山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

【2024年最新版】旧世代の「Fire HD 8」は最新モデルへ買い替えるべき?

Amazonの8型タブレットの歴代モデルを総チェック!

 Amazonのタブレット「Fire」シリーズの中で、10型と並んで人気が高いのが、8型の「Fire HD 8」だ。表示解像度の低さなど気になる点はあるものの、小型軽量で片手で持てることに加えて、実売価格は1万円台前半とリーズナブル。初めて手にするタブレットとして、またスマホでは画面が狭いと感じる人にとってのサブ機として、最適な1台といっていい。

 この「Fire HD 8」、本稿執筆時点(2024年4月1日)の最新モデルは、2022年に発売された第12世代モデルだが、それ以前に発売された過去モデルとはどのような点が違うのだろうか。また旧モデルを所有している場合、最新モデルに買い替える必要性はどのくらいあるのだろうか。

 今回は、歴代の「Fire HD 8」を紹介しつつ、現行モデルに買い替える必要性の有無、および買い替えた場合に得られるメリットを紹介する。画質比較のサンプルには、『Kindle Unlimited』で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第1巻』を、許諾を得て使用。また、雑誌は『DOS/V POWER REPORT』の最新号を、サンプルとして使用している。

 なお基本的な知識として、Fireの各製品における「第○世代」という表現は、原則として発売年によってつけられるため、数字が連続していないことに気をつけたい。例えば現行モデルは第12世代だが、もうひとつ前は第10世代であり、第11世代というモデルは存在しない。見分け方はAmazonのサイトにも掲載されているので、参考にしてほしい。

歴代の「Fire HD 8」。左から、上段が第12世代、第10世代。下段が第8世代、第6世代、第5世代。第12世代と第10世代はいずれもPlusバージョンを用いている。また第7世代は第6世代と共通の外観ゆえ割愛している
背面。ロゴの有無、カメラの配置など、モデルごとの違いは正面よりもわかりやすい

「Fire HD 8」(2015年、第5世代)

 「Fire HD 8」としては初代にあたるモデルで、光沢のあるボディと、311gという歴代最軽量ボディが特徴。ただしメモリ容量はわずか1GBで、ストレージも8GB/16GB構成であるなどスペックは低く、動作のもっさり感もかなりのもの。またOSはFireOS 5系列で、操作性はあまり高くない。モデル番号は「KFMEWI」。

第5世代モデル。第8世代まではいずれも縦向きでの利用を前提としたデザインで、インカメラが短辺側にある
背面は同時期に発売されたFire HD 10などと同様、ピアノ調の光沢のある塗装。amazonのロゴはモールドではなく印刷されている

第5世代「Fire HD 8」タブレットの仕様

「Fire HD 8」(2016年、第6世代)「Fire HD 8」(2017年、第7世代)

 初代である第5世代モデルと比べ、メモリが1GB→1.5GB、ストレージが8GB/16GB→16GB/32GBへと底上げされているが、Wi-Fiの11ac対応が省かれたほか、ボディが大幅に厚くなり重量が増すなど、第5世代モデルより退化した箇所も見られる。OSもFireOS 5系列で、操作性は高くない。モデル番号は「KFGIWI」。なお翌2017年に第7世代モデル(KFDOWI)がリリースされているが、ポート類の並び順を除き違いはほぼない。

第6世代モデル。翌年発売の第7世代モデルもほぼ同じ外観だ
背面はマット調のプラスチック。amazonロゴは印刷ではなくモールド

第6世代「Fire HD 8」タブレットの仕様

第7世代「Fire HD 8」タブレットの仕様

「Fire HD 8」(2018年、第8世代)

 第7世代をベースに音声アシスタント「Alexa」のShowモードを追加したモデルで、外観やスペックは第6/7世代とほぼ共通。ただしこちらはOSがFireOS 7系列であることから、設定画面の分類がより直感的に改められており、使い勝手では上。またメモリカードも最大400GBまでサポートするよう改められている。モデル番号は「KFKAWI」。

第8世代モデル。外観は第7世代以前のモデルと同じだが、FireOS 7系列に対応する
マット調の背面は第7世代以前のモデルと同じだが、上部ボタンがシルバーではなくブラックであることで見分けがつく

第8世代「Fire HD 8」タブレットの仕様

「Fire HD 8」(2020年、第10世代)

 それ以前のモデルとは異なり横向きでの利用を前提としたデザインへと改められたほか、ポートもUSB Type-Cに変更されるなど、フルモデルチェンジが図られたモデル。メモリ3GBでワイヤレス充電対応のPlusバージョン(「Fire HD 8 Plus」)と、メモリ2GBの標準バージョンの2モデル構成となったのもこの第10世代から。またストレージも16GB/32GB→32GB/64GBへと大容量化が図られている。モデル番号は「KFONWI」。

第10世代モデルは横向きを基準としたデザインで、インカメラの位置も移動している。これはPlusバージョン
背面は「amazon」の文字がなくなり、ロゴのみに改められた。またPlusバージョンは滑り止め加工が施されている

第10世代「Fire HD 8」タブレットの仕様

「Fire HD 8」(2022年、第12世代)

 第10世代をベースに、CPUを4コア→6コアへとアップグレードしたモデル。バッテリー持続時間も1時間延びて13時間となっている。第10世代と同様、メモリ3GBでワイヤレス充電対応のPlusバージョン(「Fire HD 8 Plus」)と、メモリ2GBの標準バージョンの2モデル構成で、価格は発表時点では第10世代から2千円増しだったがその後さらに2千円ずつ値上げされるなど、コスパはやや低下している。モデル番号はPlusバージョンが「KFRAPWI」、通常バージョンが「KFRAWI」。

第10世代モデルと同じく横向きを基準としたデザイン。わずかに軽量化されているが持ち比べても判別はほぼ不可能。これはPlusバージョン
背面は第10世代モデルと同じくロゴのみ。Plusバージョンは背面がディンプル加工されており滑り止めの役割を果たす

第12世代「Fire HD 8」タブレットの仕様

第12世代モデルへの買い替えにあたり知っておきたいこと

 以上が各モデルの概要だが、まず知っておくべきなのは、これら歴代のモデルにおいて、画面解像度はすべて1,280×800ドット(189ppi)で横並びということだ。そのため細部のディティールの表現力に不満があるならば、古いモデルを最新モデルに買い替えてもまったく解決にならない。その場合はiPad miniなど、同等サイズで解像度の高い他社のタブレットを検討すべきだろう。

左が第12世代モデル(189ppi)、右がiPad mini(326ppi)。「Fire HD 8」は歴代モデルのどれも同じ解像度で、細部の表現力はイマイチだ
同じく、左が第12世代モデル(189ppi)、右がiPad mini(326ppi)。雑誌の注釈のような細かい文字は、「Fire HD 8」は軒並み潰れてしまう

 それ以外の部分で歴代モデルをチェックしていくと、第8世代以前は「縦向き、microBポート搭載」、第10世代以降は「横向き、USB Type-Cポート搭載」と、フォームファクターがはっきり分かれているのがわかる。また第10世代以降は、ストレージの最小容量が32GBとなったほか、メモリカードも1TB対応と、スペックも底上げされている。

 パフォーマンスはどうだろうか。第8世代まではブラウザーによるベンチマークはどれも似たりよったりで、実際のもっさり感も相当なものなのだが、6コアを採用する第12世代は、ベンチマークのスコアも飛び抜けて高く、実際に操作も快適だ。電子書籍の操作を行う上でここまで露骨な差は出るわけではないにしても、操作一つするにしても待たされないのはやはり大きい。

ブラウザーベースのベンチマークアプリ「Octane 2.0」でのスコア比較。左から第5世代、第6世代、第7世代、第8世代。初代に当たる第5世代だけがなぜか突出してスコアが高いが、ほかは似たりよったり
こちらは左から第10世代(Plus)、第12世代(Plus)。第10世代は第8世代以前よりわずかに速い程度だが、第12世代はそれ以前を圧倒するスコアだ。ちなみに「Plus」のつかない通常バージョンもスコアはほぼ同じ

 こうしたことから、「第8世代以前のモデル」から、現行の「第12世代モデル」への買い替えは、フォームファクターの観点でも、またパフォーマンスの部分でも、非常に価値が高い。特に第8世代以降は、電子書籍アプリが「Kindle」だけでなく「dマガジン」にも対応しているので、電子書籍ユースが中心であればなお価値は高い。

 一方、谷間に当たる「第10世代モデル」から現行の「第12世代モデル」への買い替えは、そこまで必要性は高くない。ベンチマークスコアについては開きがあるが、横向きの画面やUSB Type-Cといったフォームファクターは現行の第12世代モデルとほぼ同じ。第12世代モデルは価格も上がっており、無理に買い替えるほどではないというのが率直な感想だ。

 なお「Fire HD 8」は過去のモデルチェンジの間隔がほぼ2年であり、現行の第12世代モデルは、今秋で発売から丸2年が経過するため、その前後に次期モデルが発表される可能性は高い。そのため現在(2024年4月)のタイミングで買い替えるのであれば、セールによる割引など何らかのアドバンテージがあったほうが、たとえ直後にモデルチェンジがあっても納得はしやすいはずだ。