週末ゲーム
第605回
ひたすら薬を開発する自動探索型RPG「マジックポーション・エクスプローラー」
初クリアまでのキャラ育成と、早解きや実績のやり込みで2度美味しい作品
(2015/7/24 11:00)
『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、自動探索型RPG「マジックポーション・エクスプローラー」をご紹介する。
なお、本作は同人ゲームとして頒布されており、執筆時現在はダウンロード版が購入可能。作者サイトでは体験版も公開されている。
色々な薬を開発し、ダンジョンを突き進む主人公を強化
「マジックポーション・エクスプローラー」は、主人公の少女パステルがダンジョンの最下層を目指して進んでいく自動探索型RPG。魔法の薬屋を営むパステルが『素材の調達が面倒』とつぶやくと、それを聞いた怪しい客が、パステルに断りもなく、店内にダンジョンの入り口を作ってしまう。謎の客に文句を言うべく、パステルはダンジョンの奥地へと潜っていく。
本作を開発したARTIFACTSは、「マジックポーション・ストーリーズ」というビジュアルノベル作品を手がけている。パステルはこちらの作品にも登場しており、世界観は共通している。ただしゲーム的には本作から遊んでも全く問題はない。
ゲームをスタートすると、画面左にいるパステルがダンジョンへと進入し、自動でどんどん奥へと進んでいく。途中には敵が現れて戦闘になり、パステルと敵が交互に攻撃を繰り返す。敵を倒せばRP(Resource Point)を獲得し、HPが少し回復する。また途中には薬の材料となるさまざまなものが落ちており、パステルが発見するとRPが少量増える。
パステルがダンジョンのフロアを一定量探索すると、1つ下のフロアへと移動する。もし敵との戦闘でHPが0になってしまうと、強制的にダンジョンから出されてしまい、ダンジョンの入り口からやり直しになる。とくに10階ごとの区切りのフロアには、強力なボスが待ち構えている。
プレイヤーはパステルを直接操作することはできない。パステルはダンジョンをひたすらに突き進み、出会った敵と戦い、見つけたアイテムを拾うだけだ。プレイヤーが操作できるのは、パステルに各種の薬を開発させること。戦闘などで得たRPを使って、HPや攻撃力などを上昇させる薬を開発させ、パステル自身を強化することで、よりダンジョンの奥地へと進めるようにする。
本作にはNORMALとHARDの2つの難易度があり、NORMALではHPが0になってもダンジョンの入り口に戻されるだけで、開発した薬の効果は残る。HARDでは薬の効果は消えるものの、ダンジョンに再進入する際にRPの初期ボーナスが得られる。NORMALなら、倒されても何度も挑戦していれば、いつかはゲームをクリアできるというバランスになっている。
何から開発すれば効率的かを考える
RPを使って開発できる薬は、HPや攻撃力上昇のほか、攻撃回数増加、敵を倒した時に回復するHP量の増加、獲得できるRPの最大量増加や獲得RPへのボーナス付与など、全部で15種類ある。また薬にはそれぞれレベルがあり、より多くのRPを消費することで薬をレベルアップさせ、効果を高めることもできる。
プレイヤーが手を出せるのは、この薬の開発の部分だけしかない。HPが減ってきたからといって回復アイテムを出せるわけでもない。先へと進むためには、なるべくダメージを受けずに敵を倒してHPを回復させたい。しかしダンジョンの奥に進めば進むほど敵も強くなり、大きなダメージを受けやすくなる。
薬の開発においては、RPをいつどう使うかはプレイヤーの選択に委ねられている。安定したHP回復を得るために、敵をすばやく倒すべく攻撃力を上げるのか、倒した後のHP回復量を増やすのか。攻撃力を上げるにしても、単発威力を上げるのか、攻撃回数を増やすのか。パステルは勝手にダンジョンの奥へと進んでしまうため、得られるRPも有限になる。であれば、先にRPのボーナスを増やして先々の開発を楽にしたい。
こういうさまざまな考えの中から、パステルの状態やダンジョンの進行度を見つつ、その時その時で適切に選択していく。薬のレベルを上げるのに必要なRPは、レベルが高くなるほど増えていくので、より少ないRPで開発できる薬を選ぶという選択肢もある。しかし敵を一発で倒せるほど攻撃力が強い時に、さらに攻撃系の薬を得る必要はないので、あえて貯めておいて他で使うということも必要になる。
最初のうちは何を開発すればどう強くなるのか、今何が必要なのかが見えてこないが、ある程度遊んでいるうちに薬を開発するポイントが見えてくる。ステータスの画面を開くと、攻撃力やHP回復量、RPボーナスといったデータがすべて計算式で表示されているので、何を開発すればどれだけ強くなるのかは計算すればわかる。
あとはコツさえ掴んでしまえば、ダンジョンで一度も倒されることなく、最深部まで進行してクリアするのは意外と簡単だ。筆者は体験版を最後までプレイした後に製品版をプレイしたが、製品版の初プレイで一度も倒されないでクリアできた。
実は本作は、序盤の開発さえ間違えなければ、一度も倒されずにクリアするのはさほど難しくはない(そのためNORMALとHARDの差は実質的になくなる)。本作はクリアすることが目的のゲームではなく、ここから新たな目標ができるんだな、ということに自然と気付かされた。
最初の手ごたえとは全く違う、繰り返しプレイの面白さ
2周目以降は、実績の達成と早解きが目標になる。早解きについては、薬の中にある“敏捷の薬”の使い方が重要になる。この薬を開発すると、パステルがダンジョンを探索するスピードが上昇する。イメージとしては、階段を1段ずつ下りていたのを1段飛ばして降りるようになる感じで、飛び越した段にある敵やアイテムはスルーしてしまう。ダンジョンの進行は早くなるが、十分な開発ができないまま下のフロアに進まねばならなくなる。
逆に言えば、“敏捷の薬”を開発しなければ、RPを潤沢に得て、パステルを十分に強化できる。これが“慣れればクリアは簡単”の仕組みだ。つまり早解きには、各フロアをギリギリ突破できる程度に薬を開発しつつ、“敏捷の薬”をできるだけレベルアップして短時間で突破する、という手順が必要になる。一度開発した薬はRPには戻せないし、1つ間違えるとHPが0になってスタート地点に逆戻りなので、開発の一手一手が非常に重要な意味を持つ。
クリア後に表示される最終評価は、クリアタイムによって決定される。ゲーム画面の左上には攻略にかかったゲーム内の日数が表示されており、ダンジョン内の進行時に時間が進んでいく(戦闘時は停止する)。クリア後のプレイでは何か得するということもないので、どのフロアではどのくらいの強化が必要かを調べつつ、繰り返しプレイするというのが本作のやり込みになる。ひとまずは最高評価のSを獲得するのが目標だ。
実績については、NORMALとHARDをクリアするほかに、NORMALとHARDをそれぞれSランクでクリアする、地下50階をHP最大値20,000以内で踏破する、などの条件がある。これは1回のプレイですべて満たす必要はないので、1つずつクリアしていっても構わない。複数の実績を一挙に取りつつクリアするという縛りプレイも面白いだろう。
最後に本作のプレイにおいて大事なことを1つ。プレイヤーは薬の開発の指示のほかに、ゲームを一時停止することと、現在の状態をセーブすることができる。パステルは放っておくとどんどん進んでしまうので、何か迷ったら一時停止して考えるといい。セーブデータは1回のプレイごとに1つだけで上書きしかできないものの、先々に大きな影響を及ぼすタイミングでの開発の前にセーブしておくと、大失敗した時にそこから再開できる。
薬を開発するだけというゲームシステムは単純で、操作もマウスのみというシンプルさなので、遊び方で悩むことはないだろう。最初はあれこれ強化しているだけで楽しいし、クリア後に実績なり早解きなりに真剣に挑むのも全く違う面白さがある。単純に見えて、面白さが2重、3重と用意されているのが素晴らしく、プレイ後の満足感もある。攻略の合間に入るちょっとした会話シーンも、案外ゆるい世界観をうまく伝えている。
プレイ時間は筆者の場合、体験版で約30分、その後の製品版で約3時間。そこからタイムアタックに挑戦すると、うまくやれば2時間を切るくらいになる。至高のSランク、さらにはその先を目指して、パステルの冒険をサポートしていただきたい。
ソフトウェア情報
- 「マジックポーション・エクスプローラー」
- 【著作権者】
- ARTIFACTS
- 【対応OS】
- Windows 7以降
- 【ソフト種別】
- ダウンロード販売 1,000円(税込み)など(体験版あり)
- 【バージョン】
- 1.02(15/07/14)