【第447回】
寄り道が楽しいギャグ系RPG「四月馬鹿達の宴」
練り込まれた戦闘システムと独特の世界観に浸れ!
(11/04/22)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームのなかから、選び抜いた良作を毎週紹介していく。今回は、ギャグを交えたユルい会話でどんどんと引き込まれていくストーリーや、属性を考慮しながら戦っていく緊張感のある戦闘が楽しいRPG「四月馬鹿達の宴」を紹介しよう。
何コレ?と思いながらも引き込まれていく独特の世界観
「四月馬鹿達の宴」は、2D見下ろし画面のフィールド探索型RPG。物語は、世界壁という場所に行き着いたものの天使っぽい人に阻まれて進めなくなった主人公“あなた”が、特殊な能力“願う”によって誰かに呼びかけることから始まる。呼びかけられたのは、少年とも少女とも見える剣士“イツキ”。イツキはひょんなことから、探偵の助手“テツロー”や川から拾い上げられた魔法少女“マナみ”と共に、世界を旅することになる。……と、非常に脈略のないストーリー展開だが、ギャグを交えたユルい会話や、鉄の国や月、黄泉など多彩な個性をもつマップ、練り込まれた戦闘システム、数多くのサブイベントなどによって、知らず知らずのうちにゲームの世界へと引き込まれ行くのが不思議で面白い。
このゲームの魅力は多岐にわたるが、そのひとつが進行の自由さだ。ストーリーは基本的に一本道で、特定の場所にいるボスを倒すといった条件をクリアして話を進めていくが、その気になればストーリーそっちのけで各地のダンジョン探索に専念もできる。各地ではサブイベントも多く、どんどんアイテムや経験値を稼ぐことも可能だ。意外な場所から、スタート地点である“曖昧な都”へ戻れたりと探検するだけでも楽しい。
属性や隊列が鍵を握る練り込まれた戦闘システム
そして、もっとも面白いと言えるのが戦闘だ。フィールド上で敵に触れるとエンカウントする方式だが敵自体は見えず、敵の位置は画面左上に表示されるレーダーで示される。戦闘システムはコマンド選択型で、ポイントになるのは属性と隊列だ。3つある属性はじゃんけんのような三すくみの関係で、“文明”→“精霊”→“信仰”→“文明”という強さの順列になっている。そして隊列は、前衛1人と後衛2人という組み合わせで、コマンド選択時にターンを消費せず何度でも入れ替えることができる。剣などの物理攻撃は前衛しか実行できず、後衛は魔法やスキルによる攻撃がメインだ。また、敵の攻撃は前衛に集中する。
そのため、防御力と攻撃力が高く、剣による物理攻撃がメインで、HPも高いイツキが前衛となるのが基本だが、ここで属性が大きく関わってくる。イツキは信仰属性であるため、精霊属性の敵からは通常の2倍ものダメージを受ける。その一方で、マナみはHPも防御力も低いが、精霊属性のため信仰属性の敵からの攻撃では通常の半分しかダメージを受けない。場合によってはマナみを前衛にしたほうが有利になるのだ。
もちろん属性は攻撃時にも関係し、得意とする属性の敵に対しては攻撃力が2倍になる。それだけに、テツローが取得できる相手の属性やHPを見破るスキル“看破”を積極活用することが大切。相手の属性に合わせて戦い方を組み立てていき、どうすれば戦闘を有利にできるのか悩むのが非常に楽しいワケだ。
また、スキルや魔法の使用は一部を除いてMPを消費するが、戦闘開始時はMPがゼロとなっており、“チャージ”コマンドを実行することで溜まっていく。強力なスキルや魔法はMPの消費も大きいため、発動には複数回のチャージが必要というリスクがつきまとう。スキルや魔法をどのタイミングで使っていくかも頭の悩ませどころだ。ちなみに、使わなかったMPは戦闘終了後にHPとしてキャラに還元されるため、ザコ敵を相手にわざとMPをためてHPを回復するという手もあるのだ。
育成も独特だ。HP、攻撃力、防御力、魔法力、スピード、MPといったステータスは敵を倒したときに獲得できる経験値を消費することでアップできる。ここまではよくあるシステムだが、経験値はお金の代わりにもなっているため、武器や回復アイテムの購入にも必要。ステータス強化ばかりしていると買い物ができなくなってしまうので注意しなければならない。
このほか面白いのが、装備すると特定の魔法やスキルが利用できるようになる武器や防具を“灰にする”ことで、そのスキルを習得できること。例えば、“ワザモノ”という剣を灰にすると、自分の必殺率を強化し敵の回避率を下げられる“零転位”というスキルを覚えられるといった具合だ。このほか、灰することで思いがけないスキルを習得できるアイテムもある。灰にした装備は消滅してしまうが、一か八かで灰にしてみるのも面白い。
散りばめられたサブイベントがゲームを盛り上げる
旅の道中では、全裸の人達が居るわ、坊ちゃん刈りの勇者が登場するわ、マナみはツンデレな上に『あ、あんたのことなんか全然心配じゃなかったんだからね! ふんだ! ふんだふんだ! だっふんだ!』などと脱力ギャグをかますわと、奇想天外なイベントが繰り広げられる。また、当たるとダメージを受ける砲撃を避けながら進むアクション性の高いマップや、敵がすべて“?”と表示されてしまう暗闇のマップなど、マップも非常に細かく作り込まれている。
さらに冒険していくうちに、あの場所はああすれば行けるようになるかも、あのボスはああすれば倒せるかも、などとちょっとずつ謎が解けていくのが楽しい。何気ない住人の会話から、それぞれの場所の意味や敵の弱点が見えてくるのは快感で、プレイヤーを世界に引き込んでいく。
このほか、アイテムの数が非常に多いのも特徴。HPの回復は主に食べ物を利用するが、キャラごとに好き嫌いがあり、同じ食べ物でも回復量が大きく異なる。キャラごとの食べ物の好き嫌いも、ゲーム中で明らかになっていく。そしてプレイヤーを飽きさせない大きな要因は、シビアな戦闘だろう。とくに強敵との戦いでは、相手の属性と攻撃方法を考慮して、どのタイミングでチャージし、スキルや魔法を発動するのか念入りに準備しないと簡単に負けてしまう。
ただし、戦闘に敗れてもその場で復活可能。HPが1になるだけでペナルティは存在しない。セーブも基本的にはどこでも実行できるので、自分なりの戦略をいろいろ試せるのが面白いところ。絶対に勝てないと思っても意外なスキルが効くなど、戦闘は試して見つける楽しさに満ちている。
そして、ストーリーの後半にはいよいよ“わたし”がイツキたちに合流。願いを叶える力をもった“わたし”が世界にどのように関わっていくのか。ユルいストーリーがシリアスに変化していくのも大きな見どころ。仕掛けがてんこ盛りのRPGだが、そのシステムや世界の全体像がだんたんと見えていくのがとても面白い。意味がわからないよ、と思いながらプレイしてると気づいたらはまっている。そんなゲームだ。
- 【著作権者】
- 西高科学部
- 【対応OS】
- (編集部にてWindows Vista/7で動作確認)
- 【ソフト種別】
- フリーソフト
- 【バージョン】
- 115(11/03/31)