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【徹底比較】Fireタブレットのエントリーモデル「Fire 7」は最新モデルへ買い替えるべき?

歴代Fireタブレットの7型モデルとの違いを解説

歴代のFireタブレットの7型モデル(キッズモデルと日本未発売の初代モデルを除く。また第7世代モデルは第9世代と共通の外観ゆえ割愛)。発売日が古い下段の4製品はFire OS 4もしくは3でOSアップデートが終了しているため、現行のホーム画面を表示できない

 Amazonのタブレット「Fire」シリーズの中で、もっとも画面サイズがコンパクトなのが7型の「Fire 7」だ。決してハイスペックではないが、1万円を大きく割り込んだ価格は、セール時にはさらに値引きされることから、そのリーズナブルさが注目を集めることもしばしばだ。

 今回は、この「Fire 7」の歴代モデルすべて(キッズモデルなど一部を除く)を紹介しつつ、それらを所有しているユーザーの視点で、本稿執筆時点での最新モデル(第12世代)に買い替える必要があるのか否か、複数のポイントを検証していく。画質比較のサンプルには、「Kindle Unlimited」で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第10巻』を、許諾を得て使用している。

 なお基本的な知識として、Fireの各製品における「第○世代」という表現は、原則として発売年によってつけられるため、数字が連続していないことに気をつけたい。例えば「Fire 7」の現行モデルは第12世代だが、ひとつ前は第9世代であり、第10世代、第11世代というモデルは存在しない。見分け方はAmazonのサイトにも掲載されているので、参考にしてほしい。

Fireタブレットの仕様: Fire HDモデル | Fireタブレット

まずは歴代モデルの外見と特徴をチェック

 まずは現行の「Fire 7(第12世代)」以降、発表日が新しい→古い順に、歴代のFireタブレットの7型モデルをざっと紹介していく。

Fire 7(2022、第12世代)

 2022年6月発売の最新モデル。メモリ容量が従来モデルの2倍にあたる2GBへと増量されたほか、Wi-Fiは11acに対応、さらにUSB Type-Cを採用するなどフォームファクターも一新されている。画面を横向きにした時にインカメラが上に配置されるデザインに改められたため、全長が短くなっているのも特徴。その一方で容量32GBのモデルが消滅し、16GBモデルに一本化されるなど、ラインナップは縮小の傾向が見られる。モデル番号は「KFQUWI」。

カメラの位置は横へと変更されたが、片手で握れるスリムなボディはそのままだ
背面を見ても、横向きでの利用を前提としたデザインであることがわかる

Fire 7(2019、第9世代・2017、第7世代)

 2019年発売。画面を縦向きにした時にインカメラが上に来る配置を採用していることから、ボディはやや縦長。外観は2017年に発売された第7世代モデルを踏襲しており、CPU・メモリまわりも違いはないが、8/16GBのラインナップが16/32GBへと改められるなど容量が増したほか、音声アシスタントのAlexaに対応しているなどの違いがある。モデル番号は第9世代が「KFMUWI」、第7世代が「KFAUWI」。

カメラは縦向き時に上に来る配置で、現行の第12世代に比べるとボディは縦長だ
第9世代では背面のロゴが第7世代までの「amazon」から、同社の矢印状ロゴマークに変更された

Fire(2015、第5世代)

 2015年発売。それまで800×1,280ドットだった解像度を600×1,024ドットに落とし、そのぶん低価格化を図ったモデルで、現在までこの路線は踏襲されている。発売当時はクーポン利用で実売4,980円という安さが話題になった。メモリカードスロットが搭載されたのもこのモデルから。ちなみに以降のモデルと異なり、末尾に「7」という数字表記はない。モデル番号は「KFFOWI」。

ボディは縦長。正面からのデザインは前述の第9世代および第7世代と見分けがつかない
背面のロゴは「amazon」。左下のスピーカーはこの第5世代と第7世代に共通する特徴

Fire HD 7(2014、第4世代)

 2014年発売。「Kindle Fire」ではなく「Fire」という名称に改められた最初のモデルで、800×1,280ドットの7型としては最後となったモデル。なおこの時点では後述の高解像度版「Kindle Fire HDX 7」が継続販売されていたため、ラインナップ上は7型の下位モデルという位置づけになる。また本モデル以降、縦向きを前提としたデザインがしばらく継続することになる。モデル番号は「KFASWI」。

第5世代以降のモデルと比べるとベゼルに厚みがあり、ボディはやや大柄だ
同時発売の6型「Fire HD 6」と共通の、それ以前のモデルより面構成がシンプルなデザイン

Kindle Fire HDX 7(2013、第3世代)

 2013年発売。Fireは一時期ハイスペック路線へと切り替えを図ったことがあり、本製品はその最上位として登場したSnapdragon 800搭載の高解像度(1,200×1,920ドット)モデル。路線変更により1モデルをもって打ち切られたため、7型ながら300ppiを超えるFireは、歴代でもこのモデルのみ。同時発売の8.9型と共通の、くさび状のスタイリッシュな薄型ボディも特徴。モデル番号は「KFTHWI」。

ベゼルはそれほどスリムではないが、以前のモデルに比べて薄型でボディも軽量だ
横向きを前提とした、くさび状の複雑な面構成のデザイン。スピーカーもステレオだ

Kindle Fire HD 7(2013、第3世代)

 2013年発売。前年発売の7型Fireの上位モデル「Kindle Fire HD 7」の後継に当たるが、600×1,024ドットの下位モデルが姿を消し、また前述のフルHD対応モデル「Kindle Fire HDX 7」が追加されたため、従来と違いこちらが下位モデルという位置づけになる。先代の2モデルは400g前後のヘビー級だったが本モデルは345gへと軽量化されている。ちなみに発売直後は型番末尾の「7」がなかったが、後日追加されている。モデル番号は「KFSOWI」。

同時発売のKindle Fire HDX 7と似ているが、下位モデルということでインカメラは非搭載
背面もKindle Fire HDX 7に似ているが高級感に乏しい質感。スピーカーはモノラル

Kindle Fire HD 7(2012、第2世代)

 2012年発売。Kindleストアの日本上陸とともに発売された、日本における初の「Kindle Fire」のひとつで、解像度が800×1,280ドットの上位モデルという位置づけ。同時発売の「Kindle Fire」が縦向きのデザインなのに対して、こちらは横向きを前提としたデザインで、外部出力用のMicro HDMIポートを備える。なお発売時点では型番末尾に「7」はなかったが、現在では識別のためか「Kindle Fire HD 7」という呼称が用いられている。モデル番号は「KFTT」。

上下左右のベゼルが厚く、やぼったいデザイン。角の丸みも独特だ
背面に施された滑り止め加工は10年が経過した現在では劣化が進み、ベタついている

Kindle Fire(2012、第2世代)

 2012年発売。Kindleストアの日本上陸とともに発売された、日本における初の「Kindle Fire」のひとつで、解像度が600×1,024ドットの下位モデルという位置づけ。ボディは前年に米国で発売された第1世代と同一で、音量ボタンがなく、画面内の通知領域からでないと音量が調整できない欠点がある。比較的スリムなボディながら厚みがあり、現行の第12世代モデル(282g)よりもはるかに重い400gというヘビー級のボディも特徴。モデル番号は「KFOT」。

初代Kindle Fireと共通のデザイン。インカメラはもちろん、音量ボタンすらも非搭載だ
背面のロゴは同時発売のHDモデルと同じく「Kindle」。こちらも背面滑り止めのベタつきが激しい

最新モデルに買い替えても必ずしもスペックは向上しない?

 以上のように、7型のFireタブレットはこれまで9種類ものモデルが存在する。一般的に、新しくモデルチェンジしたデバイスは従来モデルに比べてスペックが向上しており、買い替えによって恩恵を受けられるはずだが、この7型Fireは方向性自体がこれまで大きく変化していることから、買い替えることで必ずしもスペックが向上するわけではない。

 特に解像度に関しては、現行の第12世代モデルは、2012年発売の第2世代モデルと変わっておらず(600×1,024ドット)、途中で発売され、現在ではすでに終息したFire HD 7シリーズ(800×1,280ドット)や、Kindle Fire HDX(1,200×1,920ドット)のほうが解像度は高いほどだ。

 そのため、これらのモデルを使い続けているユーザーが現行の第12世代モデルに買い替えた場合、USB Type-Cなど新しいフォームファクターの恩恵を受けられても、電子書籍を読むにあたっての表現力は、むしろ低下する可能性がある。現行モデルはCPUやメモリまわりは強化されているとはいえ、パフォーマンスが劇的に向上しているわけではないのも気になるところだ。

左が現行の第12世代モデル(600×1,024ドット)、右がKindle Fire HDX(1,200×1,920ドット)。解像度の差は一目瞭然だ

 もちろん、ストレージの容量や対応メモリカードの最大容量は増えているので、買い替えは無意味ではないのだが、表示クオリティを向上させるのであれば、現行の第12世代モデルは、選択肢としてはあまり適切ではない。8型にまで対象を広げても、現行の「Fire HD 8」は800×1,280ドット止まりなので、満足の行く買い替えになるかは未知数だ。いずれにせよ、解像度は最重要チェックポイントといえるだろう。

8型のFire HD 8(右)との比較。画面サイズはひとまわり大きいが、解像度はそれほど高いわけではなく、解像度の向上を狙って買い替える製品ではない
ただし8型となるとコミックの見開き表示がギリギリ可能なので、そうした目的ではありだろう
7型ではコミックの見開き表示はサイズ的にも、また解像度の面からも、かなり厳しいと言わざるをえない

 ただし現行モデルは円安の影響をあまり受けておらず、低価格で抑えられていることは頭に入れておきたい。今後Fireタブレットがモデルチェンジした場合、円安が続いていれば、価格に転嫁される可能性は十分にある。それを考慮すると、前述の画面解像度などの問題はあっても、現在の価格が維持されているうちにセールなどを利用して買い替えておくというのは、考え方としてはありだろう。

 もうひとつ、「Fire」ではなく「Kindle Fire」だった2013年以前の4製品は、別の意味で早期に買い替えることが望ましい。というのもこれらはFire OS 4もしくは3でアップデートが終了しており、ホーム画面すら旧デザインのままだからだ(冒頭写真参照)。このFire OS 4以前は必要なアプリがインストールできないケースも散見され、セキュリティ的にも望ましくないと考えられるので、なるべく早急に移行先の製品を探したいところだ。

 いずれにしても、現在の7型のFireはエントリーモデルという位置づけなので、同じ7型で後継モデルを選ぶことにこだわらず、コミックなどで見開き表示をしたいのであれば8型以上への移行、単ページ表示で構わないが解像度に不満があるならば大画面のスマホを用いるなど、買い替えを機にステップアップするのはありだろう。現在どのような使い方をしていて、どこに不満があるかで、選択肢は大いに変わってくるはずだ。

価格差を考えなければ、8.3型のiPad mini(右)は、有力な乗り替え候補だろう
左が現行の第12世代モデル(600×1,024ドット)、右がiPad mini(1,488×2,266ドット)。表示のクオリティは段違いだ