杜のVR部
第80回
Oculus Riftの現状とこれから
VRブームの立役者の実力は如何に?
2016年7月5日 15:42
VR盛り上げの立役者となったVRヘッドマウントディスプレイ“Oculus Rift”。2012年のKickstarterで話題を集め、2014年に開発・販売会社のOculusがFacebookに買収された後もVR業界を牽引してきた。2016年3月に満を持してその製品版が発売された。
しかし、Oculus Riftはその後、意外な展開を辿る。世界中の予約購入者が到着を今か今かと待っていたが、Oculus Riftは一向に発送されなかったのだ。説明のない中、不満の声が上がりはじめた4月上旬、一部パーツの不足を理由に出荷が滞っていることがOculusより発表され、予約購入者の出荷時期は軒並み後ろ倒しとなった。筆者も予約開始後すぐに予約完了したものの、到着予定が4月上旬から5月中旬へ変更されてしまった。
こういった事情もあり、Oculus Riftのコンテンツのレビューはこれまで、ほとんど行うことができなかった。決済トラブルなども経て6月中旬、ようやく筆者の元にもOculus Rift製品版が到着した。SNSなどを見ていると、徐々に日本へも到着している模様だ。
発売から3カ月以上かかったこのタイミングではあるが、今回は改めてOculus Rift製品版を紹介したい。
高級感の漂うOculus Rift製品版、優秀な3Dサウンド
Oculus Rift製品版はこれまでの2つの開発者版と異なり、重厚な箱に入っている。手で持つことのできる取っ手も付いているが非常に重厚な化粧箱だ。
箱を開けると、Oculus Rift、トラッキング用の赤外線カメラ、リモコンとなるOculus Remote、Xbox Oneコントローラー、ケーブル、以上が収められている。その高級感ただよう佇まいは、Oculus Rift製品版がまさに“高品質な”VR体験のできる機材であることを彷彿とさせる。
なお、あまり語られていないがOculus Rift製品版にはヘッドフォンが内蔵されている。耳の上に軽く乗せるだけだが遮音性も高く、そしてなによりVRの没入感を一気に増す3Dサウンドがかなりクリアに聴こえてくる。
週1~3本の緩やかなペースだがクオリティの高さに期待できるコンテンツ
Oculusの提供するプラットフォーム“Oculus Home”では、実際に体験できるコンテンツがローンチ当初の30タイトルから、毎週1~3本程度の緩やかなペースでリリースが行われている。また、Oculus Rift製品版はSteamVRを利用できるため、Steamでも対応タイトルが増えている。こちらはトータルで週4~5本程度のリリースだ。
Oculus Homeに登場するコンテンツの作りこみやクオリティはHTC Vive向けの物に比べると総じて高い印象はあるが、コンテンツのバリエーションという意味ではまだまだこれからだ。
直近では、Crytekの山登りゲーム「The Climb」やInsomniac Gamesの3人称サバイバルホラーアクションゲーム「Edge of Nowhere」など、実績のあるゲームスタジオが開発した大作とも言える意欲作がリリースされている。
Ubisoftからは、パリの上空を駆けまわる「Eagle Flight」、敵に乗り移りながら戦うFPS「Damaged Core」などが開発中でリリース予定とされている。両ゲームともGDC2016で体験したが、非常に楽しい独特のプレイ感のゲームなのでリリースが待ち遠しい。
本命はこれまでにない体験を可能にするOculus Touch
今後もクオリティの高いゲームのリリースに注目したいOculus Riftだが、気になる点もちらほら。幅の広い眼鏡がヘッドマウントディスプレイに入らない点、装着していると鼻の頭の部分が顔にフィットせず隙間ができてしまい光が入ってきてしまう点の2点は非常に残念なところであり、何らかの改善に期待したいところだ。
そして、最も課題となるのがコントローラーだ。手を動かして直感的に体験できるコントローラー“Oculus Touch”は、まだリリースされていない状況で年内の発売と告知されている。先週の第79回でもレポートをお送りしたように、その体験で没入感は飛躍的に向上し、魔法バトルやサイバーフリスビーなどこれまでにないVRならではの異次元の体験がより実現するコントローラーと言える。
現行のXbox Oneコントローラーで体験するVRゲームはクオリティは高くともVRらしい体験かと言われると疑問符が付くものも多い。そこで本命であるOculus Touch、そして対応コンテンツのリリースが待ち遠しいところだ。