#モリトーク

第49話

知っておくべきIE10のこと

 前回の第48話では、Webブラウザー界の動向を分析するために「Internet Explorer 10(以下、IE10)」を例に挙げた。そのなかで、IE10へアップデートする際の注意点として“Do Not Track”機能について説明したものの、ほかにもいくつか知っておくべきことが残っているので補足したい。

IE10を64bit化する“拡張保護モード”

 まずは、新しく追加された“拡張保護モード”だ。同モードは、IE10上で悪意のあるコードが実行された時に、システムへのアクセスを遮断する機能であり、Windows Vista/7上のIE7/IE8/IE9に搭載されていた“保護モード”の強化版に当たる。Windows 7向けのIE10では“拡張保護モード”が標準でOFFになっており、“インターネット オプション”の[詳細設定]タブから有効化できる。“拡張保護モード”が働くIE10では全プロセスが64bitで動作するため、より強固なセキュリティ環境を得られる仕組みだ。

 ここで思い出してほしいのは、64bit版のWindows 7にインストールされるIE8/IE9には32bit版と64bit版の両方が用意されていたことだ。IE8/IE9を起動すると標準では32bit版が選択され、64bit版を起動したい場合には、スタートメニューから意図的に選ぶ必要があった。この仕組みを逆手にとると、32bit版のIEと64bit版のIEを同時に起動させることも可能だった。

 一方、IE10では32bit版と64bit版がひとつに統合されており、“拡張保護モード”がそれを切り替えるためのトリガーになっている。“拡張保護モード”がOFFの場合、親プロセスが64bitで動作し、子プロセスである各タブが32bitで動作する。そしてONの場合は、子プロセスも64bitで動作する“フル64bit環境”へと切り替わる。そのため、32bit版のIEと64bit版のIEを同時に起動させることはできない。

 なお、64bit環境となる“拡張保護モード”で一部のアドオンが動作しなくなる点は、以前の64bit版IEと同様だ。ちなみに、“Windows ストアアプリ”として動作するWindows 8用IE10では“拡張保護モード”が強制的に働いており、当初は“アドオンレス”となる予定だったが、後にそれ専用の「Adobe Flash Player」だけが同梱されることになった。

IE10とともにインストールされる“KB2670838”

 知っておくべきことはもう1点ある。IE10をWindows 7に導入すると、環境によっては一部のアプリケーションが正常に動作しなくなることがあり、最悪のケースではブルースクリーンが表示されるようだ。その原因は、IE10とともにインストールされ、DirectX 11.1相当のランタイムを提供するパッチ“KB2670838”にある。

 ヒューレット・パッカード社のサポートページなどによれば、このトラブルはAMD社製ビデオカードを搭載するパソコンで発生する可能性が高いと推測され、“KB2670838”をアンインストールすることで同問題を回避できるとの情報が挙がっている。ただし、IE10の動作には“KB2670838”が必須であるため、“KB2670838”をアンインストールするとIE10も利用できなくなる。

 トラブルを再現できる環境が筆者の手元にないため確証はないが、ビデオカードのドライバーを最新版へアップデートすることで、IE10を残したまま同問題を回避できるかもしれない。AMD社製ビデオカードを搭載するWindows 7マシンにIE10を導入し、トラブルが発生している場合、もしくは同様の環境にこれからIE10を導入する場合には、ドライバーのアップデートを試してみても損はないだろう。

(中井 浩晶)