使ってわかるCopilot+ PC

第6回

「Copilot+ PC」のAIはインターネット接続を切っても使えるのか?

NPUを使う機能をインターネット未接続で試してみた

「Copilot+ PC」の1つ、「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」

NPUによるローカルAIをインターネット接続なしで動かす

 AI機能には大きく分けて、ローカルで実行されるものと、インターネット経由で利用するものがある。「Copilot+ PC」は、AI処理を専門にしたNPUを搭載しているのが特徴で、ローカルでAI処理できるのが強みとなっている。

 ということは、NPUを使って処理するAI機能は、インターネット環境がない場所でも利用できるはずだ。いったいどういう状況でそれが必要になるのか、というのはいったん置いておいて、「Copilot+ PC」のAI機能をインターネット接続がない状況で試してみよう。

画像生成「Cocreator」

 テスト環境は、マイクロソフト製の「Copilot+ PC」で、SnapDragon X Plusを搭載した「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」。Wi-Fiの利用設定をオフにして、インターネット接続ができない状態にしておく。

 まずは画像生成AI「Cocreator」から試す。「ペイント」を起動して、「Cocreator」ボタンをクリックすれば、利用準備が整う……はずだったのだが、いつもと違う画面が表示された。

 「Cocreator」のスペースが表示されるはずの場所には、「Microsoftアカウントが必要です」の文字が。Microsoftアカウントでサインインしないと「Cocreator」は使えないというのだ。

Microsoftアカウントでのログインを求められた

 そこで、いったんインターネット接続を回復させて、Microsoftアカウントでログイン。「Cocreator」のスペースが正しく表示されたのを確認してから、再びインターネット接続を切り、下絵を描いて指示テキストを入力してみた。

いったんインターネット接続して、Microsoftアカウントでログインすると、いつもどおりの画面に

 すると今度はウインドウの右下部に「Cocreatorにはインターネット接続が必要です」という警告が出た。最初のアカウントチェックだけでなく、利用する際には常にインターネット接続が必要になるようだ。

再びインターネット接続を切断して画像生成を試そうとするも、使わせてもらえない

 この理由としては、最初に「Cocreator」を起動した際に出た案内文に、「AIの安全性とセキュリティの目的で、Cocreatorとのやり取りに関する情報を収集します」と書かれている。Microsoftの説明によると、画像生成はNPUを使ってローカルで行われるが、指示テキストや生成画像が倫理的な問題を含まないかどうかという安全性の担保は、Azureオンラインサービスを用いた独自のハイブリッドアプローチで行われるという。ローカル処理の判定で安全性を担保するのは難しく、やり方としては理にかなっている。

 ただ、今回のテストに関しては残念な結果となった。「Cocreator」の画像生成にNPUを使用していることは確かだが、インターネット接続も必要になるということだ。

カメラ映像加工「Windows スタジオ エフェクト」

 次はカメラ映像をAIで加工する「Windows スタジオ エフェクト」を試す。こちらの利用方法は本連載の第3回で書いているとおり、タスクバーにある[クイック設定]を開き、[スタジオ効果]を選ぶ。

 さらにこれ以外の利用方法として、Windowsの設定から、[Bluetoothとデバイス]、[カメラ]と進み、使用しているWebカメラを選択。カメラのオプション項目で「Windows スタジオ エフェクト」の機能を選んで使用できる。今回はこちらで試してみよう。

 結論から言うと、インターネット接続がない状態でも問題なく使用できた。エフェクトを可能な限りかけ、NPUが50%近く使用されているのも確認したが、インターネット接続はされていない。

 インターネット接続がない環境で、PCのカメラを使ってメッセージ動画を撮影する際に、画像を適切に加工した上で録画できる……というような用途は想像できる。

「Windows スタジオ エフェクト」はインターネット接続なしで問題なく動作した

文字起こし&翻訳「ライブ キャプション」

 最後はAI音声読み取りに英語翻訳機能を組み合わせた「ライブ キャプション」。タスクバーにある[クイック設定]を開き、[ライブ キャプション]を選ぶと、画面上部に半透明のウインドウが表示される。ここに文字が表示される。

 今回はウインドウの位置やサイズを見やすく変更し、音声はマイク入力を使用して、筆者の日本語での発言を読み取り、かつ英語翻訳させた。

 結果はこちらも問題なく動作した。筆者が風邪で喉をやられていて発音が悪かったせいか、読み取り精度がやや悪かったのだが、これはインターネット接続の有無とは無関係だ。

 ローカルに保存した音声や動画のファイルをリアルタイムに字幕表示したり、英語翻訳させたりといった使い方が考えられる。ただし本機能には外国語を日本語へ翻訳する機能はまだなく、また出力されたテキストを保存する機能もない。この辺りが充実してくると、情報漏洩の心配もなく使える翻訳ツールとして活躍してくれそうだ。

「ライブ キャプション」もインターネット接続がない環境で動作。NPUにはかなり余裕がある

基本的にローカル実行可能だが、インターネット接続が必要な事情も

 以上、「Copilot+ PC」で現在使用できる主な3つのAI機能でテストしてみた。「Cocreator」はインターネット接続が必須で、それ以外は不要という結果になった。

 「Cocreator」は生成画像の安全性の担保という目的があるので、あえてインターネット接続を必須にしている。画像生成自体はローカルで動作しているので、純粋に機能的な都合を組み入れたものだ。

 それ以外の機能に関しては、問題なくローカルで実行できている。特に音声認識と文字起こし、翻訳を行う「ライブ キャプション」がローカルで動作しているのは未来感がある。NPUの処理能力としても数%程度しか使っておらず、かなり余裕がある状態なので、日本語への翻訳など機能面の充実が待たれる。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/