使ってわかるCopilot+ PC

第25回

IntelやAMDのCPUを搭載した「Copilot+ PC」は現状手に入るのか?

2024年後半から2025年に対応予定。ただしデバイスや地域によって異なる

「Copilot+ PC」のWebサイト

「Copilot+ PC」対応PCは今どうなっているのか

 2024年6月に登場した「Copilot+ PC」は、40TOPS以上の性能を持つNPUを搭載していることが要件となっている。当時はQualcomm製CPUのSnapdragon Xシリーズを搭載した製品だけがこの要件を満たしていたが、現在はIntel製やAMD製のCPUにも要件を満たすものが存在する。

 ではIntelやAMDのCPUを搭載した「Copilot+ PC」は、2025年1月の本稿執筆時点で入手できるのか? また何がどうなると「Copilot+ PC」と呼べるのか? この辺りを確認していきたい。

対応しているPCを確認

 「Copilot+ PC」のハードウェア要件はマイクロソフトのWebサイトに書かれている。

 これによると、40TOPS以上の性能を持つNPUに加え、Windows 11に互換性のあるCPU(SoCを含む)、16GB以上のDDR5/LPDDR5メインメモリ、256GB以上のSSD/UFSが必要とされている。

 CPUについては、一般的に入手できるIntel/AMD製のCPUはx64アーキテクチャなので、Windows 11が動作する。その上で、40TOPS以上のNPUを搭載している製品は下記のとおり。

  • Intel:Core Ultra 200Vシリーズ
  • AMD:Ryzen AI 300シリーズ

 Intel製CPUでは、Core Ultra 200Vシリーズが要件を満たす。この製品は2024年9月に正式発表されたもので、Lunar Lakeという開発コードネームでも知られている。

Core Ultra 200Vシリーズ

 今年1月には、Core Ultra シリーズ2の新製品が発表されたが、200Vシリーズ以外の製品はいずれもArrow Lakeという開発コードネームのもので、NPUの性能が40TOPS未満となっているため、要件を満たさない。

 AMD製CPUでは、Ryzen AI 300シリーズが要件を満たす。製品にAIという文字が入っているため見分けやすい。同社の製品では以前からNPUを搭載したものがあるのだが、それらはNPUの性能が40TOPS未満であるため、要件を満たさない。

Ryzen AI 300シリーズ

 こちらも今年1月、Ryzen AI Maxというシリーズ製品が新たに発表された。NPUの性能は既存のRyzen AIシリーズと同等で、こちらも要件を満たしている。よってRyzen AIという名前を頼りに探せばいい点には変わりない。

Ryzen AI Maxシリーズ

 Core Ultra 200VシリーズとRyzen AI 300シリーズ(Maxを含む)は、いずれもモバイルPC向けの製品となっており、基本的にはノートPCに採用されている。またミニPCやポータブルゲーミングPCでも採用されているものがある。

 再び要件を確認しよう。メインメモリについては、Core Ultra 200VシリーズはCPUとメインメモリがパッケージ化されており、16GB以上のLPDDR5が必ず搭載されているので、要件を満たす。Ryzen AI 300シリーズはDDR5またはLPDDR5を使用するため、容量が16GB以上であれば要件を満たす。

 SSD/UFSについては、CPUとは無関係の要件なので、製品ごとに確認する必要がある。ただ、256GB未満のSSDを搭載したノートPCは昨今ほぼ見当たらないので、まず問題はないだろう。

 ということで、CPUがCore Ultra 200VシリーズまたはRyzen AI 300シリーズであれば、「Copilot+ PC」のハードウェア要件を満たすと言っていい状況だ。

Intel/AMDの対応PCはいつ入手できるのか?

 次は、そもそも「Copilot+ PC」とは何かという定義である。優れたAI機能を持つPC、という曖昧な説明が多いのだが、どうやら「Copilot+ PC」でのみ使用可能なAI機能が使えるPC、と見るのが正しいようだ。

 具体的な内容は、先のハードウェア要件が書かれたWebサイトに、『次の機能は、Copilot+ PC でのみサポートされています』として書かれている。「ペイント」で使える「コクリエイター」や、「ライブ キャプション」など、本連載で紹介してきた「Copilot+ PC」のAI機能がこれに該当する。

 ではCore Ultra 200VシリーズまたはRyzen AI 300シリーズを搭載したPCであれば「Copilot+ PC」なのかというと、どうもそうはいかないようだ。2024年12月6日時点で、Windows 11 Insider PreviewのDevチャンネルに向けて、「Copilot+ PC」のAI機能が提供されている。

 つまりこの時点では、Core Ultra 200VシリーズまたはRyzen AI 300シリーズを搭載した通常の(Insider Previewではない)Windows 11のPCでは、「Copilot+ PC」のAI機能は利用できない。

 ではいつ、どのPCで「Copilot+ PC」が使えるようになるのか。既に発売されているCore Ultra 200VシリーズまたはRyzen AI 300シリーズを搭載したノートPCを見ると、「Copilot+ PC」と名乗っているか、あるいは「Copilot+ PC」に対応予定と書かれているものが多い。これらはいずれ「Copilot+ PC」になる予定のPCである。

 それがいつかという情報は、マイクロソフトのWebサイトにある。その部分を抜粋しよう。

2024年後半から2025年にかけて配信されるWindowsの無料アップデートにより、AMD Ryzen AI 300 シリーズおよび Intel Core Ultra 200V搭載デバイスでCopilot+ PCエクスペリエンスをご利用できるようになります。提供開始の時期は、デバイスや地域によって異なります。

Copilot+PC を購入する:新しい時代の Windows AI PC とノート PCより引用

 対応するにはWindowsの無料アップデートが必要になるが、時期は2024年後半から2025年と幅が広い。また提供時期はデバイスや地域によって異なるとしている。デバイスによるのはともかく、地域によっても異なるというのが気になる点だ。

 例えば「Copilot+ PC」の機能の1つである「ライブ キャプション」は、日本語を含む44言語を英語字幕に翻訳できる。対応言語は随時追加されているが、英語以外への翻訳機能がまだ実装されていない。こういったものも地域差の1つと考えると、日本向けの対応は英語圏より待たされる可能性もある。

「Copilot+ PC」の選び方

 Intel製、AMD製CPUを搭載した製品が、いつ「Copilot+ PC」対応するかは、『デバイスや地域によって異なります』というのが答えになる。ただしSnapdragon Xシリーズを搭載したPCであれば、今後発売される製品を含めて既に対応している。

 今すぐ「Copilot+ PC」を使いたければSnapdragon Xシリーズを搭載したPCを選ぶ。急がないのであればCore Ultra 200VシリーズまたはRyzen AI 300シリーズを搭載したノートPCも選択肢に入る。ただし、搭載したPCが全て「Copilot+ PC」になってくれるかどうかは不明なので、対応をうたう製品を選んでおくことをおすすめする。

 現状では、「Copilot+ PC」と書かれている製品を買っても、実際にはまだ対応しておらず、「Copilot+ PC」向けのAI機能を使えないという状況が起こり得る。対応しているかどうかは製品と時期によるので、メーカー各社には対応した際、大々的に発表して欲しいところだ。

 何ともややこしい話なのだが、CPUがx64とARMという異なるアーキテクチャでも、NPUを用いた共通のAI機能を提供しようというのが「Copilot+ PC」の方向性なので、多少の時期の違いや混乱はやむなし……とも言える。その混乱の解決に、本稿が少しでも手助けになればと願う。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/