山口真弘のおすすめ読書タブレット比較
Fire HD 8(第12世代)は同じ製品名・世代で3種類も!? 各モデルの違いをチェック
2025年1月28日 06:55
Amazonの格安タブレット「Fire HD 8(第12世代)」は、発売時期およびスペックが異なる3種類のモデルが存在するという、ユーザーにとって非常にわかりづらい製品だ。旧モデルが終息したあと新モデルが発売されたのならまだしも、新モデルの発表から3カ月以上が経過した現在でも、新・旧モデル両者が並行して売られているのでややこしい。
これらは製品名だけでなく世代名も同一、また外見からも見分けがつかないので、セールに登場した場合もどのモデルなのかがピンと来ず、もともとが割安な旧モデルであるにもかかわらず、新モデルが安くなっていると勘違いすることもしばしばだ。
そこで今回はこの3モデルの実機を用意し、パフォーマンス面を中心にどのような相違点があるかをチェックしていく。
唯一の見た目の違いは背面の表面加工
まずはそれぞれのモデルをざっと紹介しよう。
今回取り上げる3製品はいずれもFire HD 8の「第12世代モデル」に相当するが、発売年は2022年と2024年に分かれており、また2024年発売モデルはメモリ容量が3GBと4GBの2種類がある。ちなみに2022年発売モデルのメモリ容量は2GBだ。
つまりこの3種類のモデルを適切に見分けるには、「2GB」「3GB」「4GB」というメモリ容量で判別するのがベターなのだが、実際にはストレージ容量や背面カメラのスペックなどの違いもあり、メモリ容量だけ見ているとそれらの印象が弱くなるので注意したい。当のAmazonは「3GB RAM、32GBストレージ、ブラック (2024年発売)」といった具合に、ストレージ容量および発売年も込みで表記している。
ちなみにストレージ容量は、メモリ2GBモデルには32GB/64GBの2種類があり、メモリ3GBモデルは32GB、メモリ4GBモデルは64GBという構成になっている。つまりストレージ容量まで見ていくとモデルは計4種類あることになるのだが、一般的にストレージ容量の差異はパフォーマンスへの影響はないため、本稿ではメモリ容量の違いで3つのモデルがある、という解釈で話を進める。
これらのモデルはボディサイズおよび重量はまったく同一で、見た目にもそっくりなのだが、実は2022年発売モデルと2024年発売モデルとでは、背面の表面加工が異なっている。外見からは違いがわからないメモリやストレージの容量、背面カメラの画素数と異なり、外見上の唯一の相違点はこれということになる。
背面カメラについては、2022年モデルが2Mピクセル、2024年モデルが5Mピクセルということで、スペックは向上している。もっとも外見はまったく同じなので、前述するような外見上の見分け方においては手がかりにならない。
ディスプレイの解像度は1,280×800ドットと、電子書籍のコミックを表示するには最低限といったレベル。単ページの表示であれば問題ないが、画面を横倒しにして見開きで表示するにはページが小さすぎる上に粗さも目立つ。Wi-Fiは11ac止まりで、メモリカードスロットのほか、イヤホンジャックも搭載している。ポートはUSB Type-Cだ。
このほか、Google Playストアには対応せず、利用できる電子書籍ストアはKindleおよびdマガジンに限られるなどの特徴も共通だ。また本製品をスマートディスプレイのように使える独自機能「Showモード」が、ソフトウェアバージョン8.3.3以降は廃止され利用できなくなっている点も、3製品ともに共通している。
ベンチマークアプリではスコアの差はほぼ皆無
ではベンチマークについて見ていこう。本製品のスペックのうち、パフォーマンスに影響を及ぼす仕様の違いは、事実上メモリ容量だけだ。これらがベンチマークのスコアにおいてどれだけの差となって現れるかは、購入前の段階ではもっとも興味のあるところだろう。
が、先に結論を書いてしまうと、複数のベンチマークアプリで試す限り、スコアの違いはほとんどない。そればかりか、ベンチマークアプリによってはメモリ容量の少ないほうが高いスコアが出ているケースすらある。以下の画像はいずれも左から、メモリ2GBモデル(2022年発売)、3GBモデル(2024年発売)、4GBモデル(2024年発売)のスコアを示したものだ。
なおベンチマーク結果のうち、メモリ関連のスコアだけを見ると、確かにメモリ容量の序列通りのスコアになっているので、まったく反映されていないわけではない。総合スコアにほとんど影響を及ぼさないほど、差異が小さいというだけの話のようだ。
ダウンロード速度はメモリ容量で明確な違いあり
では実機の使用中に、パフォーマンスの差を感じるシーンはあるだろうか。ベンチマークで差はみられなくとも、実際の利用シーンでは差を感じるというのはよくある話だからだ。
まず読書における一般的な操作、具体的にはページをめくったり、オプションを開いて文字サイズを変更したりといった操作については、差を感じることはない。つまりいったん本を開いてしまえば、3製品のいずれでも、違いは気にせず使えるということになる。
一方で、本をタップして開いたり、本体を回転させて見開きと単ページ表示を切り替えるといった付加的な操作においては、メモリ容量の大きなモデルのほうが、反応するまでの時間はワンテンポ短い。両者を交互に使えば、どちらがメモリ容量が多いモデルなのかはわかる。ただしストップウォッチで測って数値として出るほどの差ではない。
唯一、数値上も明確な差が出るのがダウンロード速度で、ある電子書籍をライブラリからダウンロードした場合の所要時間が、メモリ2GBモデルだと「8秒46」、3GBモデルだと「8秒42」、4GBモデルだと「7秒48」と、メモリ容量が大きいほどダウンロード完了までの時間が短い。複数の電子書籍をまとめてダウンロードする場合には、この何倍もの違いが出ることになる。
また電子書籍ではないが、ファイル転送ソフトを利用して約1GBのファイルをダウンロードした時の所要時間が、2GBモデルだと「4分53秒26」、3GBモデルだと「4分27秒88」、4GBモデルだと「4分10秒91」と、メモリ容量が1GB増えるごとに所要時間が約20~30秒短縮できる計算になる。ちなみにアップロード速度はほとんど差はつかず、ダウンロード速度だけが有意な差が見られる。
どのモデルを選ぶべきか
以上のように、確かにメモリ容量による違いは存在するのだが、あらゆる操作において一目瞭然といったことはなく、また差はあってもほんの僅かというケースが大半だ。敢えてメモリ容量は無視し、ストレージ容量で選ぶというのも一つの手だろう。
過去のAmazonのセールでは、これらFire HD 8は通常時の価格から3千円ないしは4千円値引きされることが多い。モデルごとの価格差は2千円なので、上位のモデルがひとつ下のモデルよりも安くなる格好になる。こうしたセールの傾向も頭に入れつつ、入手の機会を探りたいところだ。