杜のAndroid研究室

第228回

カード型のシンプル操作で内容は本格派!テーブルトーク風RPG「ソウルアンリーシュ」

160種類以上の技能や魔法で自分だけのキャラクターを作り上げ、冒険に旅立とう

 『杜のAndroid研究室』では、スマートフォン向けOS“Android(アンドロイド)”をテーマに、窓の杜スタッフが厳選したアプリなどを紹介していく。今回は、カード型のインターフェイスが特徴のRPG「ソウルアンリーシュ」を紹介しよう。

カード型アイコンの操作で進行する、TRPG・ゲームブック風のRPG

人と話したり物を調べたりなど、アイコンの選択によりゲームが進行する

 「ソウルアンリーシュ」は、剣と魔法の世界“ラグ・レアネス”を舞台としたファンタジーRPG。冒険の内容が文章で語られ、プレイヤーによる選択と、さまざまな場面における技能の成否判定でゲームが進行していくという、テーブルトークRPG(TRPG)やゲームブックのような雰囲気をもつ作品となっている。

 また、インターフェイスは移動や調査、戦闘のコマンド選択など、ほとんどの部分がカードやパネルを連想させる大きなアイコンで構成されており、動作も軽快。スマートフォンの小さな画面でも、ストレスなく快適に操作ができるよう工夫されているのが大きな特徴だ。カードが配られるようにアイコンがさっと配置される演出も心地よい。

 ゲームは拠点となる街“アルカヴァロン”の宿酒場でクエストを受注することで進行。その際、4人でパーティを組むことになるが、自分以外の3人は他のプレイヤーのキャラクターが完全にランダムでマッチングされる。ソーシャルゲームのようなフレンド要素はなく、たまたまその場に集まった面子で冒険に出るという一期一会に重きを置いた作り。なお、仕組みとしてはサーバーにアップロードされたキャラクターデータが貸し出されるという形になっており、ゲーム自体はスタンドアロンでプレイする1人用だ。

主人公の拠点となる街、アルカヴァロン。宿酒場“チェスター亭”からすべての冒険は始まる
魔法使い“ドレニア”の店では、クエストで入手した未鑑定アイテムを鑑定してもらうことができる。マーケットにはそのほか武器屋やアイテム屋、装備を強化できる鍛冶屋がある

5万種類のカスタマイズパターンから自分だけのキャラクターを作成

 ゲームを開始すると、簡単なチュートリアルを兼ねたプロローグが語られる。ゲームデザインとインターフェイスがシンプルなので、チュートリアルもシンプルで短い。

 その後は、いよいよプレイヤーキャラクターの作成だ。執筆時現在のバージョンでは、男女3種類、計6種類の基本タイプを選ぶことができ、さらに3つの種族と目つきや髪型、肌や髪の色などを指定可能。これによるカスタマイズのパターンは約5万種類にのぼる。なお、種族はステータスにも影響する。

プロローグでは聖騎士“メル・ブランシェル”の物語の片鱗が語られる。本編の開始と共に、主人公は彼女から“あなた”に移り変わる
まずは性別とベースの容姿を選び、続けて細かいパーツのカスタマイズを行っていく
種族や目つき、髪型、肌や髪の色などでキャラクターの印象はぐっと変わる

 また、装備品によってもキャラクターのグラフィックが変化するという“着せ替え”要素も。喋り口調などは指定できないが、生い立ちの記入欄が用意されており、パーティを組んだ時に他のキャラクターの生い立ちを読むこともできる。プレイ中に交わされる会話などは用意されたものでも、姿や生い立ち、そして次に紹介する“タレント”でキャラクター付けを行うことで、プレイヤーの想像力により仲間との冒険を楽しめるというわけだ。

装備品によってキャラクターの見た目も変化する。6種類の基本タイプそれぞれに対し差分グラフィックが用意される形となっており、膨大な素材の量がキャラクターの個性を支えている
生い立ちはステータス画面で左下の虫眼鏡マークを押すことにより読むことができる。設定を作り込んだり持っている能力の紹介を兼ねたり(筆者はこのタイプ)、生い立ち欄の使い道は自由

魔法に鍵開け、噂好き……さまざまなスキルや特性を“タレント”として習得

 本作において、システム上でキャラクターを特徴付ける重要な要素が“タレント”だ。これは攻撃技や魔法といった戦闘スキル、鍵開けや調理といった冒険に役立つスキル、噂好きや伝承に詳しいといった知識や特性の総称で、7系統160種類以上が用意されている。キャラクター作成時は3つ、レベルアップ時に2つ取得することができ、取得時はランダムに提示された3つから選ぶことになる。

キャラクター作成時のタレント取得は、納得のいくまで何度でもやり直せる
レベルアップ時のタレント取得の際は、ランダムに提示された3つとも気に入らなければ“ラッキースター”という課金アイテムで再提示させることも可能。ラッキースターはゲームの進行でも入手できる

 クエスト進行中は、何か困っている人がいたり、話を聞いたり、罠や隠し扉が仕掛けられていたりといった場面に応じて、必要なタレントを持つパーティメンバーが居れば自動でタレントが発動する。

履物を壊してしまったという女性を“制作/細工”タレントで手助け
探知系のタレントはさまざまな場面で役立つ

 パーティがランダムマッチングのため運任せの面もあるが、筆者がプレイした限りでは、展開の有利不利はあるものの完全に詰んでしまうということはほぼ無かった。ガチガチの攻略を最優先にプレイするというよりは、偶然集まったメンバーの個性によって展開が変化するという、物語のゆらぎを楽しむといった所だろうか。

 パーティの中で自分がどんな役割を演じたいのかを考えながらタレントを取得していくのも、本作の醍醐味と言えるだろう。僅かな猶予の中で、指定したメンバーが罠の解除を行う場面などもあるので、それぞれのパーティメンバーが何を得意としているか、確認しておくことも重要だ。

戦闘用のタレントが探索中に役立つことも。TRPGプレイヤーなら『あるある』な場面かも?
突発的な罠の解除を誰に任すかなど、咄嗟の判断が必要な局面も。こうなってからではステータスを見られないので、あらかじめチェックしておきたい

 また、キャラクターのクラス(職業)もタレントにより決まる仕組み。たとえば神性魔法タレントを2つ取得すると“クレリック”など、条件を満たしたクラスに転職ができる。クラスによってステータスに補正がかかるほか、クラス専用のタレントも存在。転職はクエスト出発前であればいつでも行えるので、集まったメンバーで不足している部分を補えるようになるとベストだ。

戦闘はカードゲーム風。機を伺い、タレントを駆使して戦え!

 戦闘はクエストの進行に応じて発生するほか、ダンジョンを探索するようなクエストでは、移動中に発生することもある。ただし、立ち回り次第で避けられる戦闘もある上、経験値はクエスト終了時に得る仕組みで敵を倒しても得られないため、戦闘は必ずしも目的達成のための最善手ではない。とはいえ多くのRPGがそうであるように「ソウルアンリーシュ」でも戦闘はゲームの華であり、カードゲームの要素を取り入れた独特のシステムで冒険を盛り上げてくれる。

選択により(そしてその選択を成功させるのに適切なタレントがあれば)不要な戦いは避けることができる

 戦闘はターン制のコマンド選択型だが、コマンドは通常攻撃や回避といった汎用コマンド、およびあらかじめ6つまでセットした戦闘用のタレントがカードゲームのようにランダムで配られる点がユニーク。アイテムの使用すらカードとして“アイテム”コマンドが配られた時しか行えず、常に戦況が移り変わる中で、機を伺いつつ今できる行動をする、といったシチュエーションを演出している。

 コマンドは使ったものがカードゲームの捨て札のように一覧からなくなり、別のコマンドがランダムに補充されるが、1ターン消費してすべて入れ替えることもできる。さらに、[Favorite]ボタンを押すとセットした全タレントをコマンドに出すことが可能。これは一度行うとしばらく再実行できなくなるので、例えばピンチの際に確実に回復魔法を出すなど、使うタイミングを見極めるのが重要な戦術となっている。

パーティメンバーのコマンドを選び、[Attack]ボタンを押すとターンが進行する
カードゲームのようにコマンドを選ぶ。左下の[Favorite]ボタンを押せばセットしたタレントを確実に使える

 なお、実際にプレイしてみると感じる戦闘の特徴として、“敵、味方ともに攻撃が結構当たりにくい”ことが挙げられる。筆者自身、どちらかと言えば“RPGに命中率は不要”派なのだが、これは普通のコマンド戦闘など、外したら結局同じコマンドを選択するしかない場合の話。本作だとコマンドの内容が常時入れ替わるため、攻撃を外しても次に取る一手には幅がある。また敵の攻撃が当たらず助けられることも多い上に、戦闘自体の頻度が多くはないこともあり、自分でも驚くほどストレスに感じることはなかった。

 このあたりの受け取り方は人それぞれだろうが、その分、必中攻撃のタレントや、“剣修練”、“槍修練”など特定武器種の命中率が上がるパッシブ系タレントの価値が高まっているのは間違いない。

戦闘においては注目度も気にしておきたい要素。派手な攻撃タレントや回復魔法を使うと敵の注目を集め(!の数で表される)、狙われやすくなる。壁役向けに注目度を上げる挑発系タレントもある

 他にも、攻撃対象の敵が既に倒されていても自動で別の敵を狙わず攻撃が不発になるためターゲティングも重要だったり、目立つ行動をすると敵に注目され狙われやすくなるなど、思案のしどころのある戦闘となっている。

 戦闘は頻度が少ない分、ほぼすべてがイベント戦闘のようなもので、難易度はそこそこシビア。ただし戦闘が終了すれば戦闘不能も含めダメージや状態異常は完全回復する上、タレントを使うのにMPといった値を消費する概念もないため、後のことは気にせず一度の戦闘に全力をかけられる。

 なお、コマンドは毎ターン、配られたものからある程度状況に応じて適切なものがデフォルトで提示される仕組みのため、余裕で勝てる敵と遭遇した時や、大勢が決した場合はオートバトルのような形でサクサク進めることも可能だ。

スマホゲーだがじっくり腰を据えてプレイしたい、冒険と物語が詰まった珠玉の作品

中盤以降のダンジョンは結構深い。無駄に歩き回ると戦闘回数が増えるため、記憶力に相当の自信がなければマッピングがお勧め

 1つのクエストは、序盤は10~20分ほどの手軽なものだが中盤以降は本格的なダンジョン探索などもあり、攻略しがいのあるものとなっている。しっかりとヒントを聞き、戦う前から考えて行動しないと勝てないボスなども居て、負けてしまえばクエストは最初からやり直しだ。

 クエスト進行中も含めオートセーブとなっており、隙間時間に少しずつ進めることも可能ではあるが、とくに終盤のダンジョンはマッピングしないと迷うこと必至なのでじっくり腰を据えてプレイしたいところ。ちなみに、マッピングといっても3DダンジョンRPGのように厳密に1マスずつ書いていく必要はない。基本的にダンジョンの入口から、“右”、“左”、“進む(前進)”といった選択肢の繰り返しで奥へ進んでいく形なので、フローチャートのようなメモ書きで十分。比較的手軽に、探索者気分を味わうことができる。

 シナリオ面も印象深い。スマートフォンアプリということもあり、筆者は本作のシナリオについて、気軽に遊べる小さなエピソードがオムニバス的に詰まったようなものを予想していたが、この予想はいい意味で裏切られた。ちょっとした依頼をこなしていくうちに、主人公は街で一目おかれる存在となっていき、やがてある陰謀に立ち向かうことになる。

 TRPGで言えば、クエストを積み重ねることで大きな物語が紡がれていく、キャンペーンシナリオのようなテイストだ。内容は王道と言えるものだが、終盤ではさらに予想の一歩先を行く展開が待ち受けている。300年前に魔剣を携えて戦争を終結に導き、のちに“アストラルゲイト”よりこの世界を去ったと言われる英雄“アレヴィス”の伝説が意外な形で主人公の冒険へと関わってくるなど、剣と魔法の王道ファンタジーに留まらない、謎と神秘に満ちた世界観も本作の大きな魅力と言えるだろう。

クエストをこなして名声を高めることで、主人公は街の人や領主からも一目おかれる存在になっていく。同時にある陰謀の片鱗を掴み、それを追っていくことになる

 現在公開されているアプリでは“シーズン1”として冒険は一段落するが、今後、新しい舞台による冒険となる“シーズン2”が別アプリとして公開され、キャラクターの引き継ぎが可能になる予定。また本作自身についても、シナリオの追加や新クラスの実装などが予定されており、今後の展開も楽しみな作品だ。

 最後に、本作の発表時、ネット上では本作と同様にカードを選んでクエストを進行していく名作RPG「CardWirth(カードワース)」を連想する声もあったが、これについても触れておきたい。開発元の(株)クオリアソフトによると、リスペクトしているゲームのひとつで、大変影響を受けているという。ユーザーインターフェイス自体はタイル型のボタンが特徴的なWindows Phoneを参考にしているが、『こうした型破りなUIでも冒険を体験できることをカードワースは教えてくれました』とのこと。その上で、戦闘でのタレントの配られ方などは、本作独自の仕掛けが施されている。

 いずれにせよ、「CardWirth」を知っていると馴染みやすいプレイ感なのは確かだが、もちろん誰がプレイしても、このシンプルで明解なインターフェイスの手触りの良さは伝わることだろう。オンラインを駆使した遊びも加わり、“手のひらの上での冒険”の可能性を感じさせてくれるゲームに仕上がっている。RPGが好きな人、とくに自分だけのキャラクターを育てて、本格ファンタジーの世界で物語性の高い冒険がしたい、という人はぜひ体験してみてほしい。

ソフトウェア情報

「ソウルアンリーシュ」
【著作権者】
(株)クオリアソフト
【対応OS】
Android 4.0以降(iOS版あり)
【ソフト種別】
ダウンロード販売 500円(アプリ内課金あり)
【バージョン】
1.03(15/02/12)

(中村 友次郎)