山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

Amazonのコスパ良好タブレット「Fire HD 8」は最新モデルへ買い替えるべき?

~旧モデルとの違いを徹底比較!

歴代の「Fire HD 8」。左から、第10世代のPlusバージョン、第8世代、第6世代、第5世代(第7世代は第6世代と共通の外観ゆえ割愛している)
背面は正面に比べるとモデルごとの違いがわかりやすい。左から、第10世代のPlusバージョン、第8世代、第6世代、第5世代

 Amazonのタブレット「Fire」シリーズの中で、もっとも人気が高いのが、8型の「Fire HD 8」だ。持ち歩きやすいコンパクトなボディサイズで、実売価格が1万円前後から手に入る激安ぶりが人気の秘訣だ。同等サイズのiPad miniと比べて表示解像度は低いとはいえ、これだけ安ければ導入のハードルは極めて低い。

 この「Fire HD 8」、本稿執筆時点(2022年7月10日)の最新モデルは、2020年に発売された第10世代モデルだが、それ以前に発売された過去モデルとはどのような点が違うのだろうか。また買い替えた場合、どのような点でメリットがあるのだろうか。

 今回は、歴代の「Fire HD 8」すべてを紹介しつつ、現行モデルに買い替える利点、また見逃されがちなポイントについて紹介する。手持ちのモデルからの買い替えにあたって参考にしてほしい。なお画質比較のサンプルには、「Kindle Unlimited」で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第9巻』を、許諾を得て使用している。

 なお基本的な知識として、Fireの各製品における「第○世代」という表現は、原則として発売年によってつけられるため、数字が連続していないことに気をつけたい。例えば現行モデルは第10世代だが、もうひとつ前は第8世代であり、第9世代というモデルは存在しない。見分け方はAmazonのサイトにも掲載されているので、参考にしてほしい。

Fireタブレットの仕様: Fire HDモデル | Fireタブレット

まずは歴代モデルの外見と特徴をチェック

 まずはざっと従来モデルの外観と特徴について紹介する。電子書籍利用に関係するスペックの違いは以下の表にまとめているので参照してほしい。

「Fire HD 8」シリーズのスペックの違い

「Fire HD 8」(2015、第5世代)

 「Fire HD 8」の初代にあたるモデルで、光沢のあるボディと、311gという歴代最軽量ボディが特徴。ただしメモリ容量はわずか1GBで、ストレージも8GB/16GB構成であるなど、いまとなってはスペックが低く、動作のもっさり感もかなりのもの。またOSはFireOS 5系列で、現行モデルのFireOS 7系列へのアップデートは行えない。モデル番号は「KFMEWI」。

第5世代モデル。第8世代まではいずれも縦向きでの利用を前提としたデザインで、インカメラが短辺側にある
背面は同時期に発売されたFire HD 10などと同じ、光沢のある塗装で、amazonのロゴもモールドではなく印刷されたもの

Fire HD 8(2015、第5世代)の仕様

「Fire HD 8」(2016、第6世代)、「Fire HD 8」(2017、第7世代)

 初代である第5世代モデルと比べ、メモリが1GB→1.5GB、ストレージが8GB/16GB→16GB/32GBへと底上げされているが、Wi-Fiの11ac対応が省かれたほか、ボディが大幅に厚くなり重量が増すなど、第5世代モデルより退化した箇所も見られる。OSもFireOS 5系列で、現行モデルのFireOS 7系列は非対応。なお翌2017年に第7世代モデル(モデル番号:KFDOWI)がリリースされているが、ポート類の配置を除きほとんど違いはない。

第6世代モデル。正面から見た外観は第5世代とほぼ変わらない
背面はマット調のプラスチック。amazonロゴはモールドされている。翌年発売された第7世代モデルもほぼ同じ外観だ

Fire HD 8(2016、第6世代)の仕様

Fire HD 8(2017、第7世代)の仕様

「Fire HD 8」(2018、第8世代)

 第7世代をベースに音声アシスタント「Alexa」のShowモードを追加したモデルで、外観やスペックは第6・7世代と同様。ただしこちらはOSがFireOS 7系列であることから、現行の第10世代モデルとほぼ共通の機能が使え、設定画面の分類などもより直感的だ。またメモリカードも最大400GBまでサポートするよう改められている。モデル番号は「KFKAWI」。

第8世代モデル。正面から見た外観は第7世代以前のモデルと同じだが、FireOS 7系列に対応する
マット調の背面は第7世代以前のモデルと同じだが、上部ボタンがシルバーではなくブラックであることで見分けがつく

Fire HD 8(2018、第8世代)の仕様

「Fire HD 8」(2020、第10世代)

 本稿執筆時点での最新モデルで、メモリ3GBでワイヤレス充電対応のPlusバージョン(「Fire HD 8 Plus」)と、メモリ2GBの標準バージョンの2モデル構成。両モデルともメモリ以外にCPUも大幅に強化されているほか、ストレージも16GB/32GB→32GB/64GBへと大容量化が図られている。さらに本体を横向きで利用することを前提としたデザインへと改められ、ポートもUSB Type-Cを採用している。モデル番号は「KFONWI」。

第10世代モデルは横向きを基準としたデザインで、インカメラの位置も移動している。これはPlusバージョン
背面は「amazon」の文字がなくなり、ロゴのみに改められた。またPlusバージョンは滑り止めの加工が施されている

Fire HD 8(2020、第10世代)の仕様

第10世代モデルへの買い替えにあたり知っておきたいこと

 以上が各モデルの概要なのだが、結論から言ってしまうと、第8世代以前のモデルはすべて、現行の第10世代モデルに買い替えるメリットは十分にある。

 というのも現行の第10世代モデルは、CPUやメモリのスペックアップはもちろん、microSDも最大1TBまで対応、さらにUSB Type-Cを採用するなど、フルモデルチェンジといっていい進化を遂げているからだ。少しでも快適に利用したい人にはPlusバージョン、コスト重視ならば標準バージョンと、用途に応じた選択肢があるのも評価できる。

 また第7世代以前のモデルは、FireOS 5のアップデートが終了しており、現行のFireOS 7に対応しないことから、なおさら買い替える価値は高い。グループでくくると「第10世代」「第8世代」「第7世代以前」という3つがあり、その中でも第10世代は頭一つ抜けているイメージだ。上位のPlusバージョンともなるとなおさらである。

第10世代モデルは横向きでの利用を前提としたデザインで見開き表示でも使いやすい
第10世代、第8世代モデルはdマガジンアプリも利用できる

 ただし注意しなくてはいけない点はいくつかある。ひとつは画面解像度だ。歴代の「Fire HD 8」は画面がすべて1,280×800ドット(189ppi)なので、解像度の低さが気になるからといって現行モデルに買い替えても解決にはならない。高解像度を求めるならば、同等の画面サイズで高解像度のタブレット、すなわちiPad miniなどを検討すべきだろう。

左が第10世代モデル(189ppi)、右がiPad mini(326ppi)。「Fire HD 8」は歴代モデルいずれもこの解像度だ

 また現行の第10世代モデルは発売からすでに丸2年が経過しており、いつ次期モデルが発表されてもおかしくないことは指摘しておきたい。「Fire HD 8」は過去のモデルチェンジの間隔が2年以上空いたことがなく、現在はすでにそれを超えているため、明日いきなり第10世代モデルが型落ちになる可能性はあることは、念頭に置いておきたい。

 ただし新モデルが登場しても、前回フルモデルチェンジを行った直後であることから、次の新モデルでがらりと内容が変わることも考えにくいのもまた事実だ。唯一の例外は「高解像度化」だが、それさえ行われなければ、それほど差異のないアップデートにとどまると予想される。

 また円安基調の影響でiPhone/iPadをはじめとするガジェットの大幅値上げが相次ぐ昨今、次期モデルでこれまでの価格水準が維持できるとは限らない。これらを踏まえて考えると、たとえ近日中に次期モデルがリリースされるにしても、現行の第10世代モデルがリーズナブルな価格で手に入れられる機会があれば、買い替えは決して間違った選択ではないだろう。