山口真弘のおすすめ読書タブレット比較

新登場の「iPhone 14」シリーズを読書に使うならおススメ機種はどれ?

iPhone 14シリーズはminiモデルが消滅したことで、画面サイズは6.7型(左)と6.1型(右)の2種類のみとなった

 iPhoneの新ラインナップ、iPhone 14シリーズが登場した。iPhone 13シリーズまで存在したminiモデルがなくなり、代わって大画面版のPlusが追加。結果、画面サイズは6.1型と6.7型の2種類に統一された。

 そのため「まず画面サイズを決めてからProか否かを選択」でも、「Proか否かを決めてから画面サイズを選択」でも、どちらの順序でも製品を選べるようになった。ラインナップがマトリクス表のようになって選びやすくなったとも言えるこのiPhone 14シリーズだが、これら画面サイズの違いは、電子書籍を読む場合にどう影響するだろうか。

 今回は6.1型の「iPhone 14」、6.7型の「iPhone 14 Plus」の2機種を使い、具体的に検証してみよう。なおコミックの表示サンプルには、「Kindle Unlimited」で配信されている、森田 崇/モーリス・ルブラン著『怪盗ルパン伝アバンチュリエ 第6巻』を、技術書の表示サンプルには、あーちゃん/できるシリーズ編集部著『できるPower Automate Desktop』を使用している。

コミックなら6.7型を選びたいところだが…

 iPhone 14(およびiPhone 14 Pro)は、画面サイズが6.1型で、画面の横幅は64.5mm。これに対して、iPhone 14 Plus(およびiPhone 14 Pro Max)は6.7型で、画面の横幅は71mmだ。テキストコンテンツを読むのであればどちらの製品も問題はないが、違いがでてくるのはやはりコミックだ。

 6.1型は、画面幅が64.5mm止まりであるため、コミックを表示するとどうしても小ぶりに感じてしまう。まったく読めないわけではもちろんないが、作画の密度が高い作品や、セリフが多く吹き出しの文字のサイズが小さい作品は、見づらく感じることもしばしば。もともと小さな画面での表示を想定しているウェブコミック向けといっていいだろう。

 コミックに限らずさまざまな電子書籍をオールマイティに読みたい場合は、やはり6.7型のほうが有利だ。こちらであれば、6.1型よりも2割程度大きく表示されるので、iPhone 14では見づらいと感じたページが、iPhone 14 Plusでは支障なく読める、といったことが起こる。ちなみに71mmという画面幅は、iPhoneに限らず、現行のスマホの中でも最大クラスにあたる。

左がiPhone 14 Plus(6.7型)、右がiPhone 14(6.1型)。6.1型では読みづらく感じる作品でも、6.7型ならば快適に読める

 ただしいくら6.7型でも、さすがに見開き表示は不可能だ。特にコミックは、左右ページが連なって作画されていることも多く、紙の雑誌や単行本と同じく見開きで読めるに越したことはないが、画面サイズが小さすぎて実用に耐えない。

 そもそも現行のスマホの画面は天地が長く、そのぶん横幅は圧迫されるので、コミックなど固定レイアウトのコンテンツはどうしても小さく表示されてしまう。こうした場合はスマホではなく、8.3型のiPad miniや、10.9型のiPad Airなどのタブレットをチョイスすべきだろう。こちらであればスマホほど画面が細長くないので、余白を最小限に押さえた表示が可能だ。

スマホとしては大画面のiPhone 14 Plus(下)でもさすがに見開き表示は難しい。コミックを単行本と同等サイズで表示できる10.9型のiPad Air(上)と比べると差は一目瞭然
上段がiPhone 14 Plus、下段がiPad Air(隣はサイズ比較用の500円硬貨)。台詞の多いコミックは、さすがに小さすぎて読み取れない

画面横向き→縦スクロールでの読書も実用的

 その一方で、技術書のような大判サイズのコンテンツをやむなくiPhoneで読まなくてはいけない場合は、別の方法もある。それは本体を横向きにして、縦にスクロールさせながら読むことだ。

 特に本文が横書きのコンテンツは、画面を横向きにして縦スクロールで読み進めたほうが、一行をまるごと横幅いっぱいに表示できるため、思いのほか快適に読める。大きな図版は無視することになるが、ページごとにズームしながら読む面倒さに比べると、こちらのほうが実用的な場合も多い。

 ただし一般的な電子書籍ストアのビューアアプリは、画面を横向きにすると、強制的に見開き表示になってしまうことがほとんどで、ストアで購入した作品には、この手は使えないことが多い。使えるとすれば、もともとPDFで提供されている技術書などを、PDFビューアを使って読む場合だろう。

横書き・左綴じの本ならば、ページが横幅いっぱいになるよう拡大し、縦スクロールで読む手もある。なかなか快適だ
ただしこれはPDFビューアの話。電子書籍ストアアプリで購入したコンテンツだと、このように強制的に見開き表示にされてしまうことが多く、実用的ではない

 ちなみにスクロールによる閲覧が多いのであれば、同じiPhone 14シリーズでも、上位のProモデルのほうが有利だ。というのもProモデルの2製品(iPhone 14 ProおよびiPhone 14 Pro Max)は、ProMotionテクノロジーに対応しており、リフレッシュレートが最大120Hzだからだ(iPhone 14および14 Plusは60Hz)。

 高速にスクロールしながら文字を目で追っていて酔いそうになった経験のある人は、リフレッシュレートが高いProモデルを選んだほうが、目が疲れずに済むだろう。電子書籍に限らず、Webページを上下に高速でスクロールしながら目で追いたい場合にも向いている。

iPhone 14 Plusはいいとこ取りのモデル?

 もうひとつ、ポイントになるのは重量だ。電子書籍は、鑑賞中の数十分間はずっと画面に触れない動画と異なり、絶えず画面をタップしたりスワイプしながら鑑賞するメディアだ。そのため多くの場合は、デバイスを手に持って操作することになる。

 スマホはタブレットに比べて軽量とはいえ、それでも片手で数十分も保持するのはつらい。特に通勤、通学中に吊り革につかまった状態での読書や、あるいは就寝前に寝転がっての読書では、もう一方の手で支えるのも難しいため、本体が軽いに越したことはない。

 そうした意味では、画面サイズが小さいモデルのほうが、一般的にボディは軽いことから、電子書籍の閲覧には有利だ。例えば6.1型のiPhone 14は172g、6.7型のiPhone 14 Plusは203gと、30gの差がある。タブレットのように500gを超えかねないデバイスで30g差であればわずかだが、200g前後のスマホにとって30g差というのは相当なものだ。

 ただし候補にiPhone 14のProモデルが入ってくると、見方が少々変わってくる。Proモデルの6.1型であるiPhone 14 Proは206g、iPhone 14 Pro Maxは240gと、Proでないモデルに比べて、それぞれ約30~40g増しだからだ。これならば、iPhone 14と比べた時に重い印象のあったiPhone 14 Plusは、相対的にはむしろ軽い部類に見えてしまう。

iPhone 14シリーズの重量比較。iPhone 14 PlusとiPhone 14 Proは実はほぼ同じ重量だ

 実際、同じ6.7型であるiPhone 14 PlusとiPhone 14 Pro Maxを持ち比べると、ズシリと重いiPhone 14 Pro Maxに比べて、iPhone 14 Plusは軽くて扱いやすいと感じるほどだ。画面サイズを取るか、軽さを取るかは難しい問題だが、今回のiPhone 14シリーズのラインナップであれば、6.7型のiPhone 14 Plusはいいとこ取りのモデルと言えそうだ。

快適な読書のためにはアクセサリも検討したい

 もともと電子書籍ユースにおいて、端末のパワーが要求されるのは、電子書籍ストアのページで大量のサムネイルを一覧表示する時などごくわずかだ。電子書籍の閲覧をメインで考えるのであれば、iPhoneのProモデルは宝の持ち腐れになりかねない。そうした意味からも、大画面のiPhone 14 Plusはおすすめといえる。

 ただしどの製品を選んだ場合にも言えることだが、片手持ちの機会が多いならば、スマホを指に引っ掛けて持てるグリップやリング、あるいはストラップの導入を検討したい。これらの選び方次第では、手への負担を抑え、重量があるモデルでも軽く感じられるようになるからだ。こうしたアクセサリが豊富に存在することは、iPhoneのひとつのメリットだけに、使わない手はない。

 読書時の姿勢は人によってまったく異なり、就寝前に読むのが習慣になっていて常に横を向いて読んだり、頭上にかざして読む場合も多い。こうした利用スタイルも考慮しつつ、最適なアクセサリをチョイスすれば、比較的重量のあるProモデルを選んだ場合でも、快適な電子書籍ライフを送れるはずだ。

保護ケースのカメラ穴とスピーカー穴を使って一周させるタイプのスマホベルトは、読書時に本体をバランスよく支えるのに最適。装着したままMagSafeが使えるのも利点だ