レビュー

ゲーム制作×並行世界SFノベルゲーム「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ」

パラレルワールドの自分が一堂に会する“自分オンリーイベント”へ向けてゲーム制作!?

「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ」

 「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ」は、ノベルゲーム制作を題材にしたSFノベルゲーム。全五章からなる作品で各章が個別に公開されているほか、番外編にあたる“Extra”も公開されている。それぞれ各種ダウンロードサイト等からダウンロード可能。

後輩の野之原(左)と先輩の機見さん(右)。彼女らの後押しもあってノベルゲーム制作を始める山賀だったが……

 主人公は、とある大学のオタクサークルに所属する“山賀”。同人漫画作家でもある後輩の“野之原”や先輩のポスドク“機見さん”と共に、7日間泊まり込みで宴会を続けるサークル行事“火の七日間”をすることになった彼は、ひょんなことからそこでノベルゲームを作ることになる。

 制作するゲームの題材を決め、プロットやシナリオに着手する山賀だったが、一時帰宅した彼の前に突然謎の幼女が現れる。山賀は彼女から、3,000の並行世界における“山賀”が一堂に会し、ノベルゲーム制作を競う“自分オンリーイベント”である“アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ”に当選したことを告げられるのであった……。

 物語は“部活動ものを作る世界”、“東方Project二次創作作品を作る世界”、“SF(すこしふしぎ)作品を作る世界”という3つの世界を主軸に展開。章によって、プレイヤーが任意に選択したり展開に応じて目まぐるしく切り替わったりとさまざまな形で、各世界においてゲーム制作に奮闘する“山賀”が描かれる。同じ出来事に対する反応が少しずつ違っていたり、とある事件により各世界が交差したりと、パラレルワールドSFとしても興味深い内容となっている。

山賀の作るゲームを作中作として実際にプレイできる場面も。世界ごとにテイストが異なっているのが面白い
賑やかな制作風景が描かれるのと同時に、並行世界SFとしても物語が展開する
(オタクとしての)古典作品から東方まで、知っているとちょっとニヤリとできるようなネタも散りばめられている

 また、大学生らしい“ダベり”の雰囲気を再現したテンポよく瑞々しい会話の掛け合いや、現実にある作品名なども織り交ぜた“オタクあるある”的なネタ、そして日常のちょっとした出来事を独特の感性で切り取ったモノローグも見どころ。落ち着いた筆致で読みやすく、それでいてユーモアや情熱をも感じさせる文章も、どんどん先へ読み進めたくなる牽引力となっている印象だ。

 ゲームを進めると、スランプに悩んだりイラスト担当の野之原と衝突したりとクリエイターものとして盛り上がる一方、そもそも“アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ”とは何なのか?幼女の狙いは?という謎にも迫っていく。さらにさまざまな転機を経て、山賀を取り巻く“当たり前だと思っていた関係”も少しずつ変わっていく。

 ある一点に向けて人間関係と世界が集束していく終盤の展開は、その演出も含め圧巻。ゲーム制作ものとしても並行世界SFとしても、また“オタク大学生もの”としても楽しめる作品となっている。ノベルゲームが好きな人には特にプレイしてほしいノベルゲームだ。

ソフトウェア情報

「アルティメット・ノベル・ゲーム・ギャラクティカ」
【著作権者】
人工くらげ
【対応OS】
Windows(第一章から第三章およびExtra)、Adobe AIRが動作する環境(第四章および最終章)
【ソフト種別】
フリーソフト