使ってわかるCopilot+ PC

第5回

「Copilot+ PC」の画像生成AI「Cocreator」に肌色多めのアレな絵を描かせてみたら……?

担当編集の深き煩悩はかなえられるのか

「Copilot+ PC」の1つ、「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」

画像生成AIでアレしましょう

 筆者がやりたいと言ったわけではないのです。担当編集がどうしてもと言うからです。

 今回はタイトルのとおり、アレであります。VHSビデオが覇権を握ったのもアレのおかげという説もあり、アレが技術革新にとって極めて重要なものであることは歴史が語っています。

 「Copilot+ PC」のAI機能の1つに「Cocreator」があります。「ペイント」に付加されたもので、下絵に対してプロンプトと呼ばれる指示語を与えることで、AIが新たな絵を描き出します。

 絵心がない人にも絵が描けるというのは夢が広がります。そうすると、自分が欲しいアレをAIに描いてもらいたい、という欲求も人として避けられないものでありましょう。人々の欲求が技術革新を生むのです。

 前置きは以上です。アレに行きましょう。

おなじみ「ペイント」で使える生成AI

 まずは「Cocreator」がどんなものかの説明から。「Copilot+ PC」で「ペイント」を起動したら、右上の方にある[Cocreator]ボタンをクリック。するとウインドウの右側に[Cocreator]と書かれた枠が新たに作られます。

 メインのキャンパスに下絵となるものを描いたら、[Cocreator]側にある[作成する画像の説明]の欄に、どのような絵を描きたいかを文字で入力します。他のAI画像生成では英語の入力のみというものも多いですが、ここでは日本語も理解してくれます。試しにやってみましょう。

 キャンパスの上部をオレンジ色、下部を灰色に塗り、下部にはさらに濃いめの色を適当に足します。そして[作成する画像の説明]に「夕焼け空とビル群の写真」と入力。数秒待つと、[Cocreator]の枠に画像が生成されました。

左側のキャンパスが下絵、右側の小さな枠にある絵がAI生成のもの

 写真というほどリアルではないですが、概ね指示通りではないかと思います。生成された画像をクリックすると、キャンパス側に画像を移せます。

AIが生成した画像をキャンパスに移動した

 ほかには[スタイル]を選択すると、水彩画や油絵、ドット絵など、描き方の特徴を指定できます。また[創造性]の数値を変更すると、AIがどのくらい下絵に対して手を加えるか、AIの独創性を許すかという設定もできます。

 [創造性]は標準では70になっており、最大の95まで上げると下絵をほぼ無視した絵ができますし、最低の6にするとほぼ下絵のままになります。同じ下絵でも、独創性を少し上下させるだけで違う絵を生成するので、思ったものが出ない時には[作成する画像の説明]を変更するのに加えて、[創造性]も変えてみるのがおすすめです。

下絵をベースに、手軽にいろんな絵を生成できる。こちらは生成した絵をキャンパスに出したところ。右上にあるような下絵に「子猫」という指示を与え、[スタイル]で「インクスケッチ」を選んだだけ

 本機能のポイントとしては、必ず下絵を参照します。キャンパスに何も描かれていない状態では、[作成する画像の説明]に何を書いても絵を描いてはくれません。1ドットの点でも打てばAIが動き出しますが、下絵を参照することには変わりないので、想定したものがあるなら、何かしら下絵を用意した方がいいでしょう。絵心がなくても何とかなります。

下絵とテキスト指示でアレを生成する

 ではアレをやってみましょう。肌色の棒人間を描いて、[作成する画像の説明]にド直球な言葉を入れてみます。

こうなる

 「画像を生成できません」という注意とともに、「高品質なコンテンツを生成できませんでした。説明を変えてやり直してください」という英文の警告が。では下絵はそのままに、指示をマイルドにしましょう。

説明を変えてみた

 今度も画像は生成できず、コンテンツの警告が日本語に変わりましたが、やはり生成できないままです。では下絵の方にも手を加えて、背景を水場っぽい感じに。指示もさらにマイルドに変えます。

ついに絵が生成された

 下絵がちょっと丁寧に描かれたような感じのものが出てきました。では[創造性]をさらに高めれば、指示した絵がもっとリアルになるのでは?

[創造性]を最大にしたところ

 すると再び「画像を生成できません」のメッセージ。同じ下絵と指示でも、[創造性]を上げることで生成できなくなってしまうようです。

 では下絵に水着っぽいものを描いて、なおかつ指示も全然違うものにしてみましょう。もう下絵も説明もアレな感じではありません。

下絵を水着っぽくして、説明も変えた

 水泳競技のイメージイラストかな? といった絵ができました。なかなか実用的でいいのではないでしょうか。アレではないですが。ならばここで再び、[創造性]を最大にしてみれば、リアルな水着姿の絵が出てくるのかも?

[創造性]MAX

 するとまたもや「画像を生成できません」。この挙動を見るに、AIの内部的には絵を描きつつ、生成画像がセンシティブだと判断したら表示しないという判定をしているようです。たとえ水着であっても、肌色成分が多いとNGみたいな判定なのでしょうか。

 また警告が英語の時には、テキストの指示の時点でセンシティブ判定を受けているのかもしれません。

 しかしAIがちょっとわかる筆者、この程度では諦めません。次は[作成する画像の説明]に魔法の言葉を加えてAIを手なずける作戦です。

こう指示する

 単に指示が増えてノイズが乗ったことで描き出した、みたいな感じもしないでもないですが。ここから説明にも手を加えつつ[創造性]を高めてみましょう。

おっと……?

 法的・倫理的な問題があるとは言いませんが、窓の杜ではお出ししない方がいいのでは、という感じのものが。しかし[創造性]をちょっといじったら警告表示に変わったりして、安定して描いてくれる感じではありません。もうちょっと指示を増やしたり変えたりしてみます。

日本人女性という指示を追加。なるほどこういう方向性になる
[創造性]を上げるとアニメっぽくなった。日本人というワードで引っ張られていそう
部分的にセンシティブさがあるものの、絵としては破綻している

 まだまだアレな方向に詰めることはできそうですが、やはりガードが相当固いのは間違いなさそうです。直球で攻めてもまず無理でしょう。プロンプトエンジニアリングスキルを磨く必要がありますが、その努力は別のことに向けた方が有意義だと思います。

 今回のテストで感じたことは、生成AIにアレのパワーが注がれた結果、アレを避ける技術が進歩しているのだなということです。それも1つの技術革新だなと思うと同時に、「Cocreator」を子供に使わせても大丈夫だろうという安心感もあります。

 「Cocreator」の生成AIを実用的に活用できるかどうかは別途検証が必要ですが、子供を含め、初心者にAIとは何たるかを教えるにはよい教材であろうと思います。「Copilot+ PC」のAI機能としては最も親しみやすいものなので、PCを入手した際にはぜひお試しいただければと思います。

写真を下絵にしてAIに描かせることも可能。なかなか想定外で面白い結果になる(写真は20年近く前の筆者)
著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/