デキる人の使いこなしワザ for PC
大事なレコードやカセットテープを無料でデジタル化するワザ ~「Audacity」で音声を取り込み
2017年7月11日 06:10
レコードやカセットテープといったアナログメディアに記録された音楽は、PCを使ってデジタル化する(=録音する)ことで使い勝手が向上し、メディアの劣化なども気にする必要がなくなります。とはいっても、高機能な市販アプリや、手軽に繋がるUSB接続ハードウェアを新たに買うほどではなぁ……と感じる人も多いはず。
無償の波形編集ソフト「Audacity」を使ってアナログメディアをPCに取り込む
そこで今回は、フリーウェアの波形編集ソフトとして定番の「Audacity」を活用し、アナログメディアをデジタル化する手順を紹介しましょう。
デジタル化に必要なのは、正常に動作する再生機器(レコードプレイヤーやカセットテープデッキなど)と、その音声信号をPCへ取り込むための音声入力端子(ラインイン端子)です。再生機器は正常に動作していれば古い製品で構いません。オーディオケーブルを使い、PCの音声入力端子とつなぎましょう。
なお古めのレコードプレイヤーでは、レコードの音声信号を増幅するフォノイコライザーは内蔵されていないことが珍しくありません。この場合はPCと直接つないでも正常に録音できませんので、たとえば一般的なプリメインアンプなどフォノイコライザー内蔵機器をいったん経由させて、アンプのラインアウト端子やRECアウト端子とPCをつなぎます。またPC側の音声入力端子はPC標準装備の端子でもデジタル化はできますが、可能であれば外付けのUSBオーディオインターフェイスを使ったほうが、音質的にはずっと有利になります。
まず「Audacity」を起動し、あらかじめ録音時のサンプリング周波数と量子化ビット数を設定しておきましょう。PCやオーディオインターフェイス側の入力端子が対応していれば、たとえば24bit/96kHzや24bit/192kHzなど、CD以上の高音質で録音することもできます。またUSBオーディオインターフェイスを使う場合など、PC上で複数のサウンドデバイスや入出力端子が利用できる状態になっている場合は、録音デバイスとして再生機器がつながっているデバイス・端子を選んでおきます。
録音レベルは少し控えめに調整する
本番の録音の前に行わなくてはならないのが、録音レベルの調整です。録音レベルメーターのモニターを開始すると、入力端子へ入力された音声信号のレベル変化が、メーター上で視覚的に確認できるようになります。デジタル化したいレコードやカセットテープを実際に再生しながら、録音レベルが0dBを超えないようオーディオインターフェイス側で調整しましょう。0dBを超えてしまうとクリッピングが発生し、音が歪んでしまいます。
クリッピングはあとから修正することができないため、録音ファイル中に一箇所でも発生すると失敗テイクとなり最初からやり直さないといけません。逆に少しくらい録音レベルが低くても、こちらは後から修正する方法があります。そのため0dBを絶対に超えないよう、少し控えめに調整するのが録音レベル調整のコツです。録音レベルメーターにはピークホールド機能があり、最大レベルが青いマーカーで表示されますので、そちらも参考にしてください。
いよいよ録音。片面ずつ一気に取り込もう
録音レベル調整ができたら、次はいよいよ本番の録音です。まず先に「Audacity」側で録音を開始して、次に再生機器側で再生を始めてください。この順番だと、PCと再生機器の設置環境によっては操作にタイムラグが生じて最初に無音部分が長く入ってしまうかもしれませんが、後から編集できるので気にする必要はありません。逆に再生→録音だと、よほどすばやく操作しない限りは曲の頭が切れてしまいますので、注意してください。
レコードもカセットテープも、ほとんどの場合は片面に複数の曲が収録されています。後々の選曲のことを考えると曲単位で分割したくなりますが、これも後から編集できるので、いまは気にせず片面を一気に録り切ってしまいましょう。最後まで曲再生が終わったら、今度は逆の手順で再生機器側を停止してから「Audacity」の録音を停止します。
再生してみると、アナログメディアの音楽がきちんとデジタル化されたことがわかるでしょう。さらに曲単位への分割や音圧の調整といった編集を行うことで音源ファイルとしての完成度を高めることができるのですが、また次回以降に紹介します。最後に忘れず録音ファイルを保存しておきましょう。「Audacity」での保存方法はいくつかありますが[ファイル]メニューの[オーディオの書き出し]項目からWAVEファイルとして保存しておけば、さまざまなプレイヤーソフトにそのまま読み込め、もちろん「Audacity」で再度編集することもできます。
藤本 健
リクルートに15年勤務した後、2004年に有限会社フラクタル・デザインを設立。リクルート在籍時代からMIDI、オーディオ、レコーディング関連の記事を中心に執筆している。以前にはシーケンスソフトの開発やMIDIインターフェイス、パソコン用音源の開発に携わったこともあるため、現在でも、システム周りの知識は深い。著書に「コンプリートDTMガイドブック」(リットーミュージック)、「できる初音ミク&鏡音リン・レン」(インプレスジャパン)、「MASTER OF SONAR」(BNN新社)などがある。またブログ型ニュースサイトDTMステーションを運営するほか、All AboutではDTM・デジタルレコーディング担当ガイドも務めている。Twitterは@kenfujimoto。