週末ゲーム

第569回

自由度の高いクォータービューSRPG「LUNATIC SAGA」

14種のキャラを好きなだけ育成。ユルいシステムと世界観が魅力

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、シミュレーションRPG「LUNATIC SAGA」をご紹介する。

竹取物語がモチーフ、でも和風だけじゃないSRPG

某映画風のオープニング。これでゲームの雰囲気を察してほしい

 「LUNATIC SAGA」は、クォータービューを採用したシミュレーションRPG。竹取物語をモチーフにした和風ファンタジーの世界で、宮中のアイドル“カグヤ姫”の婿を決める“婿コン”が開催される。参加者に課せられる課題は、悪党や魔物がひしめく竹取魔城から秘宝を持ち帰ること。名乗りを上げた5人の名士の1人“クラモチオウジ”は、その財力で腕利きの傭兵を雇い、秘宝獲得を目指す。

 ……というわけで、プレイヤーキャラクターはその傭兵。とくに主人公として設定されているキャラクターが居るわけではなく、最初に使用するキャラクターを自分で作成することになる。

 キャラクターは14種類の職業から使いたいものを選ぶ。和風ファンタジーの設定通り、侍や忍者、僧侶といった職業は存在するが、西洋風の魔法使い、現代風の冒険者、銃を扱うガンナー、レスリングスーツを着たレスラーなど、何でもありな舞台設定。好みの職業と性別、名前を決めたらキャラクターが作成される。ステージには最大で6人しか出せないが、キャラクターは自由に作成して、街へ戻った時に入れ替え可能だ。

“クラモチオウジ”が傭兵を雇うところからゲームスタート。使用するキャラクターは何を選んでも構わない

 ゲームは用意された冒険のステージを順に攻略し、ストーリーを進めていく。ステージはクォータービューのマップで、キャラクターの敏捷度に応じて決められた行動順により、ユニットを動かすタイプ。ターン制ではなく、敵味方の行動順が入り混じるので、いつ誰を攻撃するかといった戦術も考えながら進める必要がある。

 キャラクターの操作は、移動して攻撃やスキルを選ぶというオーソドックスなもの。行動後にキャラクターの向きを選べるようになっており、背後から攻撃すると命中率にボーナスが付く。また武器やスキルによっては高低差で攻撃できないものがあったり、高い位置へ登るには移動力の他にジャンプ力が必要だったりする。その辺りを考慮してバトルを有利に進めていく。

行動順が来たら移動と攻撃・スキルを使用できる。先に攻撃してから移動も可能
攻撃やスキルは、効果範囲が決まっている。高低差で届かないこともあるので注意

大胆なゲームバランス、でも自由な育成が楽しい

序盤は驚くほど簡単に死ぬ。少々死んでも気にせずクリアを目指す
クリア済みのステージは、戻って何度でもプレイできる

 本作をプレイして真っ先に感じるのは、かなり大味なバランスになっているということ。例えば遠距離職が近接攻撃を受けると、序盤から簡単に一撃死する。またレベル差があるとダメージが大きく変わるため、序盤でも1つ2つステージが進むと、あっさり全滅してゲームオーバーになる。ここだけ見ると、かなり難易度の高いゲームのように感じる。

 しかし、少し遊んでいると印象が変わってくる。まずステージ攻略中に死んだキャラクターは、ステージクリア後に復活。死んだ時のペナルティもとくに無いようだ。また死んだ仲間を復活させるスキルやアイテムもある。ステージをクリアさえすれば、死んでもさほど問題はない。

 また一度クリアしたステージは再度プレイできる。キャラクターのレベル上げやお金稼ぎも好きなだけできるので、攻略中のステージが難しいと感じたら、いったん前のステージに戻ってキャラクター強化に励めばいい。時間さえかければ、かなり気楽に攻略できる。

 何より本作は、キャラクター育成が楽しい。職業はそれぞれ特徴が明確に分かれており、単純で使いやすい肉弾系もあれば、敵の妨害・弱体化専門で扱いにくいがハマれば強力なもの、バトルでは平凡だが歩いていると勝手にアイテムを拾ってくるものなどさまざま。使ってみないと、どのキャラクターがどういう能力なのかよくわからない……というのも、育成が好きな人にはむしろやり込みを楽しめるポイントと感じられるはずだ。

 キャラクターのスキルはバトルで得たポイントを使って覚える仕組みで、どのスキルを優先して取得するかによってもキャラクターの特性が変わってくる。序盤はどうしても近接攻撃が得意なキャラクターが扱いやすい(後衛職は敵が積極的に狙ってきて、さっさと死ぬので育てにくい)のだが、扱いにくいキャラクターもスキルを覚えるにしたがって『がんばって育ててよかった!』と思えてくる。稀に『こいつはどうしようもない』と感じたりするのもご愛嬌。

全滅するとゲームオーバーとなり、セーブポイントからやり直し
敵を倒したり、スキルを使ったりして経験値を稼ぎ、レベルアップ
貯めたお金で装備を購入してキャラクターを強化する。装備の種類はとにかく多彩
スキルはバトルで得たポイントを消費して覚える

 レベル12になるとクラスチェンジができ、各職業ごとに3つの上級職を選択可能。これも単純強化ではなく、とても強力な代わりにリスクがあるもの、今の職業のまま能力を特化させるもの、全く何の役に立つのかわからないもの……とさまざま。もちろんクラスチェンジ後には新たなスキルもあるので、育成の楽しみはさらに広がる。ただしクラスチェンジは1回限りで、後で変更はできない。

クラスチェンジすれば覚えられるスキルも増える。ときどき変な職業も混じっているが……

 正直なところ、筆者はシミュレーションゲームが相当下手で、育成をさせてもらえないシビアなゲームは概ね行き詰ってしまう。本作はのんびりとキャラクターを育てられるので、その点は大変ありがたい。もちろん自信のある人は、低レベルクリアを目指すなどの縛りプレイで楽しむのもありだ。

何でもありな世界観、でも妙にリアルなシナリオ

プレイヤーキャラクターは意外とよく喋る

 本作のもうひとつの見所は、シナリオだ。平安時代風の世界観で、名士達によるシリアスな戦いが……とならないのは、これまでの紹介で既にお気づきであろう。主人公は“クラモチオウジ”に忠誠を誓って、黙々と仕事をこなす存在などではない。金で働く傭兵だ。受けた仕事はきっちり果たすが、金の話に遠慮はしない連中である。

 最初は依頼通りに秘宝を求めて冒険に出かけるのだが、その先であれこれ事件が起こる。自分達と同じように雇われで働いているウサギとカエルのペアと口論の末にやりあってみたり、他の婿候補からより良い条件で引き抜きが来たりと、ただ秘宝を持ち帰るだけでは済まない。

 何せ主人公はプロの傭兵なので、雇い主がいないところでは“どうやったら稼ぎが一番増えるか”を話し合っては、時に雇い主さえ欺いて動く。いかにも荒くれ者といった口調で作戦会議(主に冒険内容ではなく稼ぎについて)を繰り広げるシーンは、裏表の顔がはっきりしていて、妙にリアルで笑えてくる。自由に作成したキャラクターの割に、ずいぶん個性的で生き生きした会話が展開され、しっかり主人公感が出ているのも面白い。

 敵キャラクターは人間ばかりではなく、ゾンビにスライム、ロボットなど何でもあり。酒場の看板に書いてある“Bamboo Get Story”は、『竹取物語の直訳かよ!』とツッコミポイントになっていたり(実際に英訳された竹取物語のタイトルは全然違う)、こまごま脱力系のネタが混じっているのがたまらない。

 作者サイトの説明に“多職業・多スキルの実験的大味クォータービューSRPG”とある通り、『細かいことを気にせず行こうぜ!』というアバウトさが、不思議と本作の魅力になっている。1マス単位の移動に頭をフル回転させるシミュレーションゲームも面白いが、たまにはこういうアバウトに遊べるものがあってもいいのでは。そんな気軽さでプレイしてみていただきたい。

シナリオに堅苦しさはない。ゲームの何でもありな感じとマッチしている
スキルも多彩で、やりこみ要素も十分。自分なりのペースで楽しんでほしい

ソフトウェア情報

「LUNATIC SAGA」
【著作権者】
エキゾチック占姥
【対応OS】
Windows(編集部にてWindows 7で動作確認)
【ソフト種別】
フリーソフト
【バージョン】
1.01(14/06/03)

(石田 賀津男)