週末ゲーム

第573回

重力をコロコロ変える3Dアクション「星追いの巫女」

ほんわか少女が謎の空間で繰り広げる頭脳派ゲーム

 『週末ゲーム』では、インターネット上でたくさん公開されているゲームの中から、編集部がピックアップした作品を毎週紹介していく。今回は、3Dアクションゲーム「星追いの巫女」をご紹介する。

 本作は同人ゲームとして頒布されており、執筆時現在はダウンロード購入が可能。体験版も公開されている。

重力方向が変わる床を使ったパズル系アクション

主人公の少女キネト。ほんわかした感じが可愛らしい

 「星追いの巫女」は、いつも眠そうな少女キネトが主人公の全方位重力アクションゲーム。とある村で巫女を務めることになったキネトが儀式の祝詞をあげる際、意識が謎の空間に引っ張られてしまう。ゲームはその不思議な3D空間で展開される。

 キネトは前後左右の移動とジャンプ、あとは光弾を放つ攻撃ができる。ジャンプは空中で再度跳べる二段ジャンプが可能なほか、ジャンプボタンを長押しすると溜めになり、より高いジャンプが可能になる。これは二段ジャンプ時にも可能。

 基本的なアクションはこれだけで、四角いブロックのようなもので構成されたフィールドにあるゴール地点に到達すればステージクリア。これを10ステージほど突破すると最後にボスが現れ、それを倒せばエリア突破となる。

 本作において特徴的なのは、先に述べた“全方位重力アクション”という点。フィールドにはチェック模様をした床があるのだが、そこにジャンプで飛びつくと重力の向きが変わり、飛びついた面が底面となる。こうすることで、ジャンプでは届かない位置に移動できるようになったり、新たなルートが見つかったりする。

 操作はさほど複雑ではないが、ゆっくり慎重に進むなど繊細な操作を求められる場面もある。ゲームパッドによる操作にも対応するので、アナログスティックでプレイした方が遊びやすい。

巫女のキネトが祝詞をあげる最中、謎の空間に引き込まれる
3Dフィールドは四角いブロックで構成されている。フィールドはブロックの内側だったり外側だったりとステージごとに異なる
チェック柄の床は重力方向を変える効果がある。重力方向が変われば垂直な壁にも登れるし、崖から降りても大丈夫

綺麗なクリアを目指すもよし、飛び降りてゴリ押しするのもよし

フィールド上にあるギミックを、重力を活用して突破する

 操作は簡単だが、ゲームが簡単というわけではない。まず各ステージはパズル的要素があり、ギミックを組み合わせる謎解きも用意されている。ゴールのある位置はキャラクターの近くにある矢印で示されるが、はるか遠くに見えるゴールへ到達するのに直線で向かえることは稀だ。

 本作は重力変化という要素があるためか、落下によるダメージという概念はない。遠くに見えるゴールに向かうため、重力方向を変えてゴール位置を下方にし、飛び降りて落下しながらゴール地点に飛び乗るというごり押しでクリアできるところもある(こうでないとクリアできないステージもある)。高所から飛び降りて落ちていくのはなかなか爽快で、慣れてくると『どこから飛び降りられるかな?』と探すのが楽しくなってくる。

 しかし、正しい手順を踏んでギミックを突破しないと、絶対にクリアできないステージもある。フィールド上にいる敵を全て倒したり、これ見よがしに置かれたスイッチを動かす(攻撃を当てると作動する)といったものは直感的でわかりやすい。一方で、特定の重力の向きでのみ通行可能になるギミックや、重力方向が強制的に変えられる迷路など、ただ歩いていてもルートが全然想像できないものもある。

 そんな時は、視点変更が活躍する。キャラクターの背後近くから追いかける三人称視点を基本にしつつ、ぐっと視点を引いてフィールド全体を見渡せるようなものまで3段階にカメラの距離を変更することが可能だ。迷路のような場所では、視点を引いてゴールまでのルートを見ながら移動すると、うまくルートが見つかることがある。

 ゲームに制限時間や残機の概念はなく、フィールド外へ落下しても近い位置から復活する。また、敵の攻撃やトラップによりHPがなくなるとペナルティとしてプレイ時間が加算されクリア時の評価が悪化するが、ただクリアするだけならタイムリミットはなく、近い位置から何度でもリトライ可能。アクションゲーム的な操作を求められる場面もあるが、熟考を要するパズル的なステージが多くなっている。

高いところから飛び降りる勇気も必要。フィールド外に落下しても何度でも復活できる
仕掛けに気づけないとどう頑張っても突破できないステージもある。慌てず視点を引いてじっくり考えたい

脳の使っていなかった部分を使いそうな新感覚アクション

ボス戦はものすごい攻撃が来るので、まずはどうやれば戦えるかを考える

 アクションゲーム的な視点で見ると、攻撃時は敵をロックオンする機能があるので、ロックオンしながら光弾を連打していると概ね撃破できる。敵も光弾を飛ばして攻撃してくるものがあるが、被弾直前にジャンプしていると自動的にガード可能。ガードはほとんどの攻撃を無効化してくれるので、アクションが得意な人は真正面から撃ち合って、攻撃をかわして戦うのも気持ちいい。ボスの大技をガードで抜けるとかなり爽快だ。

 ただ、敵の攻撃がものすごく苛烈で難度が高いという場面は少ない。HPが0になっても復活できるということもあって、ボス戦を除けばシビアなバトルはほとんどない。ボス戦も最初は苦労するが、正攻法では勝てなくとも何かしらの攻略法がある。それを探すのも本作の謎解き要素のひとつになっている。

 本作をプレイして感じるのは、『よくこんなフィールドを考えたなあ』ということ。平面のステージでギミックを考えるだけでも大変なのに、重力方向まで考慮して唯一のルートを制作するのは、ものすごいセンスが必要だと感じる。重力方向がコロコロ変わる複雑なフィールドで、ほんの僅かにある目に見えないルートを突破した時には、喜びとともに作者のセンスに脱帽する思いだ。

 ただ、そのギミックが必ずしもすぐに発見できるとは限らない。ある1つのきっかけが見つかるまで、どんなに頑張っても先に進めないステージも多い。ああだこうだと悩みながら、重力方向を変えてぐるぐる画面を動かしていると、当然のように酔う。行き詰まったら画面を引いて冷静にルートを考えたり、休憩を入れてリフレッシュするのがオススメ。

 ただし本作はオートセーブで、セーブはボスを撃破した後のエリア単位でしかされない。筆者の場合、1つのギミックを突破するのに30分以上かかったこともある(その時にぐるぐるフィールドを回しながら考えていて酔った)ので、レジューム機能があるとありがたいな、とは思った。

 ゲームとしては、空間把握力(なのか?)や洞察力、推理力が求められる頭脳派でありつつ、ボス戦では結構ハードなアクションも求められ、難易度は高い。しかし、決して謎解きやタイムアタックにカリカリしながらやるゲームではない。ファンタジックでのどかな村という舞台の中で、プレイ中に聞こえるキネトの眠そうな声と自分の感覚がシンクロして、とても気楽に遊べるのが本作のいいところだ。物語的にも、割とシリアスになりかけていても、キネトのほんわかさで丸く収まってしまうのも面白い。

 システム周りでは、画面分割による立体視にも対応していたりと細かいところに気が利いている。立体視で重力を変えてぐるぐる回していたらさぞや酔う……のかもしれないが、宇宙空間のような広大なフィールドを立体視で見るだけでも楽しそうだし、立体に見えることで迷路の攻略もはかどるかもしれない。環境をお持ちの方はぜひお試しいただきたい。

 エンディングを見るまでのプレイ時間はおよそ5時間と想定されており、筆者もだいたいその程度だった。その後もエクストラフィールドが用意されているほか、各エリアのタイムアタックも楽しめるので、ボリュームもなかなかのもの。頭を使うゲームをお探しの方は、ぜひチャレンジしてみていただきたい。

アクションでありながら、パズル的な要素もかなり強い
重力方向が変わってもフィールドの状態を把握できれば攻略はスムーズ……か?
ゆったりした世界観も本作には欠かせないエッセンスになっている
プレイ動画
チェック柄の床に乗ると重力方向が変わる。これを使って落下方向を変えるのが攻略のコツ

ソフトウェア情報

「星追いの巫女」
【著作権者】
ノンリニア
【対応OS】
Windows Vista以降(編集部にてWindows 8.1で動作確認)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 500円(税込み)など(体験版あり)
【バージョン】
1.01

(石田 賀津男)