山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

13インチのiPadで雑誌を表示するならAirとProのどっちを選ぶべき?

「13インチiPad Air(M2)」vs「13インチiPad Pro(M4)」

左が「13インチiPad Air(M2)」、右が「13インチiPad Pro(M4)」。型番の後ろにプロセッサ名が入るのが正しい表記ルールだ

 「iPadでもっとも画面が大きいモデル」といえば、これまでは12.9インチiPad Pro一択だったが、今年初夏のモデルチェンジにより、「iPad Air」にも同等の画面サイズをもつモデルが登場し、目的や予算に応じて選べるようになった。これまでのハイエンドに加えて、ミドルエンドも選択肢に追加された格好だ。

 円安の影響でベースの価格が値上がりしていることもあり、新しく追加された「13インチiPad Air」がそれほど割安に感じないのは困りものだが、選択肢が増えたことは長期的に見るとプラスだろう。

 今回はこのミドルエンドの「13インチiPad Air」と、フルモデルチェンジで薄型軽量化されたハイエンドの「13インチiPad Pro」について、電子書籍ユースで使う場合にどのような違いがあるのかをチェックしていく。なお電子書籍の比較サンプルには『DOS/V POWER REPORT』の最終号を、サンプルとして使用している。

13型の大画面で雑誌コンテンツのほぼ原寸大表示が可能

 まずは画面サイズから見ていこう。両製品とも13型とされているが、実はこれはAppleの表記ルールの変更により小数点以下が繰り上げられただけで、「13インチiPad Air」は従来の「12.9インチiPad Pro」と同じく「2,732×2,048ピクセル」で、正確なサイズは12.9型。つまり変わっていない。

 一方で「13インチiPad Pro」は「2,752×2,064ピクセル」とわずかにサイズが大きく、こちらは名実ともに13型だ。このあたりの表記はもう少しどうにかならなかったのかという気がするが、両者を並べて見比べても判別はほぼ不可能で、製品を選ぶにあたってサイズの違いを気にする必要はない。

左が「iPad Air」、右が「iPad Pro」。画面サイズ・ボディサイズともわずかに「iPad Pro」のほうが大きいのだが、あくまでもミリ単位の差なので、こうして見比べてもまず分からない
背面の比較。こちらはカメラ周りの仕様で判別可能だ

 画面サイズおよび解像度以外の相違点としては、「iPad Pro」が対応しているリフレッシュレート最大120HzのProMotionテクノロジーには、「iPad Air」は対応しないことが挙げられる。とはいえ、これらは描画の書き換えが激しい時に差が出るものであり、実質的にページをめくる時くらいしか画面の動きが発生しない電子書籍ユースでは、ハンデにはならないだろう。

 ディスプレイ自体は、「iPad Air」がIPS液晶なのに対して、「iPad Pro」はOLEDという違いがある。具体的に違うのは明るさで、「iPad Air」が最大600ニトなのに対して「iPad Pro」は最大1600ニト(HDRコンテンツ表示時)と差がある。そのため画面の明るさをともに100%にして並べると、「iPad Pro」が相対的に明るいのだが、室内での読書時にここまで輝度を上げることは少ないはずで、直射日光下で読書するのでもない限り、こちらも影響はないだろう。

どちらも明るさ100%にした状態だが、「iPad Pro」(右)のほうが輝度が高いことが分かる

 いずれにせよ、雑誌コンテンツをほぼ原寸大で表示できるのは、13型というサイズならでは。解像度も264ppiと横並びなので、雑誌を見開きにしても細かな文字が十分に判読可能なほか、コミックでも紙の単行本を上回るサイズで表示できる。老眼ゆえ11型クラスのタブレットではつらいという人にも、適したモデルだと言えるだろう。

雑誌の(ほぼ)原寸大表示に対応する。11型以下のモデルにはないメリットだ
画面を横向きにした見開き表示でも、よほど細かい文字でない限りきちんと判読できる

薄さ軽さではProが圧倒的有利

 さて電子書籍ユースでの使い勝手に関係してくるのは、どちらかというと画面サイズよりも、本製品の重量および手に持った時の厚みの違いかもしれない。

 新しい「13インチiPad Pro」は厚みがわずか5.1mmしかなく、手に持った時のインパクトは圧倒的。なおかつ重量も公称579gと、第5世代の「12.9インチiPad Pro」(682g)よりも100g以上軽量化されているため、長時間手で保持する場合にあたって、負担になりにくい。

 一方の「iPad Air」は公称617gと、従来の「12.9インチiPad Pro」と比べると十分に軽くなっているのだが、ボディの厚みは6.1mmと、従来の「iPad Pro」(6.4mm)とそれほど大きな違いはなく、事実上「従来のiPad Proと同等」だ。

 そのため新しい「iPad Pro」と、「iPad Air」を持ち比べると、薄さと軽さの違いによって、どちらの製品なのか容易に判別できる。これら薄さ軽さにおいては、「iPad Air」が「iPad Pro」に太刀打ちできる余地はない。

左が「iPad Air」、右が「iPad Pro」。比較写真でこれだけはっきりと厚みの差が出るのは珍しい
「iPad Air」は公称617g、実測で621g。旧12.9インチ「iPad Pro」よりは軽くなっているが、それでも600gの大台は切っていない
「iPad Pro」は公称579g、実測でも同じ。この画面サイズで600gを切るのは驚異的だ

 もうひとつ、両者の違いとして挙げられるのは生体認証だ。「iPad Air」は従来の10.9型モデルなどと同様、電源ボタンと一体化したTouch IDを搭載しており、Face IDには対応しない。一方の「iPad Pro」は、Touch IDは搭載せず、顔認証のFace IDのみを搭載している。

 もし外出先で利用するのであれば、マスクをしていても指先だけですばやくロックを解除できるTouch IDのほうが小回りが効いて便利と言えるのだが、移動中の電車の中などで、これだけ巨大なiPadを、読書用途で広げる人はあまりいないだろう。これらを考えると、この生体認証の違いはそれほど使い勝手には影響はないと言える。

「iPad Air」は電源ボタンと一体化した指紋認証(Touch ID)を搭載する
「iPad Pro」は長辺側に、顔認証(Face ID)を搭載する

 なお新しい「13インチiPad Pro」モデルでは、顔認証に使用するセンサーが従来の短辺側から長辺側へと移動しており、本体を横向きで持った場合の顔認証が容易になっている。Face IDでロックを解除しようとした時に、指がセンサーを覆っていてエラーが出るという、従来モデルにありがちだった現象が起こりづらくなったのは、間違いなくプラスだ。

従来モデルではセンサーが短辺側にあったので、Face IDでのロック解除時にこのようにエラーが出ることが多かったが、今回のモデルでは解消されている

パフォーマンスの差はおおむね2~3割

 最後に、電子書籍ユースと関係ないところも含めて、ここまでで紹介しきれなかった両者の違いをいくつか挙げておこう。

 まずボタン類およびポートの配置については、基本的には両者に差はない。敢えて挙げるならば、スピーカーが「iPad Air」は2基なのに対して、「iPad Pro」は4基なのが目立つくらいだ。本体を縦向きに保持した場合、ステレオで聞こえるのはProのみなので、音楽や動画を鑑賞する機会が多いのならば加点要因になるだろう。

上が「iPad Pro」、下が「iPad Air」。側面ボタンの配置は同一。カメラはどちらもシングルレンズだが、「iPad Pro」はLiDARスキャナを搭載している
どちらもUSB Type-Cポートを搭載。その両脇にあるスピーカー穴は、本体の厚みが違うせいか、「iPad Pro」は穴の直径が小さいのを数でカバーしているのが面白い

 パフォーマンスについては、当然ながら「iPad Pro」のほうが上なのだが、各種ベンチマークアプリでのスコア差はおおむね2~3割程度。もともと「iPad Pro」が処理能力の高さを売りにしたプロユースの製品であること、また電子書籍ユースではそれほどパワーを必要としないことを考慮すると、「iPad Air」でもまったく問題はない。

「Octane 2.0」でのベンチマーク結果。左が本製品で「78053」、右が「13インチiPad Air」で「103055」と、差は約32%。他のベンチマークアプリでも、おおむね2~3割程度の差に収まることが多いようだ

Proは魅力的だが約8万円もの価格差はつらい?

 最後は実売価格だ。円安(発表時点)などの要因もあり、両製品とも従来の相場から考えると、価格はかなり割高に設定されている。それぞれの最小容量での価格は、「13インチiPad Air」が128,800円(128GB)、「13インチiPad Pro」が218,800円(256GB)で、実はこのAirの価格は、かつてのProの価格とイコールだ。ベースの価格がどれだけ上がっているかがよく分かる。

 もっともそのProの新モデルが最小容量でも20万円を超えている現状を考えると、Airが現行モデルの中では手が届きやすい価格であることは事実。こと電子書籍ユースにおいては、厚みと重量を除けばProに大きく見劣りする点はなく、それでいてこれだけの価格差があることを考えると、現行のラインナップの中から選ぶのであれば、やはりAirのほうが優勢と言えそうだ。