#モリトーク

第79話

高速リリースと開発チャンネル

 「Firefox」を開発するMozilla Foundationが先日、「Firefox」のリリースサイクルを変更すると発表した。それは“Coupled Train Model”と呼ばれ、新機能をより多くのユーザーへ届ける仕組みになっている。そこで今回は、高速リリースサイクルを採用するWebブラウザー、「Firefox」「Google Chrome」「Opera」の開発チャンネルを整理しておきたい。

“Beta”チャンネルの「Firefox 25」

 「Firefox」の開発チャンネルは“Nightly”“Aurora”“Beta”“Release”の4段階に分かれ、“Nightly”および“Aurora”がアルファ版、“Beta”がベータ版、“Release”が正式版に当たる。そして、現行のリリースサイクルでは各開発チャンネルの製品が6週間ごとに、より安定した開発チャンネルへ昇格していく。「Firefox 30」から適用される予定の新しいリリースサイクルについては、上記のニュース記事を参考にしてほしい。

 “Nightly”“Aurora”“Beta”は、新機能をいち早く試用したい人に提供される開発チャンネルであり、それぞれを併用することができる。ただし、いずれの開発チャンネルでもユーザープロファイルを共有するため、上書きされないように、起動オプションなどからユーザープロファイルを使い分けなければならない。

「Google Chrome」Canary build

 「Google Chrome」では“Dev”“Beta”“Stable”という3種類の開発チャンネルが用意され、「Firefox」と同じく6週間ごとに安定版へと昇格する。これらは併用することができず、“Stable”から“Beta”といったようにバージョンを上げる場合は容易だが、“Beta”から“Stable”といったようにバージョンを下げる場合はアンインストールなどの作業が必要となる。

 ただし「Google Chrome」には、“Canary build”と呼ばれる、“Dev”よりもさらに開発途上なバージョンが存在する。“Canary build”であれば、正式版も含めた各開発チャンネルの製品と併用することが可能だ。

 Webレンダリングエンジン“Blink”を搭載する「Opera」の開発チャンネルも“Developer”“Next”“Stable”の3種類となるが、全面リニューアル中ということもあり、高速リリースサイクルではあるものの、その日程は今のところ定まっていない。リニューアル後の初版である「Opera 15 Next」が今年5月27日、「Opera 16 Next」が7月19日、「Opera 17 Next」が9月6日、「Opera 18 Next」が10月17日に公開されている。

 「Opera」の開発チャンネルが「Firefox」や「Google Chrome」のそれと決定的に違う点は、全開発チャンネルの製品を手軽に併用できることだ。旧シリーズの「Opera 12」も合わせれば、4つのバージョンを同時に起動できる。

4つのバージョンを手軽に併用可能な「Opera」

 各Webブラウザーの開発チャンネルに共通して言えるのは、開発版で実装された機能がすぐに正式版へ下りてくるとは限らないということだ。「Opera」の新ブックマーク機能である“Quick Access Bar”を例に挙げると、「Opera 17 Developer」で仮実装されたものの、「Opera 18 Developer」「Opera 19 Developer」で有効・無効を繰り返し、「Opera 17 Next」「Opera 18 Next」には下りてこなかった。

「Opera 17」の“flags”画面

 窓の杜の記事を日々チェックしているオンラインソフトユーザーなら、開発中の新機能を早く試したいという気持ちが常にあるはずだ。しかし、ベータ版やアルファ版に手を出すほどではないと考える人も少なくないだろう。

 「Google Chrome」と「Opera」には“flags”と呼ばれる上級者向けの設定画面が搭載されており、開発版に相当する機能を正式版でも利用できる場合がある。たとえば、「Opera 18 Next」や正式版の「Opera 17」でも“Quick Access Bar”を試せるので、テスターの入門として“flags”は最適かもしれない。

(中井 浩晶)