クリエイターが知らないと損する“権利や法律”
デジタルコピーは劣化しない
~第7章:作品を発表するときに気をつけること~
2016年9月7日 07:20
オンラインソフト作者に限らず、あらゆるクリエイターが創作活動を続けるために、著作権をはじめとして知らないと損する法律や知識はたくさんある。本連載では、書籍『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』の内容をほぼ丸ごと、三カ月間にわたって日替わりの連載形式で紹介。権利や法律にまつわる素朴な疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えする。
前回掲載した“電話番号を出すのは危ない”の続きとして、今回は“デジタルコピーは劣化しない”というテーマを解説する。
デジタルコピーは劣化しない
描けた! じゃあさっそく画像投稿サイトに……と。
おっとその前に、投稿サイトにアップロードする行為はどういう意味を持つのか、何が起こり得るのかを頭に入れておきましょう。
たくさんの人に見てもらえるわけですよね?
そうとも限らないです。
まず、投稿サイトにアップロードすると、著作権法では『送信可能化』と呼ばれる状態になるという話を少し前にしましたよね。
あ、そうか。アップロードしただけで誰にも見てもらえない状態というのもあり得るわけだ。
そう。ユーザーがリンクをクリックしたり、URLを直接入力したりといった、ページを開くためのアクションがあって初めてデータが送信されます。
これが『自動公衆送信』だという話もしました。
はい、そうでしたね。
投稿サイトにアップロードすると、新着一覧をチェックしているユーザーが作品を見てくれるかもしれません。
人気ランキングに載ってもっと多くの人に見てもらえるかもしれません。
人気ランキング、載ってみたいなあ。
お気に入りの作品をブックマークしたり、お気に入りの作者をフォローしたり、コメントしたり、評価点をつけたり、SNSでシェアしたり……投稿サイトの機能は各社いろいろです。
会員登録する前に、どんな機能があるのか、利用規約はどうなっているのかをきちんと確認しておきましょう。
はーい。
投稿サイトの外から作品に辿り着く可能性もあります。
新たに送信可能化状態にされたデータは、Googleなどのロボットが自動的に検知して検索サイトへ登録します。
ロボットだけが友だちさ!
検索サイトに登録されると、誰かがキーワードを入力したときに検索結果へ表示されるようになります。
表示される順位はアルゴリズムによって決まり、クリックされるのは上位数件が大半です。
検索でたくさんの人に見てもらえるかどうかは、アルゴリズム次第です。
検索結果って、1ページ目しか見ないですもんね……。
さて問題です。
投稿サイトにアップロードしたデータと、自動公衆送信でユーザーに送信されたデータに、何か違いはあるでしょうか?
えーっと……内容的には同じデータですよね?
そうです。アナログ的な複製とは異なり、デジタルデータの複製は基本的に劣化しません。
しかもクリック1つで簡単に複製されます。
そしてネットワークによって、データを瞬時に世界の裏側まで送信可能です。
インターネットへのアップロードは、世界中に対し無限に近い数の、しかもオリジナルと同じ複製を可能にすることなのです。
そうやって考えると、なんだか怖いですね。
自分の手元を離れて複製されたデータは、もう自分の意志で消すことができません。
どこか知らない別の場所へ、誰かが勝手にアップロードしてしまう可能性もあります。
いわゆる無断転載です。
ひとたびアップロードしたら、もう無断転載を防ぐことはできないと思っておいた方がいいですよ。
覚悟が必要なんですね……。
逆に、他人の作品を無断転載することも、簡単なのです。
コピーするのが簡単だから、とてもカジュアルに著作権侵害できてしまう。
例え本人にはその気がなかったとしても。
思い返してみると、いろいろ心当たりが……。
法律の専門家であっても、ついついやってしまうことはありますよ。
恐らくインターネットの利用者で、著作権侵害にあたる行為をしたことがない方はいないと思います。
怖い、怖い。
実際のところ、著作権侵害が著作者にとって不利益にならなければ、まず問題にはならないでしょうけどね。
投稿サイト自体は素晴らしいツールなので、ルールを知ったうえで、楽しく活用したいですね。
相手の立場で考えなきゃダメですね。
次回予告
今回の続きとして次回は“著作権を無償譲渡する利用規約”というテーマを解説する。
原著について
『クリエイターが知っておくべき権利や法律を教わってきました。著作権のことをきちんと知りたい人のための本』
(原著:鷹野 凌、原著監修:福井 健策、イラスト:澤木 美土理)
クリエイターが創作活動するうえで、知らないと損する著作権をはじめとする法律や知識、ノウハウが盛りだくさん! “何が良くてダメなのか”“どうやって自分の身を守ればいいのか”“権利や法律って難しい”“著作権ってよくわからない”“そもそも著作権って何?”といった疑問に会話形式の堅苦しくない読み物でお答えします!