知られざるNASアプリの世界
第2回
「自分ブログ」をNASで簡単に作ってみよう、世界標準「WordPress」をインストール
容量や細かい設定も自由自在
(2016/2/8 06:05)
ASUSTOR NASならホームページやブログを公開できる!
「ネットワーク接続HDD」であるNASに専用アプリをインストール、その手軽さと活用範囲の広さを紹介しよう、という本企画「知られざるNASアプリの世界」。第1回「クラウドストレージとの連携」に続く、第2回のテーマは「ブログの開設」。個人から法人まで使える、本格機能のブログが作れます。
さて、インターネットやウェブに詳しい人なら、所有しているPCにWebサーバーやブログなどのプログラムを組み込み、サーバーとして公開する、いわゆる“自宅サーバー”の構築経験がある人も多いのではないでしょうか。外部プロバイダーのサービスを使わずに自前でサーバーを立てれば、ディスク容量が足りなくなっても自由に増やすことができますし、細かい設定も自由、回線代以外の費用もかからないメリットがあります。
ASUSTORのNASには、こうしたWebサーバーやブログなどのプログラムが多数用意されており、NASそのものをWebサーバーとして外部に公開することができます。今回はブログシステム「WordPress」を設置し、外部から見られるようにするまでのプロセスを見ていくことにしましょう。
NASで作れるWebサーバー教室、レッツトライ!
【今回の紹介アプリ】
MariaDBの設定を行うためのデータベース管理ツール「phpMyAdmin」
世界標準のブログシステム「WordPress」
開発ツールやデータベースも…「Perl」「Python」「PostgreSQL」
知られざるNASアプリ:記事一覧 |
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第1回:クラウドストレージ編:OneDriveの容量対策にも! オンラインストレージアプリを使ってみよう! |
第2回:ブログ作成編:「自分ブログ」をNASで簡単に作ってみよう、世界標準「WordPress」をインストール |
第3回:動画アプリ編:スマホの容量不足も解消OK?NASの動画アプリを使ってみよう |
第4回:音楽アプリ編:月額無料の「クラウド音楽」をNASで実現!ハイレゾ音楽も再生OK |
第5回:テレビ録画編:「テレビ録画の容量不足」をNASで解決、nasneとNASで録画し放題! |
第6回:そのほか編:CD/DVDドライブをNASで共有!PCに無くてもDVDを再生可 |
まずはNASをWebサーバーとして使えるように設定しようこれは標準機能でOK
まず前段階として、NAS上に保存したHTMLファイルを、Webページとして表示できるように設定してみましょう。
これには新規にアプリを組み込む必要はまったくありません。ASUSTORのNASは標準でWebサーバーがインストールされているため、設定画面でチェックを入れるだけで済みます。
具体的には、NASのホーム画面から[サービス]を開き、[Webサーバー]タブから、[Webサーバーを有効にする][PHPキャッシュを有効にする][個人用Webサイトを有効にする]にチェックを入れて[適用]をクリックします。これにより、NASがWebサーバーとして使えるようになります。
では試しに表示してみましょう。
さきほどWebサーバー機能を有効にした段階で、NASに“Web”というフォルダーができていますので、適当なHTMLファイルをその中にコピーし、Webブラウザーからアクセスします。
例えば、使っているNASのローカルIPアドレスが
“192.168.0.62”で、HTMLファイルの名前が“test.html”であれば、「http://192.168.0.62/test.html」とブラウザーのURL欄に入力すれば、test.htmlの内容がブラウザーで表示できることが確認できるはずです。
自宅外からアクセスできるように設定しよう「http://madomori.myasustor.com/」などでアクセスOK
NASがWebサーバーとして使えるようになったら、次に自宅外からアクセスするための設定を行います。作業は2つ。
まず1つめは、NASを接続しているルーター側の設定です。自宅外からホームページを表示したいというリクエストがあった際、このNASに転送されるよう、ルーター側に転送規則を設定する作業です。
具体的には、ルーターの設定画面を開いて、ポートフォワーディングもしくはポートマッピングと書かれた項目(ルーターのメーカーによって呼び名は異なります)に、“NASのIPアドレス(今回は192.168.0.62)”と“プロトコル(TCP)”、“ポート番号(今回は80)”を設定します。
2つめは、アクセスするための名前の設定です。NASのホーム画面から[設定]-[簡単アクセス]を開き、[DDNS]タブで[DDNSサービスを有効にする]にチェックを入れたのち、[DDNSプロバイダ]欄で[myasustor.com]を選び、ユーザー名とパスワードとクラウドIDに任意の値を入力して[適用]ボタンをクリックします。これにより、[現在のホスト名]欄にURLが表示されます。クラウドIDに“madomori”と設定していれば、“madomori.myasustor.com”と表示されるはずです。
以上の設定により、“http://madomori.myasustor.com/test.html”と入力すれば、先ほどのtest.htmlの内容が外出先からもブラウザーで表示できるようになりました。
スマホのモバイル回線などでこのURLにアクセスすると、きちんと表示されるはずです。あとは同じフォルダーにHTMLファイルや画像ファイルを設置してやれば、立派なホームページができあがることでしょう。
世界標準のブログシステム「WordPress」を使うためにまずは管理ツール「phpMyAdmin」をインストール
ではいよいよ、ブログの設置にチャレンジしてみましょう。今回は、世界中で高いシェアをもつ無料ブログシステム「WordPress」をインストールし、自宅外から表示できるようにするまでを紹介します。
ASUSTOR NAS上でWordPressを動作させるためには、2つの事前準備が必要になります。ひとつはNAS上でデータベース管理システム「MariaDBサーバー」を有効にしておくこと。これは[サービス]画面の中に“MariaDBサーバー”という項目がありますので、[MariaDBサーバーを有効にする]にチェックを入れるだけです。MariaDBはあらかじめインストールされていますので、新たにアプリをインストールする必要はありません。
このMariaDBの設定を行うために、管理ツールである「phpMyAdmin」もApp Centralからインストールしておきます。インストールが完了したら起動し、ユーザー名“root”、パスワード“admin”でログインし、「WordPress」のための新規データベースを作成します。ここではデータベース名は“wordpress”にしておきます。
- 「phpMyAdmin」(AppCentral)
- http://www.asustor.com/apps/app_detail?id=44
「WordPress」をインストール、自宅外からアクセスしてみよう
準備ができたらいよいよ「WordPress」をインストールします。App Centralのカテゴリから“ブログ”を開くと「WordPress」というアイコンがありますので、[インストール]ボタンをクリックして実行します。
- 「WordPress」(AppCentral)
- http://www.asustor.com/apps/app_detail?id=65
データベースが作成できたら、「WordPress」を起動し、言語設定を行ったのち、必要項目を入力します。これらはデータベース接続のために必要な情報で、データベース名はさきほど作成した“wordpress”を入力します。
なお、以下の例では説明のため、MariaDBデフォルトのユーザー名とパスワード(「root」/「パスワード」)を用いていますが、本来はセキュリティを考慮し、phpAdmin上で新しいユーザーとパスワードの組み合わせを作成し、それを用いるのが基本です(phpAdminの「ユーザ」タブより設定可能)。公開後もデフォルトのユーザー名とパスワードのまま使い続けることがないよう注意して下さい。
正しいデータベース名を指定し、通信が行えることが確認できれば[ようこそ]画面が表示されますので、サイトのタイトル、ユーザー名、パスワード、メールアドレスなどの項目を入力します。ここでのユーザー名とパスワードは、さきほどのデータベースに対するユーザー名とパスワードとは異なりますので、この「WordPress」でのみ使用するオリジナルのユーザー名をパスワードを設定します。
入力が終わったら[WordPressをインストール]ボタンをクリックしてインストールを実行します。完了したらユーザー名とパスワードを用いてダッシュボードにログインすることで、設定を行ってブログとして公開できます。中身は通常の「WordPress」ですので、カスタマイズも自在です。どうです、簡単でしょう?
なお、この時点ではまだLAN上でしか見ることができませんが、冒頭で紹介したDDNSやルーターの設定を行なっていれば、外部から見ることも可能になります。具体的にはブラウザーのURLバーで
“http://(ローカルIPアドレス)/wordpress/”
だったのを
“http://(任意のホスト名)/wordpress/”
に変更するだけです。
データベースやプログラムアプリも充実PerlやPython、PostageSQLなど…
このほかにもASUSTORのNASには、NASをサーバーとして運用するためのさまざまなアプリが用意されています。
例えばデータベース管理システムでは、さきほど紹介した「MariaDB」のほかに「PostgreSQL」も用意されています。管理ツール「phpPgAdmin」と併せてインストールすることで、NAS上でPostgreSQLを用いたデータベースが動かせるようになります。
またプログラムでは「Perl」や「Python」なども用意されていますので、プログラムのテストを行うためのサンプル環境を構築するのにも向いています。
ちなみに、設定を工夫することで、前回紹介したクラウドストレージと組み合わせることも可能です。外部に公開するWebサーバでは、セキュリティに気をつける必要がありますが、工夫次第で様々な可能性があるかもしれません。
- 「PostgreSQL」(AppCentral)
- http://www.asustor.com/apps/app_detail?id=148
- 「phpPgAdmin」(AppCentral)
- http://www.asustor.com/apps/app_detail?id=168
- 「Perl」(AppCentral)
- http://www.asustor.com/apps/app_detail?id=121
- 「Python」(AppCentral)
- http://www.asustor.com/apps/app_detail?id=368
本格的にサーバーとして使うなら
ここまでNASをWebサーバーとして使うための手順をご紹介しましたが、本格的に運用するなら、大事なファイルを保存してあるNASを、外部から見られるWebサーバーと兼用にしてしまうのは、あまり好ましいことではありません。アクセスが増えるとデータの読み書きが遅くなり、ファイルサーバーとしての機能に影響する可能性もありますし、権限設定を誤ると中に保存してあるファイルに不正にアクセスされる危険もあるからです。
従って、試しに使ってみるとか、あるいは個人でのみ利用するといったケースならともかく、対外的なWebサーバーとして本格的に運用するのであれば、Webサーバー専用のNASを導入したほうが良いでしょう。
ASUSTORのNASはラインナップも豊富ですので、少ない投資でWebサーバーとして活用できる専用NASを手に入れることができますし、新しいNASに買い替えて古いNASが余った際(*1)に、こうしたWebサーバーとして余生を送らせてあげるのも、よい方法と言えるでしょう。
*1 ASUSTORのNASは違うモデルに変更しても「HDDを入れ替えるだけ」でデータ移行可能です。
[制作協力:ASUSTOR / ユニスター]