山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
カラー電子ペーパー端末の良い点、悪い点 ~モノクロ電子ペーパーと比べてみた
E Ink採用のAndroid端末「BOOX Tab Mini C」と「BOOX Page」を比較してみた
2023年9月14日 06:45
前回、AmazonのE Ink端末「Kindle Oasis」の競合になる製品として、OnyxのE Ink端末「BOOX Page」を紹介したが、最近のE Ink電子ペーパーはモノクロだけでなく、カラーという選択肢も登場しつつある。
BOOXはそうしたカラーE Inkに早くから取り組んでいるブランドで、このBOOX Pageとほぼ同時期に、7.8型のカラーE Ink端末「BOOX Tab Mini C」をリリースしている。今回はこの両製品を比較し、電子書籍ユースにおけるメリットとデメリットを見ていこう。
なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。
まずは両製品の特徴をチェック
まずはざっと両製品の特徴をおさらいしておこう。「BOOX Page」は、ページめくりボタンを搭載した7型のモノクロE Ink端末で、タップやフリックだけでなく、本体横に搭載したページめくりボタンで、電子書籍のページをめくれることが大きな特徴だ。
これらはKindleの最上位モデル「Kindle Oasis」とよく似た構造で、Kindleと違ってさまざまな電子書籍アプリを利用できることから、Kindle以外の電子書籍ストアを使っているユーザーや、複数の電子書籍ストアを併用しているユーザーに最適な製品だ。
一方の「BOOX Tab Mini C」は、モノクロではなくカラーのE Inkを搭載していることが大きな特徴だ。液晶のようなバックライトを搭載しないため、カラーといってもややくすんだ色合いなのだが、従来はモノクロで表示するしかなかったコミックのカラーページが表示できるほか、色分けされている雑誌の図版もしっかりと読み取れる。
また画面が「BOOX Page」より一回り大きい7.8型を採用するほか、スタイラスペンによる手書き入力に対応するなど、必ずしも電子書籍だけに特化しておらず、一定の汎用性を備えているのも特徴だ。
カラーE Inkは万能ではない
価格についてはどうだろうか。「BOOX Page」は64GBで39,800円だが、今回の「BOOX Tab Mini C」は同じ64GBで57,800円と、1万8千円もの差がある。
これは「BOOX Tab Mini C」がカラーE Inkを採用することに加えて、スタイラスに対応していること、また専用GPUを搭載しているなど、ハードウェア的にワンランク上であることが理由だ。実際に使い比べてみると、この価格差は妥当だと感じる。
では、この予算面さえクリアできれば、いかなる場合もカラーE Ink搭載の「BOOX Tab Mini C」を選ぶべきかというと、必ずしもそうとは言い切れない。特に電子書籍ユーザーに限っては、モノクロの「BOOX Page」を選んだほうがよい場合もあるというのが、筆者の感想だ。
なぜかというと、カラーE Inkは色数が多いぶん調整が難しく、そのことがストレスになる場合も少なくないからだ。例えばカラーのベタ塗りは比較的美しく表示できる一方で、写真など細かいディティールの表現は苦手で、色ムラが発生して汚く見えることもある。モノクロでももちろんムラは発生するが、色情報がないこともあり、あまり目立たない。
またページめくりをスムーズに行おうとすると、リフレッシュの頻度をあまり高くするわけには行かず、控えめにせざるを得なくなる。結果的に残像がいくらか残った状態でページをめくることになるのだが、モノクロE Inkは残像もグレーの濃淡に置き換えられてしまうのでそれほど気にならない一方、カラーはかなり目障りで、また上に乗っているテキストが読みづらくなる場合がある。
このあたりの見え方は、リフレッシュモードや最適化の設定によっても変わってくるので、上の写真ほどの差が出ない場合もあるのだが、色がついて表現力が高まったぶん、ムラや残像まで目立つのは紛れもない事実だ。
そのため、ベタ塗りが多い技術書や、輪郭から内容がある程度類推できるコミックは比較的カラーと相性が良いが、写真が中心の雑誌などは、むしろ色の情報が省略されているモノクロのほうが、平均的に見やすく感じられる場合もある。
つまりカラーE InkがモノクロE Inkの完全な上位互換かというと、そうではないということだ。購入にあたっては、こうした点も踏まえて判断したほうがよさそうだ。
E Ink以外にもさまざまな違いが
最後に、カラーとモノクロの違い以外での相違点もチェックしておこう。
まずはストレージ。両製品とも容量は32GBと共通だが、「BOOX Page」はメモリカードに対応し、最大1TBの容量を追加できる。電子書籍端末としてのBOOXシリーズの強みは複数の電子書籍ストアに対応することで、ストレージの容量は多いほどよい。そうした意味で、足りなくなれば容量を追加できる「BOOX Page」の拡張性は魅力だ。
重量については、「BOOX Page」が実測193g(メモリカード込)、「BOOX Tab Mini C」は実測310gと、100g以上の差がある。もともと画面サイズも異なることから、ある程度の差はあって当然なのだが、思った以上に差がある印象だ。
ページめくりボタンなど電子書籍との相性の良さは「BOOX Page」のほうが上であることは前述のとおりだが、せっかく買うのであれば、さまざまな用途に使いたい……というニーズには、「BOOX Tab Mini C」のほうが適している。
なかでも電子ノートとして使えるのは、スタイラスペンが標準添付の「BOOX Tab Mini C」だけ。前述の価格差も、スタイラスペンのコストが含まれていると考えれば納得がいく。
以上ざっと見てきたが、カラーE Inkは世代を重ねて彩度やコントラストが改善されてきている一方、現時点では決して万能ではなく、実用性ではモノクロE Inkに劣っている面もある。特に今回の比較対象である「BOOX Page」は、電子書籍向けの機能をこれでもかと搭載しているため、不利に見えるのもやむを得ない。
その一方で電子書籍以外の汎用性まで込みで考えると、カラーE Inkは決して悪い選択肢ではない。価格がこなれてきていることもあり、これからE Ink端末を購入するのであれば、カラーも候補の一つとして検討してみるべきだろう。