山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

雑誌の原寸大表示に対応、コミック見開きも余裕な大判タブレット対決

カラーの「13インチiPad Air」に対するはモノクロE Ink電子ペーパー「BOOX NoteMax」

左が「BOOX NoteMax」、右が「13インチiPad Air」

 雑誌の原寸表示も可能な13型クラスの大判のタブレットと言えば、かつては「iPad」くらいしか選択肢がなかったが、近年はAndroidでもさまざまな製品が登場している。豊富な選択肢の中から選べるようになったのは、ユーザーとしても歓迎だ。

 またこれら大判タブレットは、液晶を採用した製品以外に、E Ink電子ペーパーを採用した製品も存在する。今回はその中から、Androidタブレット「BOOX」シリーズの新製品「BOOX NoteMax」を、「13インチiPad Air(M2)」と比較し、その特徴をチェックする。

  なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』でで配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、技術書の表示サンプルには、あーちゃん/できるシリーズ編集部著『できるPower Automate Desktop』を使用している。

どちらも13型クラスの大画面が特徴

 まずは13インチ「iPad Air(M2)」から。従来このサイズの「iPad」と言えば、「iPad Pro」しか選択肢がなかったが、2024年のモデルチェンジでミドルクラスである「iPad Air」にも、13型モデルが新たに追加された。

 電子書籍はそもそも表示にあたって高いスペックは必須ではないことから、「iPad Pro」はやや性能の持ち腐れで、かつコストの高さが導入のネックになっていたので、ミドルクラスの製品の登場は歓迎だ。とはいえ実売価格は128,800円(128GB)からと、10万円の大台を余裕で超えており、気軽に買える製品でないのもまた事実だ。

「13インチiPad Air(M2)」。実売価格は128,800円(128GB)からで、容量違いやカラーバリエーション、さらにセルラーモデルもラインナップする

 一方の「BOOX NoteMax」は、その名前からもわかるように、電子ノートとしての機能を前面に打ち出した製品だが、本領を発揮するのは別売のキーボードを追加した時だが、画面サイズが13.3型と大きいことから、大画面で電子書籍を表示したいニーズにも適している。

 E Inkはカラーではなくモノクロ(Carta 1300)ということで、実際の用途としては雑誌の表紙よりも、むしろコミックの見開き表示や、技術書の表示が中心になるだろう。実売価格は124,800円(128GB)と、前述の13インチ「iPad Air」とほぼ横並びだ。

「BOOX NoteMax」。実売価格は124,800円(128GB)。バリエーションはなくラインナップは1製品のみ。タッチパッド付キーボードケースが別売で用意される

カラー・モノクロの違いはあるがどちらも薄く軽い

 実際にこの両製品を並べてみると、まず目につくのはカラーとモノクロの違い、次いでベゼル幅の差だ。「iPad Air」は上下左右ともに均等な幅だが、「BOOX NoteMax」は一方向だけ厚みがある。手に持って操作する時はここを握ることで、タッチの誤反応を防いで持ちやすくなるが、表面積はそのぶん広い。

 薄さと軽さは、タブレットとしてはかなりハイレベルな争いとなる。ボディの厚みは、「iPad Air」の6.1mmに対して「BOOX NoteMax」は4.6mm。スマホではおおむね6mmを切ると薄型と表現されるので、それらと比較しても、この両製品は十分に薄いことが分かる。

左が「BOOX NoteMax」、右が「iPad Air」。画面サイズはほぼ同等だ
「BOOX NoteMax」は画面横の一方向だけベゼルが広い。幅はおよそ32mm、その他は9.5mm。ちなみに「iPad Air」は上下左右とも9.5mm
背面の比較。「BOOX NoteMax」(左)の幅の広さが分かる
厚みの比較。左が「BOOX NoteMax」、右が「iPad Air」。前者が明らかに薄い

 また重量についても、「iPad Air」の実測621gに対して「BOOX NoteMax」は実測593g。手に持った時にずっしりくるとはいえ、かつてこのサイズの製品は600g台後半が当たり前だったので、軽量化を実感する。

 ちなみに本稿では取り扱わないが、同じ13型サイズの「iPad」でもうひとつの選択肢である13インチ「iPad Pro」は厚みが5.1mm、重量は579gということで、薄さや軽さを優先するのであればそちらの選択肢もある。ただしこちらは最小容量である256GBで218,800円からと、価格はワンランクどころかツーランクは上がってしまう。

「iPad Air」は実測621g
「BOOX NoteMax」は実測593g。公称値(615g)とのズレが目立つ

BOOXはフロントライト非搭載であることに注意

 電子書籍ユースで重要な画質についてはどうだろうか。「iPad Air」は2,732×2,048ドット(264ppi)、「BOOX NoteMax」は3,200×2,400ドット(300ppi)と、スペックだけ見ると「BOOX NoteMax」のほうがやや上だ。

 ただし液晶とE Inkの違いに加えて、E Inkはどのリフレッシュモードを選択するかによっても見え方が異なり、速度を優先するとディティールが犠牲になることもしばしば。実質的なクオリティは同等とみなしてよいだろう。

左が「BOOX NoteMax」、右が「iPad Air」。表示サイズはほぼ同等
上が「BOOX NoteMax」、下が「iPad Air」。見開きでもほぼ同等のサイズだ
画質の比較。左から、「BOOX NoteMax」(ノーマルモード)、「BOOX NoteMax」(A2モード)、「iPad Air」。「BOOX NoteMax」はモードによって表示のディティールは異なるが、解像度的には同等であることがわかる
E Inkセンター(赤枠内)。アプリごとに濃淡やリフレッシュモードを調整できる
アプリごとに適した解像度を指定できる
このほか何回タップすればリフレッシュするかといった設定も行える

 電子書籍の種類別の向き不向きについてはどうだろうか。コミックは見開き表示であっても、1ページのサイズは単行本を凌駕しており、迫力がある。テキストも表示に支障はなく、かえって画面が大きすぎると感じるほどだ。老眼で小さい文字や小さい画面が見づらいと感じる人にも最適だろう。

 ただし「BOOX NoteMax」はいかんせんモノクロということで、カラフルな雑誌を表示するには向いていない。技術書に関しても、色分けを多用してあるページは意味を取り違える可能性があるので、実用レベルで使えるかどうかは何を表示するかにも依存する。

技術書を表示したところ。クオリティ的にはどちらも問題もないが、「BOOX NoteMax」はモノクロなので色分けしてある箇所の意味が伝わりにくい
雑誌を表示したところ。サイズ的には十分なのだが、こちらもやはりモノクロであることがネックになる。白黒コピーを取った雑誌のページを見ているかのようだ

 また「BOOX NoteMax」の注意点として、フロントライトを搭載していないことが挙げられる。「BOOX NoteMax」はモノクロE Inkとしてはパネルが白く、明るい部屋であればフロントライトなしでも問題なく使えるが、薄暗い部屋での利用はさすがに辛い。特に今回のようにバックライトを備えたタブレットと比較すると、その差を実感する。

 ライトを省くことでボディがより薄くなるなど、別の部分に恩恵が出ているはずだが、従来モデルでは搭載されていたこともあり、思い込みで購入してしまうとあとから後悔することになりかねない。薄暗い場所では使えない製品であることは知っておくべきだろう。

読書しながらメモを取る用途にも最適

 さて画面が13型クラスともなると、サイズに余裕があることから、読書しながらノートを取るという使い方も余裕が出てくる。

 「BOOX NoteMax」はもともと手書き利用を視野に入れた製品であるため、パッケージにはスタイラスが標準添付されており、これを用いて手書きでノートを取れる。画面分割機能を用いて左側に技術書を表示し、右側でノートに要点をメモするといった使い方が可能だ。

 一方の「iPad Air」についても、同様の使い方はできるのだが、Apple Pencilは標準添付ではなく別売であるため、そのぶんコスト的には不利だ。一方で、画面をいったんOFFにすると分割が解除されてしまう「BOOX NoteMax」と違い、「iPad Air」は画面の分割(Split View)が維持されるので、他アプリとの切り替えも気兼ねなく行える利点はある。

「BOOX NoteMax」はスタイラスが標準添付されており、手書きでノートを取れる
「iPad Air」も同様の使い方はできるが、Apple Pencilは別売だ
スタイラスの比較。上が「BOOX NoteMax」に標準添付のスタイラス、下がApple Pencil

 なお個人的に気になったのが、「BOOX NoteMax」のタッチの精度だ。E Inkの性質上、反応速度で液晶に遅れを取るのは致し方ないが、タッチの精度があまり高くないのか、補助UIであるナビボールの操作で、意図した箇所が反応しないことが稀にある。あまり高精度な操作は求めないほうがよいかもしれないというのが、実際に使ってみた感想だ。

何を表示したいかで選ぶべき

 以上ざっと見てきたが、表示性能などはどちらも問題はなく、またアプリについてもそれぞれiOS/Androidアプリが利用できるものの、「BOOX NoteMax」についてはモノクロであること、そしてフロントライトが非搭載のため、どうしても用途が固定されてしまう。特にフロントライトは、従来までのモデルには添付されていたので、思わぬ落とし穴ということになりかねない。

 これら仕様ではニーズを満たさない用途においては「BOOX NoteMax」は最初から候補に入らないだろうし、逆に問題なければ候補に残したうえで、その他の機能や仕様で決めることになるだろう。まず何を表示したいか、さらに電子書籍以外の用途にどれくらい使うのか、製品を選ぶ場合は、まずそこから入るのがよさそうだ。

13型クラスともなると、雑誌は紙版(右)と同等サイズでの表示が可能だ