クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
手で書き写すのもコピーの一種
~第3章:著作権について詳しく教えて!~
2016年7月28日 07:00
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“詠み人知らずはちょっと寂しい”の続きとして、今回は“手で書き写すのもコピーの一種”というテーマを解説する。
手で書き写すのもコピーの一種
では次に著作権(財産権)について。
利用方法に応じてさまざまな権利があります。
中でも最も歴史が古く、利用頻度が極めて高いのが『複製権』です。
著作権法21条(複製権)
著作者は、その著作物を複製する権利を専有する。
複製できる権利ってことですか。
そうです。
著作権は印刷技術の発達とともに生まれてきた概念ですが、印刷だけではなく、複写機によるコピー、写真、録音や録画、FAX、ハードディスクやスマートフォンのメモリへのコピーなど、複製することすべてが含まれます。
手で書き写すのも?
もちろん含まれます。
非常にアナログな手段ですけどね。
じゃあ、友だちの宿題ノート、勝手に写しちゃダメなんだ。
あとで詳しく説明しますが、友だちのノートを勝手に写す程度なら、法的には問題ありません。
でも、宿題くらい自分でやりましょうね。
はーい。
ところで先生、この複製する権利は、どうやったらお金になるんですか?
『宿題写していいけど、1ページ100円ね』とか。
相手との合意に基づいて契約を結べばいいのです。
まあ、宿題ノートが著作物かどうかは、微妙なところですけどね。
うわ、クラスにそういうやつ、いるわ……。
例えば、小説や漫画などの著作物は、出版社に印刷(つまり複製)と販売をする権利を与える代わりに、販売代金の一部を著作者に還元する契約を結びます。
これが印税です。
おお! 夢の印税生活ですか。
まあ、売れれば、の話です。
デスヨネー。
簡単に売れるなら、誰も苦労しないか。
本やCDなどの複製物を、配布したり販売したりする権利は『譲渡権』といいます。
複製権とは別の権利です。
著作権法26条の2第1項(譲渡権)
著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。以下この条において同じ。)をその原作品又は複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。以下この条において同じ。)の譲渡により公衆に提供する権利を専有する。
そうか、コピーしていい権利と、コピーを販売していい権利は別なんですね。
友だちへのプレゼントもダメなんです?
そういう限定的な譲渡は大丈夫。
権利が及ぶのは、公衆を相手に配布や販売する場合だけです。
あと、譲渡権は最初の1回で消えます。
つまり、一度適法に売り出されたら、その後の中古品の転売には権利が及びません。
著作権法26条の2第2項(譲渡権)
前項の規定は、著作物の原作品又は複製物で次の各号のいずれかに該当するものの譲渡による場合には、適用しない。
1 前項に規定する権利を有する者又はその許諾を得た者により公衆に譲渡された著作物の原作品又は複製物
2 67条1項若しくは69条の規定による裁定又は万国著作権条約の実施に伴う著作権法の特例に関する法律(昭和31年法律第86号)5条1項の規定による許可を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
3 67条の2第1項の規定の適用を受けて公衆に譲渡された著作物の複製物
4 前項に規定する権利を有する者又はその承諾を得た者により特定かつ少数の者に譲渡された著作物の原作品又は複製物
5 国外において、前項に規定する権利に相当する権利を害することなく、又は同項に規定する権利に相当する権利を有する者若しくはその承諾を得た者により譲渡された著作物の原作品又は複製物
古本屋に売ったり、買ったりするのは自由ってことですか。
そうです。
権利をお金にする方法は他にも、例えば週刊誌へ原稿を載せる代わりに原稿料をもらうといったやり方もあります。
著作物の利用方法によって、契約の条件や名目はいろいろです。
もちろん著作者さえよければ、無料でも構いません。
宿題タダで写させてくれる友だち、大切にしないとなあ。
宿題は自分でやるんでしょ?
もちろん!
次回予告
今回の続きとして次回は“勝手にレンタルしちゃダメなのか”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!