#モリトーク
第44話
アップデートの心得
(2013/2/5 12:02)
オンラインソフトやアプリを利用するとき、基本的には常に最新版へアップデートしておくことが望ましい。Google社やAdobe社、Mozillaなどは“高速リリースサイクル”を採用すると同時に、バックグラウンドで動作するオートアップデート機能も導入し、ユーザーの負担を減らしつつ、各製品の最新版をすばやく提供できるように工夫している。
一方で、それに逆行するような例もある。その代表が「Internet Explorer」であり、メジャーバージョンアップをWindowsの自動更新で実施する際には、それをブロックするためのプログラム(以下、ブロッカー)が必ず提供される。実際、「Internet Explorer 10(以下、IE10)」へのアップデートを阻止するブロッカーが、Windows 7/Server 2008 R2向けに先週公開されたところだ。IE10ブロッカーの公開からは2つのメッセージが読み取れる。
まずは、Windows 7/Server 2008 R2用のIE10がまもなく公開されるというメッセージだ。そしてもうひとつのメッセージはブロッカーの役割通り、IE10ではなくIE9やIE8を利用し続けたい場合、IE10ブロッカーを適用しておく必要があるということだ。どちらのメッセージもIE10へのアップデートを前提にしているため、IEの開発方針やブロッカー自体が時代に逆行しているわけではない。ところが、『IEは使っていない』『現状でも不満はない』『とりあえず様子を見ておこう』といった安易な理由でブロッカーが利用される場合もあり、ユーザーが“逆行”を生み出してしまっている。
ブロッカーは本来、企業ユーザー向けに公開されているものであり、一般ユーザーはその対象ではない。たとえば、特定バージョンのIEで動作するように設計された特殊なWebシステムを社内で運用している企業では、十分な動作確認が行われないままIEを最新版へアップデートしてしまうと、深刻なトラブルを招く可能性がある。
逆に、不特定多数の一般ユーザーに向けて公開されているWebサイトやWebサービスは通常、最新版のWebブラウザーで動作するように制作されている。つまり、古いバージョンのWebブラウザーを使い続ける人が残っていれば、それだけトラブルが増えるため、一般ユーザーは利用の有無に関係なくWebブラウザーを最新版へアップデートしたほうがよいのだ。もちろん、セキュリティアップデートが提供されない旧バージョンのWebブラウザーやWindows版の「Safari」は今すぐに使用を中止すべきである。
これに関連するニュースが先週、窓の杜でほかにも掲載されている。それは、「Firefox」に搭載されている“Click-to-Play”機能についての記事だ。同機能は、ユーザーが許可するまで各種プラグインの読み込みを一時的にブロックするもので、今回Mozillaから、旧バージョンの「Adobe Flash Player」を自動でブロックすることが発表された。そして今後は、最新版の「Adobe Flash Player」を除き、「Adobe Reader」「Microsoft Silverlight」「Java Runtime Environment」など、すべてのプラグイン、すべてのバージョンが一時ブロックの対象となる方針も追って通知されている。
Webブラウザー用の二大プラグインといえば、「Adobe Flash Player」と「Adobe Reader」だ。「Google Chrome」はFlashプラグインとPDFプラグインをともに内蔵しており、オートアップデート機能を介して両プラグインも自動で更新される。「Firefox」もまた、内蔵型のPDFビューワーを次期バージョンで正式に実装する予定であるほか、「Adobe Flash Player」との連携も“保護モード”などで強化済みだ。
Webブラウザー用のプラグインは最近まで、Webブラウザー開発者の管轄下ではなかったが、「Google Chrome」や「Firefox」にはプラグインとの連携を強化していく姿勢が垣間見える。これは、今回のMozillaの発表からも伝わるように、プラグインも含めて最新版のWebブラウザーをユーザーに提供したいという方針であろう。IE10ブロッカーと「Firefox」の“Click-to-Play”機能が示す意味も本質的には同じであり、ユーザーも開発者もWebブラウザーとそのプラグインが最新版であることを心がけようということだ。