#モリトーク

第62話

オンラインソフトで振り返るRSSの歴史

 “Google リーダー”がアメリカ時間の7月1日にいよいよ終了する。それに伴い、人気RSSリーダーのひとつで、“Google リーダー”との同期機能を搭載する「FeedDemon」も先週20日にその開発が終了し、同機能を削除した最終バージョンが公開された。また、“Google リーダー”の代替サービスとして名乗りを上げていた“Feedly”が、“Google リーダー”への依存を断ち切り、先週19日から独自のサービスを開始している。このように転換期を迎えたRSSリーダー、その歴史をオンラインソフトの視点で振り返ってみよう。

「Headline-Reader」

 RSSが一般に広く普及し始めた時期は、ブログサービスの普及とほぼリンクしていると見て差し支えないだろう。ほとんどのブログサービスでは、記事の投稿と同時にRSSが自動で配信されるため、オレンジ色のアイコンをよく見かけるようになった。ただし、それは技術としての普及であり、実用されるようになったのはもう少し後だと思われる。

 ブログだけでなく、ニュースサイトなどもRSSの配信を開始すると、それらの情報を集めるためのRSSリーダーが徐々に登場し、読者側もRSSを活用するようになる。そのなかでもとくに有名だったソフトが「Headline-Reader」であり、その作者の大倉氏が「Sleipnir」のフェンリル社に加わることで、現在の「Sleipnir」へとつながっている。

 単体のRSSリーダーが登場する同時に、2004年5月公開の「Opera」v7.50、2004年11月公開の「Firefox」v1.0、2005年1月公開の「Lunascape2」、2005年10月公開の「Sleipnir」v2.00、2006年11月公開の「Internet Explorer 7」といった順番で、各種WebブラウザーもRSSリーダーを標準で搭載。それまでヘビーユーザーを中心に利用されていたRSSが、一般ユーザーへも広まっていく。

「NewsFox」

 すると、単体のRSSリーダーもさらに盛り上がり、さまざまなタイプのソフトが登場した。たとえば、「Internet Explorer 7」の公開が遅れたこともあって、「Internet Explorer(以下、IE)」と連携するRSSリーダーの開発が活発だった。「ExplorerBarPlus」「RSSクリップ」は、エクスプローラバーにRSSリーダー機能を追加するIEプラグインであり、「FR9」はIEのお気に入りとしてRSSを取り込むソフトだ。

 また、WebブラウザーにRSSリーダーが標準で搭載されたあとでも、プラグインや拡張機能によってRSSリーダー機能を追加・強化するパターンが好まれた。とくに「Firefox」用の拡張機能「NewsFox」は、単体のソフトに匹敵するほどのRSSリーダーであり、今でも人気が高い。ほかにも、「Becky! BlogReader プラグイン」「PopRss」「Windows Live メール」など、メールソフトでRSSを受信する手法も多数見られた。

“Google リーダー”利用者数の推移グラフ(Google社のブログより引用)

 “Google リーダー”が正式版へ移行したのは2007年9月のことで、この時期以降になると、新作RSSリーダーの登場頻度が鈍化し始め、窓の杜がそれを取り上げる頻度も減少していった。つまり、RSSそのものへの関心が低下傾向にあったと思われるが、それ以上に“Google リーダー”の人気は上昇していく。これは、「Google Chrome」の存在が影響しているかもしれない。

 2008年9月に初のベータ版、2008年12月に初の正式版が公開された「Google Chrome」は、主要なWebブラウザーのなかで唯一、RSSリーダーを標準で搭載していないため、そのユーザーが“Google リーダー”を利用するという図式を生んだ可能性がある。Google社が発表した統計によると、“Google リーダー”のユーザー数は2008年後半から急激に伸びており、「Google Chrome」の登場時期とも一致する。

 “Google リーダー”はこれまで、RSSリーダーのひとつというよりも、インフラとして利用されてきた。スマートフォン環境では多数の“Google リーダー”用クライアントが公開されており、そのユーザーはデスクトップ環境との同期を狙っている。しかし不思議なことに、“Google リーダー”と同期できるWindows用クライアントは「FeedDemon」くらいしかなかった。また、“Google リーダー”からデータをインポートするだけでよいとしても、現役で開発が続く本格的なRSSリーダーはもはや「Sleipnir」くらいだ。

 “Google リーダー”の代替サービスとして最有力視されている“Feedly”は、外部アプリケーションがアクセスするためのAPIを用意している。これを機に、Windows環境でもRSS関連のアプリケーションが再び盛り上がることを期待したい。

(中井 浩晶)