クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
引用したはずなのに怒られた
~第4章:無断で利用できる著作物を教えて!~
2016年8月10日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“ネットで拾った画像は利用できるのか”の続きとして、今回は“引用したはずなのに怒られた”というテーマを解説する。
引用したはずなのに怒られた
そういえば、友だちの話なんですけどね。
自分のブログに、他の人のブログに書いてあることを引用したら、相手の人から怒られたらしいんですよ。
あわてて消したみたいなんですけど、あれはなんでだったんだろう?
まあ、正当な理由がなくても怒る方はいますが、引用ってどういうやり方をしていたのですか?
ええっと、冒頭に『爆笑しちゃったオモシロ話を紹介するね!』と書いてあって、元ネタ全文がそのままコピーされてて、最後に『引用元:××』って書いてあったと思います。
『全文がそのままコピー』の時点でダメです。
一般に、引用として認められるには次の要素などが重要になるとされています。
- 他人の著作物を引用する必然性がある
- 自分の著作物と引用部分が明瞭に区別されている
- 主従関係が明確である(自分の著作物が主体)
- 出所が明示されている(48条)
えーっと……これ、4つとも必要なんですか?
あとは、公表作品であることや、改変してはいけないことなども注意点として挙げられます。
判例も揺れているので断言はできませんが、少なくとも全文をそのままコピーしてちょっと感想書いただけなら、主従関係が逆です。
そういうのは引用ではなく、ただの無断転載です。
怒られるのも当たり前ってことですか……。
そうです、当たり前、ですね。
最近、他のウェブサイトから無断転載したネタばかりで構成された『まとめサイト』や『バイラルメディア』などというのが流行っていますが、4つの要素をちゃんと満たした正しい引用になっている記事は、あまり見かけません。困ったことです。
『感動したらシェア』とか『爆笑したらシェア』ってやつですか。
下の方に『引用元』って書いてあるけど、あれだけじゃダメなんだ……何も考えずにシェアしてました。
そういう記事をシェアするのもダメなんです?
自分で文章や画像をコピーして公衆送信する形のシェアじゃなければ、免責される可能性はありますね。ケースバイケースです。
そうなのか……じゃあ、シェア取り消した方がいいですね。
しかし、まとめサイトやバイラルメディアって、なんでそんなことするんだろう?
1つには、人がたくさん集まるウェブサイトは、広告費が稼げるからです。
ところが、人々の注目を集めるような記事を自前で用意するには時間やお金がかかるので、他から無断拝借しているのですよ。コピーするのは簡単ですから。
うわあ……それって、他人のフンドシってやつですか。
そう言って構わないようなケースもありますね。
話を戻すと、引用というのは著作権法32条で無断利用しても良いと認められた行為ですが、引用として認められるには必然性、明瞭な区別、主従関係、出所明示などが重要です。気をつけましょうね。
はーい。
次回予告
今回の続きとして次回は“撮影禁止の建物っておかしい”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!