クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
撮影禁止の建物っておかしい
~第4章:無断で利用できる著作物を教えて!~
2016年8月12日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“引用したはずなのに怒られた”の続きとして、今回は“撮影禁止の建物っておかしい”というテーマを解説する。
撮影禁止の建物っておかしい
この間、旅行で京都に行ったんですけど、お寺のあちこちに『撮影禁止』って看板が立ってたんですよ。
あれってもしかして、お寺は『建築の著作物』だからですか?
いい発想ですが、法律的にはそうでもないのです。
というのも、建物そのものとして複製しない限り、建築の著作物は自由に利用していいのです。
同じように、屋外に恒常設置されている彫刻やブロンズ像のような美術の著作物も、自由に利用できます。
著作権法46条2項(公開の美術の著作物等の利用)
美術の著作物でその原作品が前条2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置されているもの又は建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。
1 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
2 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
3 前条2項に規定する屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
4 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
あ、そんな例外もあるんですか。
じゃあ、お寺はどういう権利があって『撮影禁止』なんて言ってるんだろう?
それは著作権ではなく、土地の所有権に基づいているかもしれませんね。民法206条です。
私的所有権絶対の原則といって、土地の所有は国家ですら容易に侵せない強い支配権なのです。
だから、立ち入りを許可する代わりに撮影禁止を守れ、という趣旨に解釈できるかもしれませんね。
それに従わないのに土地に立ち入ると、理論上は不法侵入などの責任を問われるかもしれません。
民法206条(所有権の内容)
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
ひえぇ。
ちなみに、寺社が敷地内や建物内を撮影禁止にするのは、静寂な境内をシャッター音で乱すとか、柵の中に入り込んで足跡をつけるとか、三脚で通路をふさぐなど、マナーの悪い撮影者が多いのが理由の場合もあるらしいですよ。
ああ……そういうことか。
そういえば以前、鉄道写真を撮る人のマナーを問題にしている記事を見た記憶があります。
マナーが悪い一部の人のために、他の人々がとばっちり受けるのは避けたいですよね。
気をつけないといけないですね。
ちなみに、敷地の外から撮影するなら土地の所有権は及ばないので、撮影を禁止する根拠はなくなります。
あ、そういえば『中は撮影禁止なので、外から撮りました』って注意書きしてある写真を見たことがあります。
話を戻すと、屋外に設置されている美術の著作物と建築の著作物は、無断で模写してもいいし、写真をインターネットに無断でアップロードしてもいいのです。
やったー! じゃあ早速、写真を撮りに行ってきます。
ただし、屋外に設置されている美術の著作物の写真を無断で、例えば写真集や絵はがきにして販売してはダメです。
著作権法46条2項4号(公開の美術の著作物等の利用)
専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合
そうなのかあ……がっくり。
売ろうと思っていたのね。
次回予告
今回の続きとして次回は“著作権には有効期限がある”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!