縦向きに持つ場合は、ここに指をかけると持ちやすい。
もっともベゼルにこれだけの幅がありながら、ページめくりボタンが搭載されていないのは、少々もったいないのも事実。ページめくりボタンがあれば、手袋をしていたり、指先にケガをしているなどタッチパネルによる操作ができない場合も扱いが容易なのだが、本製品は残念ながらそうしたギミックは搭載していない。
また、画面を縦向きではなく横向きにした状態では、「BOOX」は向かって下のベゼルだけが厚みのある見た目になってしまい、少々アンバランスだ。縦向きだと持ちやすいという特徴が、横向きだと逆にネックになってしまうわけだ。このあたりは一長一短でなかなか難しい。
一方の「iPad」は、上下左右のベゼル幅が均等で、かつ一定の幅があるため縦横どちらの向きでも保持しやすい。本製品は上位の11インチ「iPad Pro」とはほぼ同じデザインながらベゼルに幅があり、並べると見た目が少々野暮ったいのだが、逆に持ちやすさという点ではプラスに働いているのが面白い。
ちなみに重量については大きな差はない。E Ink電子ペーパーは一般的に軽量なことが特徴だが、「BOOX」はボディが金属製で、かつ大容量バッテリーを搭載することもあってか、480gとややヘビーで、「iPad」の487gとの差はごくわずかだ。重量差が製品選びの決め手になることはなさそうだ。
どちらもアプリを自由に導入できるが「BOOX」は一定の制限あり
電子書籍アプリについては、「BOOX」はGoogle Playストア、「iPad」はApp Storeからダウンロードして自由にインストールできる。「BOOX」はカラー向けに設計されたアプリをモノクロで使うことになるが、アプリごとに設定可能な最適化機能を備えているので、濃淡などを自分好みに調整できる。ただしWebブラウザーで表示するマンガアプリは非対応の場合があるので事前に確認しておきたい。
ページめくりの速度など、パフォーマンス面は「iPad」のほうが有利だ。「BOOX」は、E Ink搭載デバイスの中でもひとつの到達点と言えるほどレスポンスは高速で、E Inkの遅さが気になって毛嫌いしていた人のイメージを覆せるだけの製品だが、とはいえ表示方式の異なる液晶と比べると不利なことは否めない。「iPad」は、現行のiPadファミリーの中ではローエンドに当たるモデルだが、少なくとも電子書籍ユースにおいては、パフォーマンス面の不安は皆無だ。
バッテリーの持ち時間はどうだろうか。E Inkはもともと画面の書き替え以外に電力を消費しない特性があるため、搭載デバイスは充電なしで数週間程度使えることが多い。今回の「BOOX」も、6300mAhという大容量バッテリーを搭載しており、設定次第では週単位でバッテリーを持たせられる。「iPad」が基本的に毎日、そうではなくても2~3日単位での充電は必要で、この点は「BOOX」が圧倒的に有利と言える。
スタイラスを入れれば価格は互角。ほかの選択肢もあり
最後に価格だが、「BOOX」は99,800円(128GB)、「iPad」は64GBモデルが68,800円、256GBモデルが92,800円となっている。ただし「BOOX」はスタイラスペン「Pen2 Pro」が標準で付属するので、仮に「iPad」の価格に「Apple Pencil」(14,880円)を追加して考えると、両者はおおむね横並びということになる。このあたりは何を必要とするかにもよるので、見た目の特徴だけで判断するのは禁物だ。
なお「iPad」は、現時点ではひとつ前の世代である第9世代モデルが併売されており、こちらは49,800円(64GB)とリーズナブルに入手できる。一方で「BOOX」も、72,800円の「BOOX Note Air2Plus」など、同じ10型クラスでワンランク下の価格帯のモデルが用意されている。購入を検討するにあたっては、今回紹介したモデルを基準に、下位モデルなども含めて、候補を検討するのがよさそうだ。