REVIEW（12/06/13）

　「AIRNovel」は、Adobe AIRをベースとすることで、WindowsやMacといったマルチプラットフォームでの動作を実現した無償のノベルゲーム開発環境。編集部にて、Windows Vistaで動作を確認した。本ソフトの公式サイトからダウンロードできる。

　本開発環境は、Adobe AIRベースで美しいテキスト表示を実現しており、ルビの配置方法も細かく指定可能。また、画像を使ってUIを構築したり、Flashアニメをそのまま取り込むなど、ビジュアルを重視した開発が可能となっている。さらに、後発の開発環境という利点を活かし、スクリプトの仕様は広く使われている“吉里吉里2/KAG3”風のものに、“NScripter”的な一文字マクロの仕様も取り込んでいる。ルビ振りについては、青空文庫用テキストを参考とした仕様となっており、直感的な入力が行える。制作したゲームは、非商用・商用を問わずエンジンを含め自由に配布することが可能だ。

　マニュアルやスクリプトの解説は公式サイト上にあるので、随時参照しながらやりたいことを探すとよい。またマニュアルなどを読み解く際は、サンプルゲーム「桜の樹の下には」のソースをダウンロードしておこう。縦書き・横書きや、文字のサイズや色といった書式はタグで指定する。マニュアルに情報が見つからない場合は、サンプルゲームの処理をたどり、同様の処理をしている部分を探してコピーして利用するとよい。

　実際に開発する際は、「ANBooks」という開発支援ソフトを利用する。「ANBooks」自身もAIR製となっている。

　「ANBooks」のメイン画面は、［メニュー］ボタンと作品リストで構成される。［メニュー］ボタンから表示されるメニューの［新規作成］項目で、新しいプロジェクトを作成可能。作成したプロジェクトはリストに追加される。このリストの項目をクリックすると、画面がプロジェクトの情報表示に切り替わる。

　プロジェクトの情報画面には、プロジェクトの設定や［ツール］［最初から読む］ボタンが表示される。［ツール］ボタンをクリックすると、各種操作ボタンが表示される。まずは［フォルダ絶対パスをクリップボードへ］ボタンで当該プロジェクトが保存されているパスを調べ、そのフォルダをエクスプローラで開こう。そして、この中のファイルを書き換えてゲームを制作し、［管理情報を同期］ボタンをクリックする。これでプロジェクトへの変更が反映されるので、［最初から読む］ボタンをクリックすることで、実際にノベルゲームの内容を確認できる。この繰り返しでゲームを制作していこう。

　なお、ノベルゲームの実行でエラーが生じて「ANBooks」がブラックアウトした場合は「ANBooks」を再起動しよう。また、プロジェクトへの変更がうまく反映されない場合にも再起動するとよい。

　こうして制作したノベルゲームは、WindowsやMacなどのさまざまなパソコンや、Androidなどのスマートフォンでプレイできるようになる。ただし、それらを実現するには、「Flex SDK」「AIRlib」「JDK」「Ant」などの開発環境やライブラリを別途導入する必要がある。「ANBooks」の［メニュー］－［ビルド環境設定］で開くビルド環境の設定画面からライブラリのダウンロードなどが可能だが、導入作業は専門的な知識が必要なので、マニュアルを見たりネットで調べながら行うことになるだろう。

　また、そういった複雑な作業を行わなくても済む、anbookという独自形式のファイルを出力することも可能。この出力は、プロジェクトの［ツール］ボタン以下の［anbook形式にパック］ボタンで行える。出力したanbook形式のファイルをダブルクリックすると、「ANBooks」のリストに作品が追加されて自由に読めるようになる。この方法を利用して配布することも可能だ。ただし、この場合はプレイする側にも「ANBooks」のインストールが必要となる。

　「AIRNovel」は、ビルド環境の構築に専門知識が必要だったり、デバッグの機能がまだ充実していなかったりといった部分もあるが、美しい表示でマルチプラットフォームに対応しているのは魅力的だ。現在発達中のソフトということで、今後ノベルゲームを作る際の選択肢のひとつとして考えるとよいのではないだろうか。