山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

格安Androidタブレットはどこまで実用になる? 「Fire HD並み」の格安2製品をテスト!

『Fire HD 8』と『FFF-TAB8』、『aiwa tab AB8』を比較

 抜群のコスパで人気の高いタブレットが、Amazonの『Fire HD 8』だ。実売価格は13,980円からだが、セール時には1万円を切ることもあるこの製品、スマホよりはるかに大きい8型の画面で、電子書籍ストアのKindleや、動画配信サービスのAmazonプライムビデオをリーズナブルに楽しめる。

 もっともAmazon製デバイスゆえ、Google Play ストアには対応しておらず、特に電子書籍ストアは事実上Kindleとdマガジンしか対応していない。価格を優先してこれらを許容するか、それとも多少のコストを掛けてでもGoogle Play ストアが使えるタブレットを選択するのかは難しい問題だ。

 今回はこの『Fire HD 8』と同じ8型で、Google Play ストアが使える格安のAndroidタブレット2製品をピックアップし、その実用性をチェックしていく。『Fire HD 8』とそれほど変わらない価格でGoogle Play ストア対応のタブレットが手に入るのならば、それに越したことはないからだ。果たして条件に見合う製品は見つかるだろうか。

 なお画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。またテキストは夏目漱石著『坊っちゃん』をサンプルとして使用している。

Amazon『Fire HD 8』

 まずは主役である『Fire HD 8』についてざっとおさらいしておこう。解像度は1,280×800ドットで、メモリは2GB、ストレージは32GBと64GBの2モデルをラインナップする。実売価格はそれぞれ13,980円と15,980円だ。OSはAndroidベースの独自OS「Fire OS」で、Google Play ストアには対応していない。連続駆動時間は最大13時間だ。

 なおメモリを3GBに増量し、ワイヤレス充電に対応した上位モデル『Fire HD 8 Plus』もラインナップしており、こちらは32GBが15,980円、64GBが17,980円と、実売価格は標準モデルよりもそれぞれ2千円増し。なお本稿での写真および後述のベンチマークでは、機材の関係でこちらの『Fire HD 8 Plus』を用いている。

製品外観。インカメラは横向きでの利用を前提とした配置
背面。カメラは突起のないデザイン
電源ボタンと音量ボタン、および背面カメラはまとまって配置されている
ボタンやポート類はひとつの面にほぼ集中している
メモリカードスロットはカバー付。最大1TBまで対応する
重量は実測で340gと、8型タブレットとしてはやや重い

FFF SMART LIFE CONNECTED『FFF-TAB8』

 競合となる1製品目は、FFF SMART LIFE CONNECTEDの8型タブレット『FFF-TAB8』だ。Fire HD 8と同じく1,280×800ドット、メモリは3GB、ストレージは32GBで、実売価格は15,800円と、『Fire HD 8 Plus』と横並びだ。

 CPUは「A133 4コア 1.6GHz」とのみ記されており、OSはAndroid 12。素のAndroidということで、Fireと違ってGoogle Play ストアを利用可能だ。Fireと同様にイヤホンジャックおよびメモリカードスロットを搭載するのも特徴。連続駆動時間は4.5時間とかなり短い。

製品外観。縦向きを前提としたデザイン
背面。カメラは突起のないデザイン。下部にはスピーカーがある
電源ボタンと音量ボタン、および背面カメラ。各ボタンやポートが印刷されているのが特徴的
ポート類は本体上部に集中している。屋外利用では小雨などの侵入がやや気がかりだ
メモリカードスロットはカバーなし。最大256GBまで対応する
重量は実測で344gと、Fireよりもわずかながら重い

JENESIS『aiwa tab AB8』

 2製品目は、JENESISが手掛けるアイワ(aiwa)ブランドの8型タブレット『aiwa tab AB8』だ。こちらも『Fire HD 8』と同じく1,280×800ドットで、実売価格は21,010円とやや上だが、こちらはメモリが4GB、ストレージが64GBとやや多め。

 CPUはMediatek MT8183(オクタコア)、OSはAndroid 12を採用している。こちらも素のAndroidゆえ、Google Play ストアを利用できる。こちらもイヤホンジャックおよびメモリカードスロットを搭載。連続駆動時間は6時間と、『FFF-TAB8』ほどではないが短めだ。

製品外観。『FFF-TAB8』と同じく縦向きを前提としたデザイン
背面。先の2製品よりも丸みが少なく直線的なデザイン
電源ボタンと音量ボタン、および背面カメラ。カメラの突起はない
ポート類は上面に集中するなど、『FFF-TAB8』とは配置も含めよく似ている
メモリカードスロットはカバー付。対応する容量については不明
重量は実測で326gと、先の2製品に比べるとわずかに軽い

3製品を比較。画面は横並びだがさまざまな差異あり

 さて、Fireを中心に各製品の特徴を比較していこう。これら3製品は画面サイズがまったく同じなのだが、ベゼル幅の関係で、ボディサイズはかなり異なっている。

 具体的には、Fire以外の2製品は、Fireに比べると細長い。インカメラの搭載位置を見ても、Fireは横向きでの利用が基本、ほかの2製品は縦向きでの利用を基本としていることが、このサイズの違いにつながっていることがわかる。ちなみに実寸法と重量は以下の通りだ。

機種名寸法重量
Fire HD 8約202×137×9.6mm337g
FFF-TAB8約211×121×10mm341g
aiwa tab AB8約208×124×9mm330g
3製品を並べたところ。左から『Fire HD 8 Plus』、『FFF-TAB8』、『aiwa tab AB8』。画面サイズはまったく同じなのだが、ベゼルの幅の関係で、Fire以外の2製品は細長く見える
背面。画面サイズが同一だと思えないほど外観は異なっている
厚みの比較。左がFire、右が『FFF-TAB8』。ほぼイーブンだ
厚みの比較。左がFire、右が『aiwa tab AB8』。『aiwa tab AB8』は3製品の中でもっとも薄い

 画面回りについては、「8型/1,280×800ドット」というスペックは3製品とも横並びで、解像度も同じ189ppi。8型と言えば一般的に、単ページ表示に適しており、見開き表示にもギリギリ耐えうるサイズだが、さすがに解像度が200ppiを切っていると、見開き表示での画質はかなり厳しいものがある。

 テキストならば文字サイズを大きくすれば済むが、コミックの場合、吹き出し内のセリフは読めても、コマに書き込まれた小さい文字などはつぶれて読みづらい。また雑誌などの注釈も、やはりつぶれてしまいがちだ。これらが厳しいようならば、見開きではなく単ページで表示するか、最初からワンランク上の1,920×1,080ドット以上の製品を選ぶべきだろう。

 ちなみに発色に関しては、『FFF-TAB8』はかなり赤みがかかっているのが目立つ。本製品だけを見ているとそれほど気にはならないのだが、他の2製品と比べると色味が明らかに異なっている。なるべく原色に忠実な表示をしたい用途では要注意だ。

左から『Fire HD 8 Plus』、『FFF-TAB8』、『aiwa tab AB8』。中央の『FFF-TAB8』は色味がかなり特徴的だ
単ページ表示での画質の比較。色味こそ違うが、解像度は横並びとあって、細部のディティールに差はない
見開き状態での画質の比較。製品間に差はないが、単ページ表示と違って細部のディティールがつぶれたり、ルビが読めなくなっている

 ストレージは、『Fire HD 8』は32/64GB、『FFF-TAB8』は32GB、『aiwa tab AB8』は64GB。3製品ともメモリカードに対応しているので、容量が足りなければそちらで補うことになる。なおFireは最大1TBまでなのに対して、『FFF-TAB8』は最大256GB、『aiwa tab AB8』は非公表となっているが、試しに512GBのメモリカードを挿入したところ2製品とも認識されたことを補足しておく。

 3製品に共通するマイナスポイントとして、顔認証や指紋認証といった生体認証に対応しないことが挙げられる。そのためロックを解除するには、毎回PINコードを入力しなくてはいけない。もっともこれらに対応したモデルは、実売価格が2倍近くになることもあり、コストを優先するならば割り切りが必要な部分と言える。

いずれの製品もロックの解除にはPINコードを入力しなくてはならない

決め手はパフォーマンス? それとも価格?

 対応する電子書籍ストアアプリについては、Fireは自社運営のKindleストアのほか、dマガジンのみしか対応しない。これに対してその他の2製品はGoogle Play ストアが利用できることからこうした制限はなく、事実上あらゆる電子書籍ストアに対応することになる。これらはFire以外を選ぶ最大のメリットと言っていいだろう。

Fireを除く2製品はGoogle Play ストアから任意の電子書籍アプリをインストールして利用できる

 その一方で気になるのは、各製品のタブレットとしてのパフォーマンスだ。もともとFireはタブレットの中でもエントリークラスの製品で、パフォーマンスはそう高いわけではない。電子書籍での利用でいうと、ページをめくるなどの基本操作は問題ないが、アプリを起動したり、別のアプリに切り替えるような動作では、少々引っかかりを感じることもある。

 これらと比較して、残る2製品はどうだろうか。Googleのベンチマークアプリ「Google Octane 2.0」で検証したところ、Fireが「5807」なのに対して、『FFF-TAB8』は「1002」、『aiwa tab AB8』は「8208」という結果だった。

「Google Octane 2.0」によるベンチマーク結果。左から、Fireが「5807」、『FFF-TAB8』が「1002」、『aiwa tab AB8』が「8208」。かなり極端な差だ

 この中でひときわ低スコアの『FFF-TAB8』は、実際に使っていても、ハングアップに近い挙動も見られるほどで、お世辞にも快適とはいえない。特に今回の比較では、さまざまな電子書籍ストアが利用できる汎用性の高さを主眼に置いているので、アプリの起動や切り替えがスムーズに行えないとなると、その前提条件からして少々辛い。

 一方の『aiwa tab AB8』は、iPad miniのようなサクサク感こそないが、実際に使っていてもレスポンスは実用レベルで、Fireより上のスコアというのも納得だ。Fire基準で見ると極めて快適に利用できると言っていいだろう。ただし価格は他の2製品よりも上なのと、バッテリーの駆動時間はFireに大きく劣るので、それらをどう見るかによるだろう。

 なお今回は「同じ解像度でできるだけ安価」であることを条件に候補をチョイスしたが、Fireを避けたい理由が解像度の低さにある場合は、これらの候補は除外し、フルHD(1,920×1,080)以上の製品を狙ったほうがよいだろう。ただしその場合、実売価格は3万円台後半になりがちなので、優先順位は明確につけて選択することをおすすめする。