使ってわかるCopilot+ PC

第7回

「Copilot+ PC」でAI機能を使うとバッテリ消費はどのくらい変わる?

「Copilot+ PC」の1つ、「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」

AI処理を使うとバッテリの持ちは変わるのか?

 「Copilot+ PC」はAIに特化したNPUを搭載することで、高度なAI処理を可能としている。それと同時に、AI処理を省電力で実行できることも売りにしている。

 実際のところ、NPUを使うことで、バッテリの持ちにはどの程度の影響があるのだろうか。NPUを使用した場合としなかった場合で、実機のバッテリ持続時間を計測してみた。

 「Copilot+ PC」のNPUを使うAI処理はまだ登場したばかりで、ソフト・ハードの両面で進化の途中にある。今後もAIの性能や効率が上がっていくはずなので、今回のテストはあくまで現状ではこうだという情報として見ていただきたい。

NPUを使うとバッテリ消費はどうなる?

 テストは以下の形式で行う。

  • 使用機材は「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」
  • 「PCMark 10」の「Battery」を「Idle」で実行し、動作時間を計測
  • 「カメラ」アプリを起動し、「Windows スタジオ エフェクト」でAI機能を使用
  • 「ライブ キャプション」で英語翻訳設定にし、マイク入力をオンにする
  • 画面の明るさは50%

 この設定で人物が映り込んでいると、NPUの使用率は50%程度になる。ただし「Surface Laptop 13.8インチ(第7世代)」はフルHD/24fpsの動画を再生しながら最大20時間もバッテリが持つとされているので、バッテリが切れるまで筆者がカメラの前に居座るのは厳しい。

 そのため、本機のカメラは筆者の部屋の何もない方に向けておく。この場合だとカメラ映像の変化がなく、NPUの使用率は18%でほぼ固定されている。今回はこの状態でバッテリテストを行う。

NPUを使わせて放置するテストはこんな感じ。NPU使用率は約18%

 NPUを使用しない場合は、下記の点を変更する。

  • 「カメラ」アプリを起動し、「Windows スタジオ エフェクト」のAI機能は使わない
  • 「ライブ キャプション」で日本語表示設定にし、マイク入力をオフにする

 こうすることで、それぞれのAI機能の動作が止まり、NPUを使用しない状態になる。CPU使用率はNPU使用時とほぼ変わらず5%程度だった。

NPUを使う機能を切ると、NPU使用率は正しく0%になる

 以上の条件でテストを行う。なおアプリを一切起動しないアイドル状態でのバッテリ計測も合わせて実施した。

【テスト結果】
  • アイドル状態:28時間21分
  • NPUなし:11時間24分
  • NPUあり:8時間5分

 結果を見ると、CPUを使用していない状況ではおよそ11時間半、NPUを18%使用した状況ではおよそ8時間となった。持続時間の差は、NPUを使用している場合で30%ほど短くなっている。バッテリ持続時間が非常に長いため、あまり何度も追試はできていないのだが、別の試行でもだいたいこれに近いデータは出ている。

 NPUを使用した分、バッテリ消費が増えるのは当然だ。「SnapDragon X」に搭載されたNPUではこのくらいの差が出る、というデータである。

Teamsを使って短時間の実験

 次にWeb会議ツール「Microsoft Teams」を使用した比較も行った。バッテリが100%充電された状態から「Teams」を起動し、1人会議を1時間実行するという形のテストになる。今回は筆者が常にカメラに写り込む形を取った。

 設定は2種類。1つは「Teams」内蔵の画像フィルターを用いて、[ぼかし]、[明るさの調整]をオンにする。もう1つはそれと似た機能として、「Windows スタジオエフェクト」で[標準ぼかし]、[ポートレート ライト]をオンにする。前者はCPU処理、後者はNPU処理である。

「Teams」内蔵の画像フィルターを2つ適用
「Windows スタジオエフェクト」の機能も2つ適用する

 実行中の負荷を見ると、「Teams」内蔵の画像フィルターではCPU使用率が6%程度を基本に、少し上ぶれすることが時々ある。対して「Windows スタジオエフェクト」では、CPU使用率は安定して6%をキープしつつ、NPUを4%程度使用している。

「Teams」内蔵の画像フィルター使用時、CPU使用率は6%をベースに、時々上に振れる
「Windows スタジオエフェクト」使用時は、NPUは4%程度、CPUは6%程度使用

 テスト結果は以下のようになった。

【テスト結果】
  • アプリ内蔵の画像フィルター(ぼかし、明るさの調整):残り93%
  • Windows スタジオエフェクト(標準ぼかし、ポートレート ライト):残り89%

 こちらは「Teams」内蔵の画像フィルターを用いた方が省電力という結果になった。ただしこれらは全く同じ画像処理ではなく、ぼかし効果は「Windows スタジオエフェクト」の方が高品質に処理している。ともかく、AIを使ったからといって必ずしもバッテリ持続時間にポジティブなわけではなく、あくまで処理負荷によるということがわかる。

 最初にお伝えしたとおり、NPUを使用するAI機能はまだ始まったばかりの段階であり、今後の進化が期待される。AIアプリの高機能化と省電力化が進めば、今回のテスト結果もNPU有利な方向に変わっていくだろう。希望的観測を含むことは否めないが、期待感を込めて状況を見ていきたい。

著者プロフィール:石田賀津男(いしだ かつお)

1977年生まれ、滋賀県出身

ゲーム専門誌『GAME Watch』(インプレス)の記者を経てフリージャーナリスト。ゲーム等のエンターテイメントと、PC・スマホ・ネットワーク等のIT系にまたがる分野を中心に幅広く執筆中。1990年代からのオンラインゲーマー。窓の杜では連載『初月100円! オススメGame Pass作品』、『週末ゲーム』などを執筆。

・著者Webサイト:https://ougi.net/